ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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19部分:愚王の末路その二
愚王の末路その二
「突破するしかないな」
スレッダーは手綱を握った。馬腹を蹴った。
「行くぞ!」
斧騎士団は全速力で解放軍めがけ駆け上がって来る。その勢いはさながら津波のようである。
迫り来る斧騎士団を前にオイフェは身じろぎ一つしなかった。そして隣にいる主君に一言言った。
「今です」
それに対しセリスは黙って頷いた。そして大きく手を挙げた。
「撃て!」
弓が下へ向け一斉に放たれる。矢を身体に受けた兵士達がもんどりうって落馬する。
「悪いわね!」
タニアは自分の身体の半分以上はある長弓を思い切り引き絞り矢を放った。矢は一人の騎士の胸を貫きその騎士を大地に落とした。二本目が別の騎士の額を直撃する。
ロナンが鋼の矢を放つ。恐ろしい程正確に一人また一人と倒していく。見事な腕前である。
解放軍の強力な弓の斉射に斧騎士団はひるんだ。だがすぐに体勢を立て直し再度突撃を敢行した。
その時だった。解放軍の陣地から丸太が次々と放り出された。丸太は馬の脚を潰し兵士を地に落とす。
「くっ、小癪な・・・」
イザーク軍の動きが再度止まった。空に巨大な影が現われた。
「ドラゴンナイト!」
騎士の一人が声を張り上げた。数こそ少ないが一騎当千と謳われたトラキア王国の象徴と言える精鋭である。まさか敵にいようとは。
「行くぞエダ!」
「はい!」
ディーンがエダを連れ急降下する。ディーンの銀の槍が敵兵を貫く。彼はそれを横に払うとすぐに別の兵士を縦に両断した。
エダは銀の槍を手に眼下の敵に急降下した。敵兵に槍で喉を貫かれ鮮血を巻き上げる。すぐに槍を抜き彼女は急上昇し再び急降下する。
竜騎士達が離れると再び矢の雨が襲う。それが止めばまた竜騎士が降りて来る。
「将軍、如何為されます!?」
一人の将校が尚も先頭で指揮を執るスレッダー将軍に問うた。
「ぐうう・・・・・・」
スレッダーは苦悶と憎悪が混在した眼差しで解放軍を見やった。答えは一つしかない。しかしそれは誇り高き斧騎士団にとって耐え難いものであった。だが彼は命令を下した。
「全軍退却!」
スレッダー将軍の号令一下斧騎士団は迅速にかつ整然と撤退した。追いすがる斧騎士団を振り切り傾斜を下っていく。
「追いますか?」
オイフェの問いにセリスは頭を振った。
「いや、止めておこう。それよりこちらの負傷兵や負傷し戦場に取り残された敵兵や馬を助け手当てしなければならない」
「御意」
セリスの令で負傷した斧騎士団員やその愛馬がたすけられ治療された。兵士の中にはその事に感激しその場で解放軍に加わる者すらいた。
「見ろあれを!」
負傷した兵士を肩に担ぐダグダが下のリボー平野を指差した。そこにはイザークの大軍が集結していた。その中心には親衛隊の制服でドス黒くなっておりドズルの大旗が掲げられていた。
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