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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百話 旅行の前にその一

                 第百話  旅行の前に
 八条荘全体での慰安旅行の日が近付いていた、僕も皆もそちらの旅行の準備にも入っていた。その中でだった。
 僕にだ。畑中さんが言ってきた。部活から帰ってきた僕に。
「慰安旅行のことですが」
「それのことですね」
「もう既にです」
「ホテルとかのことはですか」
「お話が済んでいますので」
 だからだというのだ。
「ご安心下さい」
「全部ですか」
「電車のことまで」
「新幹線で行くんですよね」
「はい」
 その通りという返事だった。
「そうなりました」
「行きは」
「帰りもです」
 そちらもというのだ。
「そうなりましたので」
「だからですね」
「新幹線の席もです」
「そちらもですか」
「予約しておきました」
「用意がいいですね」
「執事ですので」
 だからという返事だった。
「させて頂きました」
「そうですか」
「そして私もです」
「来て頂けますか」
「はい」
 微笑んでだ、畑中さんは僕に答えてくれた。
「及ばずながら」
「いえ、畑中さんがいてくれたら」
 本当にだ、この人がいてくれたらだ。
「百人力、いえもう万事が」
「出来るとですか」
「そうです、畑中さんがいてくれたら何の心配もいりません」
「私はそこまでは」
「嘘じゃないです、畑中さんがいてくれたから」
 あの親父が急にイタリアに行って家がなくなった時にだ、あまりもの急展開に唖然となっている僕の前に出て来てくれてからだ。
「僕はこうしていられますから」
「いえいえ、全ては義和様の努力と人徳あってです」
「僕は何も出来ていませんよ」 
 僕は畑中さんにはっきりと答えた。
「何もかも」
「それは私がですが」
「いやいや、僕は本当に。とにかくですね」
 あらためてだ、僕は畑中さんに言った。
「畑中さんも来てくれるんですね」
「はい」
 その通りだとだ、畑中さんは僕に答えてくれた。
「そうさせて頂きます」
「ではそれで、一緒に長崎に行って」
「楽しみましょう」
「長崎はいいところですよね」
「義和様も行かれたことがありますね」
「はい」
 その時のことを思い出しながらだ、僕は畑中さんに答えた。
「素敵な場所ですよね」
「私もそう思います」
「畑中さんも行かれたことがあるんですね」
「何度か」
「そうですか、それじゃあ」
「楽しみましょう、カステラも食べて」
 畑中さんの言葉が上ずった気がした、カステラというところで。
「是非」
「あの」
 その上ずった声についてだ、僕は畑中さんに尋ねた。
「畑中さんカステラは」
「好きです」
 実際にという返事だった。 
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