ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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130部分:風の勇者その二
風の勇者その二
トラキア軍はマンスター城へ向け進軍を続けた。その速度は速くマンスターまで一日の距離に達するのにさ程時間は掛からなかった。その間トラキアに逆らう者は王の命令通り誰であろうと容赦なく殺されていった。
「アルテナ様、マンスター城までもう少しですぞ」
「うむ・・・・・・」
快進撃にもかかわらずアルテナの顔は晴れない。眼下では所々で家が燃え死体が転がっている。
「御気にめされますな。戦においてはよくある事です」
コルータがアルテナの竜の側に寄り言った。
「・・・・・・そうだな、これが戦争だったな」
彼女は力無く言った。
「城の攻略の指揮はお任せ下さい。殿下は後方で我等の総指揮をお願いしまう」
「うむ」
頷く。だがその顔は晴れない。
マンスター城にもトラキア軍の進撃と殺戮の報は入っていた。セティはそれを城壁の上で戦の準備をしながら聞いていた。
「遂に来たか。やはり速いな」
「その上非戦闘員に対しても何の躊躇も無く攻撃を仕掛けております。峡谷は地獄絵図の様であるとの事です」
「やはりな・・・・・・。あの男のやりそうな事だ」
セティは兵士の報告に苦い顔をしながら南を見た。
「市民の方々はもうコノートの方へ行ったかい?」
「はい。今日の朝に最後の一団が出発されました」
「そうか、これで思う存分戦えるな」
そう言って左の手の平を見てギュッと握り締めた。
「見ていろ、これ以上は一歩たりとも進ませないぞ」
フリージ軍を破りレンスターの殆どを手中に収めた解放軍はホークの願い通りすぐにマンスターへ向けて進軍を開始した。
「フィー、気を付けろろ」
アーサーが天馬で飛び立とうとするフィーに対し声をかけた。
「有難う、心配してくれるの?」
「ん!?ま、まあな」
彼は顔を少し赤くした。
「ところで妹さんどう?やっぱりまだ解放軍に慣れてない?」
「うん・・・・・・。入った頃に比べると随分明るくなったと思うけれどな。元々内気な性格らしくて一人でいる事が多いな」
「ふうん、そう」
フィーは少し考え込んだが何やら閃いたようだ。
「恋人でも出来たら違うんじゃないかな」
「恋人!?」
「そうそう。うちの兄貴なんかどうかな。妹のあたしが言うのも何だけれど格好良いし今フリーだし。ティニーもあれだけ可愛くておしとやかなんだから絶対上手くいくわよ」
「ふうん、兄貴で弟っていうのも面白くていいかもな」
「?どういう事?」
彼女はその言葉にキョトンとした。
「あ、いや何でもない」
アーサーはその言葉を少し慌てて否定した。
「ん〜〜、まあいいわ。お先に」
天馬の翼が大きく動いた。
「ああ。マンスターでまた会おうな」
「じゃあね」
飛び立ったフィーにアーサーは再び声を掛けた。
「お〜〜い、さっきの言葉は結構本気だからな〜〜〜〜っ!」
「?何言ってんだろ、アイツ」
フィーは下で手を振るアーサーを見ながら首を傾げたがすぐに思いをマンスターの方へ向けた
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