密会
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第三章
「愛を育んでいるのですね」
「接吻で止まっているのならですね」
「いいのです。純情な方々ですね」
「最近礼拝堂に入って来る回数が増えています」
「どれ位になっていますか?」
「これまでは週に一回や二回でした」
こっそりとだ。礼拝堂に入って来て話をしてキスをするのはだというのだ。
「ですが最近ではです」
「どれ位に」
「五回程です」
つまりだ。土曜と日曜以外はだというのだ。
「朝か夕方、おそらく仕事に行く前かその後で」
「二人で密かに入り」
「会っているのです」
「成程。そしてですね」
「私は見ているだけです」
グレゴリ神父に言われたことをだ。カレーラス神父は忠実に守っていた。
そしてそこからだ。こう言うのであった。
「それで宜しいのですね」
「はい。そしてなのですが」
「そしてとは?」
「おそらく近いうちにですが」
どうなるかというのだ。グレゴリ神父はコーヒーの白いカップを右手に持ち。
その中にある黒いコーヒーを飲みつつだ。カレーラス神父に述べた。
「この教会で結婚式が行われます」
「結婚式ですか」
「そしてその式をお願いできますか」
「私がその彼等の前に立ちですね」
「結びつけて下さい」
教会での結婚式、それを執り行って欲しいというのだ。
「そうして頂けるでしょうか」
「はい」
真面目で素直な人柄故にだ。カレーラス神父は即答した。
「そうさせて頂きます」
「ではお願いします。そしてです」
「その二人をですね」
「祝福して下さい」
「わかりました」
その真面目な、端整であるがいささか面白みに欠ける顔を微かに綻ばさせて答えるカレーラス神父だった。
「それではその様に」
「そうされて下さい。それにしてもです」
「それにしてもとは」
「このケーキですが」
話はそちらに移った。ケーキにだ。
「これはまたかなり美味しいですね」
「実は寄進でして」
「頂いたものですか」
「はい、近くのあのケーキ屋の」
「ああ、ドミンゴですね」
「そうです。その店からのです」
寄進でだ。貰ったものだというのだ。
「今日頂きました」
「そうですか。有り難いことです」
「これもまた神のお恵みですね」
「その通りです」
まさにそうだとだ。カレーラス神父はグレゴリ神父に述べた。
「これだけのケーキを頂けるとは」
「その通りですね。それではです」
「神に感謝して。このケーキを」
「味わいましょう」
こう話してだ。そのうえでだった。
彼等はケーキを楽しんだのだった。それからだった。
暫くして教会で結婚式の日が近付いてきた。それでだった。
カレーラス神父は礼拝堂においてだ。その整った目を思いきり丸くさせていた。そうしてだ。
こうだ。共にいるグレゴリ神父に問うたのである。
「あの、これは」
「はい、こういうことです」
「こういうことではなくて」
「驚かれていますね」
「私は神に仕える者です」
それならばだとだ。カレーラス神父は答えた。
「それでどうして嘘なぞ言いましょうか」
「ではやはり」
「驚いています。しかしです」
カレーラス神父は今度は目の前の二人を見ていた。その二人こそはだ。
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