| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

12部分:天馬と魔道師と盗賊とその三


天馬と魔道師と盗賊とその三

 女性三人組は一言漏らした。
「あっきれた」
 その時六人の後ろから声がした。
「皆お話中悪いけど」
 大人の声だった。フィー達と比べると長身で顔立ちも大人の女性の美しさがある。やや長めの緑の髪と瞳を持ち空色の上着に黒いズボン白のブーツに胸当てを着けている。ミーシャである。
「そろそろ行きましょう。解放軍は今ガネーシャにいるそうよ」
「あ、はい」
「じゃあ行きますか」
 六人は再び天馬に乗った。ミーシャのペガサスを先頭に楔形の陣形で四騎は天に上がった。すぐにミーシャは後ろに乗る青年に声をかけた。
「スルーフさん、すいません。何か妙な一行にいれてしまいました」
「いえいえ、旅は一人より大勢の方が面白いですよ」
 金髪碧眼の気品のある顔立ちの美しい青年である。細い普通位の背を持ち手首や裏地を紫で彩った膝までの白い法衣とズボン、ダークグレーのマントで覆っている。
「ブラギの塔でクロード様に言われて『世界を救う光となる者』を探す為旅に出て早一年、その間色々とありましたが今はこれまでになく楽しい気分です。それもミーシャさんや皆さんのおかげです」
「そんな・・・・・・」
「それに私も解放軍のセリス公子やシャナン王子には以前より興味がありました。彼等とも一度はお会いしたいと思っていたのです」
「そうだったのですか」 
 暫くして一行の眼前に三つの小さな村が見えてきた。そしてそこへ向かう怪しげな一団も。
「賊みたいね」
 ミーシャがその整った眉をしかめた。
「私達とカリン達が一つ目の村、フィーとフェミナ達が二つ目の村、そして最後の村はそれぞれの村の賊を倒してから急行する、それで行くわ」
「ええ、それでいいわ」
「行くわよ!」
 アーサー、アミッド、アズベル、スルーフが天馬から飛び降り、ミーシャ、フイー、フェミナ、カリンは天馬の速度を速めそれぞれの村へ急行した。風が動いた。
 村では山賊の一人が民家の扉を斧で叩き破り、中年の夫婦と子供達を脅して僅かな金目の物や食料を巻き上げ悦に入っていた。
「へっへっへっ、たまんねえなあ」
 干した豚肉を葡萄酒で流し込みながら山賊は下品な笑い声をあげた。
「戦争が起こってくれてうっとおしい兵隊共が他所へ行っちまうなんてな。おかげで俺達は楽に町や村を襲えるってもんだ」
「そいつは良いな」
 後ろから声がした。
「おう、そうだろう。弱い奴等から巻き上げた酒や食い物を頂くってのはな」
「しかしそれも最後だな」
「へっ、何でだ!?」
「御前が今ここで死ぬからだ」
「何い!?」
 山賊が振り向いた場所にはアーサーが立っていた。肩の高さで上へ向けて開かれた手の平には紅い炎が人魂の様に燃え盛っている。足下には二人の山賊が炎に包まれ倒れている。
「貴様、何者だ!?」
 炎を手に見構えつつアーサーは山賊を仮面の様に全く表情を変えず見ている。
「これから死ぬ奴に言う必要も無いだろう」
「手前!」
 山賊はいきり立ってアーサーに向かって来た。アーサーはゆっくりと手を前に出し火球を撃ち出した。
「ファイアー!」
 火球が山賊の腹を直撃した。吹き飛ぶ様な姿勢で動きが止まった次の瞬間もう一撃が山賊の頭部を直撃した。
「弱いね。やっぱり山賊なんてこの程度かな」
「あれっ、まだ三人しか倒してないの?」
 民家の上からからかう様な声が聞こえた。
 フィーである。
「そういうフィーは何人倒したんだよ」
 ムッとした顔でアーサーは上を見上げる。
「私?私は六人よ」
 得意そうにアーサーを見下ろすフィーをアーサーはにやりと笑って見返した。
「勝った。七人」
「えーー、嘘」
「嘘なもんか。全員ファイアーかエルファイアーで倒してるからすぐ分かるぜ」
「うっ、やるわね。綺麗な顔して」
「おいおい、それは俺が言う言葉だぜ」
「なっ・・・・・・」
 フィーは顔を紅くして飛び上がった。
「とにかく・・・負けないわよ!」
 捨て台詞を残しフィーは飛び去っていく。ハイハイと手を振り見送るアーサーは内心思った。
(中々面白い奴だな)
 だが数秒後断末魔の叫びとフィーの声が聞こえてきた。
「アーサー、これで五分五分よおっ!」
(負けん気の強い奴だ)
 呆れた。
「エルサンダー!」
 アミッドがアンダースローの要領で投げた雷が山賊を直撃する。腹を撃ち抜かれ山賊は大地に伏す。
「どうする?残るは御前一人だが」
 すっかり気負わされ壁に背をつく山賊を前にアミッドは冷たい声で言った。山賊の仲間は既に何人か死体になり転がっている。
「降伏するなら命は助けてやる。ただし二度と村人達を苦しめないという条件付きだがな」
「くっ、くそ・・・・・・・・・」
 山賊の背は完全に壁についた。アミッドが迫って来るように感じられた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