八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百話 旅行の前にその四
「普通になれないからね」
「まあそれはそうか」
「あんな壮絶な人普通いないからな」
「酒に美女にってな」
「エロゲの主人公みたいだからな」
「そうだよ、毎日殆ど寝ていないから」
レオナルド=ダ=ヴィンチは一日一時間しか寝ないでも全く平気だったという、あの多才さよりもそっちの方が凄いんじゃないだろうか。
「それであれだけ遊んでるから」
「不眠不休で遊ぶ、か」
「確かにそれは難しいな」
「一日じゃ何とかなっても」
「ずっとは無理だな」
「そうだよな」
「そうだよ、僕は普通に寝ないと駄目だから」
最低でも六時間は寝ないとだ、僕は調子が出ない。この辺りは親父じゃなくてお袋の血を引いたんだと思う。
「だからね」
「親父さんみたいにはなれないか」
「俺達も無理そうだな」
「毎日飲んで遊んでだとな」
「身体壊すな」
「そうなるよ、絶対にね」
僕はまた皆に答えた。
「親父はもうそうした意味でも違うからね」
「酒池肉林も桁外れの体力あってこそか」
「それを続けるには」
「金だけじゃなくてか」
「そっちも必要か」
「金瓶梅は中々出来ないんだね」
中国からの留学生劉君がここで言った。
「実際は」
「それって確か水滸伝の」
「うん、裏話でね」
それでとだ、劉君は僕に答えてくれた。
「脇役で西門慶っているよね」
「金持ちの女好きの」
「あいつが主人公になってね」
「酒池肉林しまくる話なんだ」
「そうなんだ」
実際にというのだ。
「武松は最初にちらってと出てね」
「死ぬとか?」
「いや、死なないよ」
「そうなんだ」
「死なないけれどずっと退場してるんだ」
作中からというのだ。
「最後にヒロイン、悪い女でね」
「そのヒロインも水滸伝に出てるよね」
「うん、金蓮ね」
劉君は名前で呼んだ、そのヒロインを。
「このヒロインをやっつけるんだ」
「最後の最後で作中に戻ってきて」
「それで水滸伝のお話に戻るんだ」
「そうなんだ」
「それでこのお話所謂ポルノ小説で」
日本で言うところのだ。
「主人公もね」
「酒池肉林なんだ」
「お金に暇、体力があってね」
うちの親父は暇がないとしか思えない時も遊んでいる。時間の作り方はジェームス=ボンドというのが親父の言葉だ。
「けれど最後はね」
「武松にやられるんだ」
「いや、やられないけれど」
「それでもなんだ」
「遊び過ぎで死ぬんだ」
あまりにも乱れた生活が祟って、というのだ。
「そうなるよ」
「そうなんだね」
「まあ普通の人はね」
「そうした生活を続けていたら」
「そうなると思うよ、僕も」
劉君にしてもというのだ。
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