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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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132部分:風の勇者その四


風の勇者その四

 セティが城壁を降り城内に入ろうとすると後ろから呼び止める声がする。少女の声だ。
「誰ですか?」
 セティは声のした方を振り向いた。
「フィー・・・・・・」
 そこには妹がいた。駆け寄って抱き付いて来た。
「心配したのよ、何でシレジアに帰って来なかったのよ」
「圧政に苦しむレンスターの人達を見捨てておけなくてね。偶然ホークと知り合って今までこのマンスターで戦っていたんだ」
「そう、兄さんらしいわ」
「ところで何で御前が解放軍に?シレジアでノイッシュさんやアイラさんと一緒に戦っていると思ってたんだけれど」
「セリス様の事を聞いて馳せ参じたのよ。フェミナやカリン、ミーシャさん達も一緒なのよ」
「そうか、あの三人もか。何だか懐かしい顔触れだな。父上も御一緒かい?」
「ええ、けど完全にあたしの事無視してんのよ。頭来ちゃう」
 兄から離れふくれた顔をした。
「ふうん、まあ父上にも何か御考えがあるんだろ。気にする事は無いさ」
「そうかしら」
「そうだよ。ん・・・・・・?」
 兄はまだ少しふくれている妹を見ながらある事に気付いた。
「どうしたの?」
「・・・・・・フィー、暫く見ないうちに随分と可愛くなったな」
「えっ、やだなあ。止めてよ」
「いやいや、本当だよ。誰か好きになった人でもできたのか?」
「もう、そんな人なんて・・・・・・あれっ!?」
 その時マンスターへ行く前にチラリと聞いた言葉を思い出した。その途端顔がボッと耳まで真っ赤になった。
「ど、どうしたんだ。顔が真っ赤だぞ」
 兄が慌てて問うた。
「な、何でもないわよ」
 慌てて兄に背を向けた。
(あの馬鹿、何て回りくどい言い方・・・・・・)
 頭の中で考えている。
(けど・・・・・・いい・・・・・・・・・かな)
 セティは顔の色を元に戻したフィーに連れられ解放軍の諸将が集う城内の大広間に入った。そしてそこで手厚い歓迎を受けた。
「次はミーズ攻略ですね」
 サイアスが軍議の席で口を開いた。
「えっ、講和しないのかい?」
 セリスが眉を顰めた。
「今講和しても帝国との戦いの間にレンスターに攻め入られます。ならば前線基地であるミーズを奪い侵攻の足掛かりをなくしておくのです」
「しかしそれはトラキアとの全面戦争に入る怖れが・・・・・・」
「その時はその時だな。トラバントを倒すだけだ」
 副盟主としてセリスの隣の席に座っているシャナンが切り捨てる様な口調で言った。
「シャナン・・・・・・」
「セリス、トラバントは危険な男だ。己の野望の為なら悪魔とも手を結び平気で人を欺き裏切る。そして米や麦の一粒さえも奪っていく。蛇蠍の様な男だ」
「シャナン王子の言われる通りです。トラバント王は騎士の風上にも置けぬ屑の如き男、禍根を絶っておくべきです」
 シャナンの言葉にコノモールも同意した。
「シャナン様とコノモール殿の言われる通りですな。セリス様、トラバント王は見方によれば帝国以上の大陸の癌、除いておかねば今後どれだけの禍となるかわかったものではありません」
「オイフェも・・・・・・」
「オイフェさんの仰る通りですよ。俺もあちこちでトラキアの奴等のやり口は見てきました。あいつ等は血に餓えた狼か鮫みたいなもんですよ」
 傭兵として各地を渡り歩いたフェルグスまでが言った。
「皆・・・・・・やはろミーズを攻略しトラキアと矛を交えるべきだと思うかい?」
 セリスは沈んだ顔で卓に着く諸将に問うた。その答えはセリスが望んでいない、しかし予想したものだった。
「そうか・・・・・・。よし、すぐにミーズ城攻略の為の作戦を立てよう。まず飛兵はミーズ城近辺を偵察、そしてフィアナへ向かっているリーフ王子達の部隊に連絡してトラキアとの開戦とあの地に向かっているであろうトラキア軍の別働隊への迎撃を命じてくれ」
「はっ!」
 諸将は席を立ちセリスに敬礼した。
「戦うからには勝利を収めなければならない、神々の加護があらん事を!」
「おおーーーーーっ!」
 諸将は意気上がる。だがセリスは今一つ気が晴れなかった。そんな彼をレヴィンは黙って見ていた。
 
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