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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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127部分:雨の中でその四


雨の中でその四

 ダルシンが渾身の力を込め槍を突き出した。ムハマドは盾でそれを防ごうとする。
 槍は盾も鎧も貫いた。そのままムハマドの胸を貫いた。ムハマドは口から多量の血を吐き出し大きく後ろに崩れていった。
 他のフリージの将達も解放軍の将達の前に倒れていった。歴戦の知将勇将達は一人また一人とヴァルハラへ旅立っていった。
 その中で激しい死闘を演じる二人の騎士がまだ残っていた。
 嵐の中振り子の様に揺れる船の上でラインハルトとオルエンは火花を撒き散らし撃ち合っていた。両者共池から出た様に濡れそぼりながらそれを苦ともせず攻防を繰り返していた。
 ラインハルトが剣を振るった。オルエンはそれを受け止めたが衝撃で剣が飛び回転しながら甲板に突き刺さった。
「取れ、武器を持たぬ者を相手にはせぬ」
 だがオルエンは剣を取ろうとはしなかった。ジッとラインハルトを見た。
「どうした、何故取らぬ」
「・・・・・・兄上、そこまでして帝国に仕えるのですか」
 オルエンは兄に問うた。
「そうだ。騎士としてな」
 兄は素っ気無く言った。
「兄上はいつも私に言っておられました。騎士は武器を持たぬ民の為にこそ剣を取らなければならないと」
「そうだ」
「では何故帝国に仕えるのです?今の帝国は古のロプト帝国と何ら変わりはありません。兄上はどうお考えなのですか?」
「・・・・・・私は帝国の、皇帝陛下の正義を信じている。必ずや帝国はかっての志を思い出し民の為に動く。そう信じるからこそ・・・・・・オルエン、例え御前に剣を向けることになろうとも帝国に剣を捧げる!」
「兄上・・・・・・!」
 オルエンは叫んだ。しかしラインハルトはその妹に剣を向けた。
「さあ剣を取れ!これで決着を着ける!」
 オルエンは甲板から剣を差し抜いた。最早一言も語ろうとはしない。
 二人は突き進んだ。剣を振り上げ一気に振り下ろした。影が交差した。
 二人は背を向け合ったままで暫く動かなかった。船が大きく揺らいだ。そのまま傾きはじめた。
 オルエンが腹を抱え蹲った。だが傷は浅い。立ち上がり兄の方を見た。
 ラインハルトもオルエンの方を向いていた。傷は無かった。だが構えようとせずオルエンに笑みで返した。
「・・・・・・見事だ」
 首の左の付け根から鮮血が噴き出した。ラインハルトの顔が見る見る蒼ざめていく。
「御前の勝ちだ。強くなったな」
「兄上・・・・・・」
「そんな顔をするな。騎士は大儀の為時には血を分けた肉親とも剣を交えなければならない。そう教えたな」
「・・・・・・・・・」
「御前が自分の道を歩む日が来るのを待っていた。その日が遂に来た。それだけだ」
「兄上・・・・・・・・・」
 船の傾きが酷くなる。ゆっくりと沈んでいく。
「これからは自分の信じる道を歩んでいくのだ。例えどのような障壁があろうとな」
「・・・・・・・・・はい」
 オルエンは頷いた。
「これからの御前の成長を楽しみにしているぞ。・・・・・・・・・さらばだ」
 そう言い残し船から落ちていった。激流に呑まれ消えていく。
「兄上〜〜〜〜〜っ!」
 オルエンはそれを見つつ叫んだ。だが船は尚も沈んでいく。呆然としたオルエンも船と共に河の中に消えようとしていた。
 それを別の船上で戦っていたパティとレスターが発見した。咄嗟にパティは手近にあったロープを切り自分の身体に巻き付けた。
「レスター、ちゃんと持っててね!」 
 パティは叫んだ。
「おい、一体何をするつもりだ!?」
 レスターが問い掛けた。
「決まってるじゃない、オルエンを助けるのよ!」
「馬鹿な、御前も死ぬぞ!俺が行く!」
「あんたが行ったら重過ぎてあたしじゃ持ち上げられないでしょ!」
「!け、けど・・・・・・!」
「時間が無いわ、行くわよ!」
 パティが飛び込もうとしたその瞬間だった。向こう側の船から一つの影が飛び降り今河の中に消えようとするオルエンを抱きかかえると目にも止まらぬ速さで船を駆け上がり大きく跳躍し元の船に跳び戻った。
 影はフレッドだった。自らのマントでオルエンの肩を包むといたわるように彼女を抱き締めた。それを見てパティとレスターは口をあんぐりとさせ目を点にした。
 城内の戦いも激しさを増していた。解放軍は迫り来るフリージ軍近衛兵達を次々と倒し着々と要所を押さえていった。
 書庫の前でも死闘が続いていた。数人の兵士が一斉にゼーベイアに襲い掛かる。
「・・・・・・むんっ!」
 巨大な槍を思いきり横に薙ぎ払う。薙ぎ払うというより叩き落とされるといった感じで兵士達は一撃で倒された。
 
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