復讐は地獄の様に
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第一章
復讐は地獄の様に
エディタ=ゴルチャコワは交際相手であるペテロ=イワノフスキに歌劇場に招待された。その歌劇場はというと。
「そんな場所に」
「僕達がっていうんだ」
「行けるの?」
エディタは怪訝な顔になりペテロに問うた。一五〇程で小柄な身体で金髪を腹の辺りまで伸ばしている。ふっくらとした頬で眉は薄く目は鳶色だ。
ペテロは背は一七五程でやや面長の顔で鼻が高い髪の毛は茶色で奇麗にセットしている。彫のある顔の目は緑色ですらりとしたスタイルだ。
「私達大学生よ」
「アルバイトのお金が入ってね」
それでと答えたペテロだった。
「だからね」
「そのお金でなのね」
「心配しなくていいよ」
「あるのね、お金は」
「僕が稼いだそれがね」
ペテロは笑ってエディタに話した。
「だから二人で楽しもう」
「ひょっとして私の分も」
「出すよ」
微笑んでだ、またエディタに言った。
「レディーファーストでね」
「いや、それはいいわ」
「いいって」
「ペテロにだけ負担はかけないから」
「自分の分は自分で出すんだ」
「出来るだけね」
そうするという返事だった。
「だから安心して」
「こうした時は男が出すものなのに」
「いいから、とにかくね」
「自分のものは自分で」
「出すから、そう言ったら私もお金はあるから」
貯金はあるというのだ。
「私もアルバイトしてるし」
「それじゃあ」
「行きましょう」
「歌劇場にだね」
「ええ、それでどの作品を観るの?」
「魔笛だよ」
ペテロはすぐにだ、二人で観る作品の名前を出した。
「モーツァルトの」
「あの有名な」
「そう、魔笛を観に行こうね」
「あの作品は確か」
「モーツァルトの最後の方の作品でかなり独特だよ」
「それを二人で観るのね」
「そうしようね」
こうエディタに言ってだった、ペテロは今度のデートの場所を決めた。そうして二人で一緒に夜に歌劇場に行くとだった。
歌劇場の壮麗な建築を前にしてだ、エディタはまた言った。見ればレンタルしたドレスを着ている。
「何かね」
「ここにきてまたそう言うんだ」
「ええ、私達にはね」
どうにもとだ、やはりレンタルしたタキシードを着ているペテロに答えた。
「場違いでしょ」
「共産主義時代は皆観てたよ」
チェコがまだスロバキアと一緒の国だった頃のことだ。
「僕達労働者階級でも」
「歌劇は人民の芸術ね」
「そう言われていたからね」
「そうだったの」
「うん、けれどだね」
「場違いに思えて仕方ないわ」
これがエディタの言葉だった。
「入って観ていいのかしら」
「そんなこと言ったら誰も聴けないよ」
笑ってだ、ペテロはそのエディタに言った。
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