提督はBarにいる・外伝
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提督はBarにいる×放火後ティータイム編・その2
さて、料理を教えるのはいいが一体どんな物を教えたら良いだろうか?
「大将殿、出来れば鍋1つで出来るご飯物等を教えてもらえると助かるであります」
成る程、混ぜご飯や炊き込みご飯ならばその場で食べるもよし、握り飯にして携帯食にするもよし、応用の幅が広い。それに簡単な汁物やおかずが付けば、それだけで豪勢な食事になるだろう。
「よし解った、んじゃあ炊き込みやら雑炊やらその辺を中心に教えてくからな」
《いかなごと菜っ葉の混ぜご飯&ベーコンとアサリの澄まし汁》
(いかなごと菜っ葉の混ぜご飯)
・炊いたご飯:2合
・いかなごの釘煮:80~100g
・菜っ葉:1/2本分
・白ごま:適量
・塩:少々
(ベーコンとアサリの澄まし汁)
・アサリ:100g
・ベーコン:2枚
・キャベツ:3枚
・水:400cc
・昆布茶:大さじ1
・醤油:小さじ2
まずは混ぜご飯から。炊き上がったご飯を10分ほど蒸らし、その間に菜っ葉を細かく刻んで軽く塩揉みをして置いておく。菜っ葉は大根の葉でも蕪の葉でも、春先なら菜の花OKだ。(菜の花は塩揉みではなく軽く茹でておく)
蒸らしが終わったらいかなご、白ごま、塩揉みして水気を搾った菜っ葉を加えてよく混ぜれば完成。
澄まし汁の方は、ベーコンを細切りにキャベツは食べやすい大きさにカット。水を入れた鍋に昆布茶を溶かして、出汁が沸いてきたらベーコンとキャベツ投入。少し煮立たせてキャベツが柔らかくなって来たら、砂抜きしたアサリを投入。今回は予め砂抜きして凍らせておいた物を突っ込んだ。
「凍らせたアサリを入れたのは何故でありますか?」
「アサリとかの貝類は、殻付きのまま凍らせると旨味も栄養価もアップするんだ。ウチは殆ど、砂抜きしたら冷凍保存してるよ」
アサリを入れたら暫く煮て、口を開けたら一旦味見。塩、醤油などで味を整えたら完成。
「ホイさ、まずは一品目、『菜っ葉の混ぜご飯』に『アサリの澄まし汁』だ。澄まし汁の方にはお好みで胡椒を散らしてな」
嬉しそうに茶碗を受け取る2人。程よく温かいご飯を頬張って汁を啜ると、何とも幸せな気分が満ちてくる。
「なんだかホッとする味でありますなぁ……♪」
「こっちの汁も味噌汁じゃねぇが、飯に合うなぁ」
気に入って貰えたようで何より。お次は大体家にある材料で出来る炊き込みを1つ。
《ツナと人参、しめじの炊き込みご飯》
・米:2合
・ツナ缶:1缶(70g)
・しめじ:1株
・人参:1本
・醤油:大さじ2
・酒:大さじ2
・みりん:大さじ2
・ほんだし:小さじ1強(8g位)
さて、作っていこう。米は普通に研いで水に浸して吸水させておく。しめじは小房に分けて、人参は薄く銀杏切り、ツナ缶は軽く油を切っておく。ガッツリと油を絞ってしまうと、味気なくなるので注意。
十分に吸水させた米をザルにあける等して水を切り、炊飯器(又は土鍋など)にセット。そこに調味料を入れ、炊飯器の目盛り通りの所まで水を入れる。最近の炊飯器だと炊き込みご飯などの目盛りもあるが、白米の水加減に合わせてOKだ。後は具材を散らして、混ぜずに炊飯スタート。混ぜないというのがポイントで、混ぜてしまうと炊き上がりにムラが出来てしまうので混ぜずに炊くように。
炊き上がったらご飯と具材を混ぜて、15分程蒸らしたら完成。
「はいお待ち、『ツナ人参の炊き込みご飯』だよ」
「ツ、ツナというとあの缶詰でありますか!はぁ~……目から鱗であります」
「意外かもしれんが、ツナ缶は炊き込みご飯の具材向きだぞ?魚のダシが出るし、油がご飯にツヤとコクをプラスしてくれるからな」
