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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百話 旅行の前にその十三

「そうでした」
「お父様はお一人では行かれなかったのですね」
「あっ、そういえば」
 言われてみればだ、破天荒極まりない自分が定めたルール以外には従わない主義にしか思えない親父だがだ。
「それはないですね、何処に行くにしても」
「義和さんも一緒でしたか」
「連れて行かれました」
 そうだった、何処に行くにしても。
「女の人のところに行く以外は」
「流石にそこにはですね」
 裕子さんも笑って応えてくれた、僕の今の言葉には。
「連れて行かれませんね」
「そうですよね」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「それはなかったです、ですが」
「それでもですか」
「大抵の場所で一人で行くことはなかったですね」
「そうしたお父様でしたね」
「はい、滅茶苦茶な親父ですけれど」 
 もうこのことにかけては誰にも引けを取らない親父だけれどだ。
「それはないですね」
「そうですね」
「今もいいって言ってるのに何かを連絡してきたり」
「いい方では」
「悪人かっていうと違います」
 このことは僕も言う、破天荒ではあってもだ。
「桁外れの酒好きで女好きでも」
「家族サービスは欠かさない方ですね」
「放ったらかしにされたことはないですね」
 料理もいつも作ってくれた、ただ掃除はどうにも苦手でしても結構あちこちにやり残しがあったりした。速いけれど妙に雑だった。
「一度も」
「それだけでもです」
「いい親父ですか」
「そう思いますが」
「確かに酷い父親っていますからね」
 世の中にはだ、聞いていて頭にくる様な父親も多い。
「子供に暴力振るったりとか」
「そうした人と比べると」
「親父はずっといいですね」
 ましどころじゃない、実際に。
「暴力もギャンブルも借金もないですから」
「でしたら」
「はい、何だかんだで僕も親父は否定しないです」
 このことは誰にも認めて語ることだ。
「僕の親父です」
「そうですね」
「その親父とずっと一緒に行ってました」
「義和さんだけで、いえお父様だけで行かれたことはないですね」
「それはないですね」
 他の場所でも覚えている限りだ。 
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