真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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29部分:第二十五話 箱根旅行一日目
第二十五話です。
ではどうぞ〜
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第二十五話 箱根旅行一日目
2009年5月3日(日)
旅行初日、俺達は箱根までの道を電車で楽しんでいた。
「Zzz…さぁ冒険だ…Zzz…」
「あんだけ騒いで寝るか?フツー……」
「まぁ、キャップだしな」
出発時には大はしゃぎしていたキャップは、今は爆睡しており、それをガクトは呆れるように呟いた。適当に相槌を打つと、俺は外の景色に目を移した。今は山の中をゆっくりとスーパービュー踊り漢が走っている。流石はスーパービューの名の通り、景色はとても綺麗だ。
ちなみに席順だが、大和と京とワン子とクリス、モロとキャップとガクトとまゆっちはそれぞれ4人用の座席に座っている。俺はさっきまで隣にモモがいたが、恐らく……いや、確実にナンパにでも行ったのだろう。別に俺は鬼ではないから、度が過ぎなければいいか、と思う。前ではモロが鉄男よろしく電車の話に火がついている。それを尻目に俺は再び車窓へと目を移した。
それから少しして、目的の駅に到着する。俺達は駅前のバスで移動だが、
「アタシは走って旅館までいきまーす」
「山道、車で30分。ってことは結構あるよー」
「今日のノルマは昼までに十分こなしたろ私達は」
「まだまだ。駆けて駆けて駆けまくるのよ!勝負よクリ!どっちが旅館まで先に着けるか」
「面白い。自分もノルマはこなしたがそこまで鍛錬に精を出すなら付き合おう」
「頑張れ。荷物は任せろ。バスのやつ乗り込めー!」
「ウェーイ」
「あなた達とことんクールっすね」
「俺はちょっと取ってく物あるから」
「なにを?」
「あれ」
俺は駐輪場を指さすと、そこにはフェンリルが止まっている。
「このバイクは……」
「悠里のフェンリルだよ」
「フェンリル……?北欧神話の怪物か?」
「九鬼の開発した軍用バイクだ。誰も乗れなかった所を悠里が貰ったそうだ」
「無駄に高性能でな、俺の後をGPSで追跡して来たんだよ」
「しかし、無人ならバレるのでは?」
「それなら問題ない。フェンリル、ステルスモード」
ピピピッ、という電子音の後フェンリルはその場から溶けるように消えた。
「消えた!?」
「光学迷彩だ。特殊な技術で周囲の光を透過・回折させて、周囲の姿と同化させるんだ。これによって視覚だけじゃなくて赤外線領域まで背景と同化することで、暗視装置やサーモグラフィーにも感知されない」
「すごいな……これも九鬼の技術なのか」
クリスはフェンリルの性能に驚いていた。俺はフェンリルをステルスモードから戻すと、ヘルメットを被る。
「持ってくのか?」
「置いておく訳にもいかんだろ。ついでに後で、その辺走ってくるよ」
「じゃあ、私達はバスで先に行くとしよう」
クリスとワン子以外のメンバーはバスに乗り込むと、その場を後にした。旅館に到着すると、まずとても綺麗な宿だと思ったら……九鬼財閥傘下の旅館だった。チェックインを済ませると、俺達は部屋へと荷物を運んだ。
中ではそれぞれが思い思いの事をする中、俺は外に出てフェンリルへと向かう。
「行くのか?悠里」
俺がフェンリルでツーリングに出ようとすると、後ろからモモが声を掛けてきた。俺はサイドのラックを開くと、中からヘルメットを取り出すと、モモに投げた。
「一緒に行くか?」
「……いいのか?」
「さっきから行きたそうにしてただろ?別にいいよ」
「そうか」
モモはヘルメットを被ると、俺の後ろに座って俺の腰に手を回す。その際に、やはりモモの体が密着してしまって、モモの胸が当たってしまう。
(……いや、今更だな)
自分から誘っておいてそれは蛇足だろう。俺はフェンリルをスタートさせて旅館を後にした。
「おー!やっぱり早いなー!」
後ろでモモは声を上げてはしゃいでいた。
箱根の山の景色はとても綺麗で、バイクから感じる風がとても心地いい。
少し走ると駐車場を発見したので俺はそこに入った。
「思いのほか、気持ちよかったな」
「だろ?偶にはこういうのも必要だし」
「そうだな、悪くない」
上機嫌でモモは答えた。ここ最近は決闘が無かったから、また欲求不満になったかと思っていたが、そうでもないみたいだな。
「しかし……旅行が箱根とはな……ウチのキャップは凄い所を当てたな」
「昔から運は凄かったからな……」
おもちゃの付いたお菓子を買えばシークレットを当てるし、カードなんか感でレアカードを引き当ててしまう強運の持ち主だ。もう強運ではなく豪運と言ってもいい。
「それはそうと……モモはあれから大丈夫なのか?いきなり相談された時はビビったけど」
「ん……?……ああ、まだ理由は見つからないが、とりあえず少しずつやろうと思ってる」
そんな感じで俺とモモは談笑して過ごす。他には学校での他愛もない話などだったが、とりあえずモモも楽しんだようだったからいいか。
「……っと、そろそろ時間か。そろそろ戻ろうぜ」
「もうそんな時間か」
ケータイの時間はそろそろ4時。旅館に戻って4時半くらいだからちょうどいいな。
「なあ、悠里」
「ん?」
「私達は……」
「え……?」
「……いや、なんでもない」
「は……?」
「いいから、早く行け!」
バシンっ!
だからなんで叩くのさ!?
そう思いながら俺はフェンリルを走り出させた。
なぁ、悠里……
私とお前は、
いつまで一緒にいられるんだ……?
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続きます
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