今回紹介したツナ人参だけでなく、ツナと梅干し、ツナとひじき、ツナとトマト等々、応用の幅は広い。自分なりの組み合わせを見つけてみるのも面白いだろう。
「……しかし、大将殿も変わり者ですなぁ」
「あん?何がだい」
冷蔵庫に残してあったきんぴらごぼうと牛薄切り肉を炒めながら、にーと陸曹……いや、今はにーと提督か。彼の言葉に応える。
「だって、提督自ら料理を作って部下である艦娘を接待するなんて聞いた事無いっすよ」
「接待……接待ねぇ。世間じゃそう見えてんのか」
肉に火が入った頃合いで、醤油、酒、みりんで味を濃くしていく。元々作り置きのきんぴらにも味が付いてはいるが、炊き込みご飯の具にするにゃあちと薄味だ。
「俺は艦娘に対して媚売ってるつもりはさらさらねぇんだがなぁ。……ただ、あいつらの考えてる事を理解するには同じ釜の飯を食って、酒を酌み交わすのが手っ取り早いだろうと思っただけさ」
炒めた牛肉入りきんぴらを、研いだ米を入れてある土鍋に入れてガスコンロにかける。火加減は強火……沸騰してきたら弱めて更に炊いていく。
「ただでさえ年頃の娘なんざ持った事もねぇむさ苦しい野郎が、そいつらを指揮しようってんだ。こっちが歩み寄って理解してやらねぇとまともに戦うなんて出来やしねぇ」
そう、艦娘と提督の相互理解。着任したての俺はその辺がまだ足りていなかった。その為に俺は加賀を沈め、心に深い傷を負った。それをふまえて俺はこうしてBarを開設した。その結果、飲兵衛だらけの鎮守府になってしまったとかエンゲル係数が高過ぎて大淀が軽く涙目になってる、なんてのは
些末な問題だ。実際にそうやってウチは戦果を積み上げて来たのだ、成果は戦績が語っている。
「さぁ、話をしてる間に炊き上がったぞ。『牛ごぼうの炊き込みご飯』だ」
ふわりと炊き上がったご飯からは、牛肉の脂の甘い香りと醤油の香ばしさが漂う。 ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえる。待ちきれないようだし、さっさとよそって出してやろう。
《残り物で!牛ごぼうの炊き込みご飯》
・牛薄切り肉:100g
・残り物のきんぴらごぼう:100g
・米:2合
・醤油:大さじ1.5
・酒:大さじ1.5
・みりん:大さじ1.5
・唐辛子(輪切り):お好みで
・ほんだし:小さじ1
作り方としては、残り物のきんぴらと同じ位の量の牛肉の薄切りをフライパンで炒め、肉に火が入った所で醤油、酒、みりんで味を濃い目にする。普通に食べるよりも濃くしないとご飯に味が付かないので、上手く調整しよう。きんぴらに入っている場合は入れなくても良いが、お好みで鷹の爪の輪切りをほんの少し入れても美味いぞ。後は炊飯器や土鍋に研いだ米と目盛り通りの水を入れ、具材を入れたらほんだしを上からパラリと振る。そうしたら炊飯スタートだ。
「牛肉とゴボウは最高の組み合わせであります!」
なんて事を叫びながら、ガツガツと炊き込みご飯を貪るあきつ丸。陸軍には食える時に食っておかないと、という精神が根付いているとはいえ、がっつき過ぎだろう。反対ににーと提督は食が進んでいない。
「どうした?味付けが口に合わなかったか?」
「あぁ、いやいや。そういう訳じゃあ無いんですがね。さっきの大将殿の話を聞いてたら、俺ぁどんだけあいつらの事を理解してやってるのかと、ふと疑問に思いましてね……」
「そんなもん俺が知るか。自分から腹割って話さねぇと、向こうだって本音は出さねぇモンさ。……なんなら、俺みたいに料理でも振る舞ってやったらどうだ?案外喜ぶかもしれんぞ」
俺がそう突き放すと、にーと提督は再び黙り込んでしまった。こればかりは他者の踏み込める領域ではない、自分で悩み、迷いながら最適解を見つけるしか無いのだ。
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