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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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129部分:風の勇者その一


風の勇者その一

                       風の勇者
ーミーズ城ー
 マンスターとの国境は峡谷を半分にしてトラキアと二分されている。その峡谷の付け根にミーズ城はあった。
 トラキア半島が北のレンスター王国と南のトラキア王国に二分されて以来この城はトラキアのレンスター侵攻の前線基地として機能してきた。トラキアが侵攻する度にレンスターは迎撃し、それが幾度となく繰り返されたレンスター側も何度もミーズ攻略を計画したが竜騎士団を中心とする強力なトラキア軍に阻まれ思うようにいかなかった。何時しかレンスターの者にとってミーズ城は忌むべきものとなり『飢狼の城』と仇名されるようになった。先の大戦でも侵攻の前線基地となりフリージ家がレンスターに入ってからも警戒が緩められる事は無くあいも変わらずレンスターの民達から嫌悪されていた。今も城内から馬蹄や竜の翼の音が聞こえ槍や鎧が林立していた。
「準備は全て整いました」
 城主を務めるマイコフが敬礼をしトラバント王に報告した。
「そうか」 
 王は城壁の上でマントを風にたなびかせながらマンスターの方角を見つつ答えた。後ろにはアリオーン、アルテナの二人とトラキアの将達が控えている。
「いよいよ来たな。我等が悲願を成就させる時が」
「はっ」
 二人の子等と諸将が敬礼をする。王は彼等の方へ顔を向けた。
「フリージは敗れブルームは戦死した。最早我等の悲願を阻む障害は無い」
「セリス公子率いるシアルフィ軍は如何致しましょう。フリージの兵力を傘下に収め今や強大な戦力をなっておりますが」
 王はアリオーンの言葉に口の端を一瞬歪めた。
「フン、あの青臭い小僧っ子か」
 王は言葉を続けた。
「連中がマンスターへ辿り着く前にあの地を陥せば良い。イシュタルもおらずマギ団とかいうレジスタンスごときトラキア竜騎士団の敵ではないわ。その後でターラでの条約を今度は我等が盾に取りマンスター占領を既成事実とするのだ」
「そしてシアルフィ軍が帝国と戦っている間に我等はレンスター全土を・・・・・・」
「そうだ」
 王は口の端だけで笑った。
「そうなればレンスターを奪う機会は幾らでもあるし口実もどうとでもなる」
「もしシアルフィ軍がマンスターに介入してきたならば?」
「叩き潰すまでだ。その為に戦の準備を命じたのだ」
 王は娘の方を見た。
「アルテナ」
「はっ」
 アルテナは敬礼をし答えた。
「そなたを今回のマンスター攻略の司令官に命ずる」
「有り難き幸せ」
「逆らう者には容赦するな。例え老人や女子供であろうとトラキアに歯向かい邪魔になるならば殺せ」
「えっ・・・・・・!?」
 アルテナは父王の言葉に唖然とした。 
「父上、今何と・・・・・・」
 トラバント王は娘の言葉に眉を動かす事無く言った。
「聞こえなかったのか、トラキアに逆らう者は武器を持たぬ者であろうが一人残らず殺せと言ったのだ」
「父上、それは・・・・・・!」
 アルテナは思わず父王に詰め寄った。
「どうした、何か不服か?」
「騎士として敵と戦うのならば喜んで従いましょう、ですが武器を持たぬ者まで手にかけるというのは・・・・・・」
 王の瞳の色が複雑に変わった。
「フン、甘い事を。これは戦争なのだぞ」
「しかし、それは騎士として・・・・・・」
「よせ、アルテナ。父上に逆らうな」
 アリオーンが間に入った。
「兄上・・・・・・」
「御前は父上の言われる通りにすれば良いのだ。父上の御考えを知らないからその様な事を言うのだ」
「はい・・・・・・」
 兄の言葉に彼女は大人しく頷いた。アリオーンは父王の方を振り向いた。
「父上、アルテナをお許し下さい。戦を前にして気が高ぶっているのです」
「・・・・・・フン、まあ良いわ」
 王は再び諸将の方を見た。
「コルータ、ルーメイ、ドオルザーク、マクロイはアルテナの指揮の下マンスターとフィアナへ向かえ」
「はっ」
「セイメトルとマイコフはミーズ城で守りを固めよ」
「はっ」
「わしはアリオーンと共にトラキアへ戻り本格的な戦争準備に入る。それが終わり次第すぐにミーズへ向かう。この戦いに我がトラキアの命運がかかっている。何としてもマンスターを陥としレンスター全土を手に入れるぞ!」
「はっ!」
 トラバント王がアリオーンと共にトラキア城へ向かうと同時にアルテナ率いるトラキア軍二万も北へ向けて進撃を開始した。目指すはマンスターである。
 
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