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密会

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第二章

 極めて真面目な顔でだ。こう答えたのだった。
「やはり。礼拝堂の中でそうしたことはです」
「よくないと仰るのですね」
「教会は神聖な場所です」
 その真面目さからの言葉である。
「何があろうとも汚してはなりません」
「そして特にですね」
「そうです。礼拝堂はです」
 そこはだ。とりわけだというのだ。
「神のおられる。まさに」
「最も神聖な場所である」
「主がおられます」
 十字架にかけられたキリスト、他ならぬ彼がだというのだ。
「その主の御前で破廉恥はことはです」
「ではです」
「それではとは?」
「その主が見ておられますね」
 カレーラス神父のその真面目な目を見ての問いだった。
「礼拝堂では」
「はい、まさに主がです」
「では。若し神と主がお許しにならなければ」
 どうかというのだ。
「すぐにその場で報いが与えられる筈です」
「報いがですか」
「その通りです。そうなりますね」
「それは確かに」
「私はそう考えています」 
 優しい微笑みをそのままにしてだ。グレゴリ神父は話した。
「ですから。ここはです」
「あのカップルは見ていてもですか」
「見ぬふりをするべきなのです」
「神父がそう仰るのなら」
 カレーラス神父はグレゴリ神父を尊敬していた。篤い信仰に温和な人柄、そしてその深い学識を持っているが故だ。彼を尊敬していたのである。
 そしてそれ故にだ。グレゴリ神父の言葉に応えてだった。
「私はです」
「そうして頂けますね」
「はい」 
 その通りだというのだ。
「そうさせて頂きます」
「有り難うございます。それではです」
「はい、ではです」
「書類でしょうか」
「今日の書類はそれで終わりです」
 グレゴリ神父が今までサインしていただ。それでだというのだ。
「ですが。市長が来られました」
「市長がですか」
「御会いしたいと仰っていますが」
「日曜のミサのことでしょうか」
「その様です。どうされますか」
「この教会に来られる方は誰でもです」
 どうなのかとだ。グレゴリ神父は微笑みのままで述べる。
「神の僕です。そして神の僕ならばです」
「会わないということはですね」
「あってはなりません」
 このことについてもだ。篤い信仰を持っているグレゴリ神父だった。
「何があろうともです。ですから」
「わかりました。では行きましょう」
「では」
 こうしてだ。グレゴリ神父はカレーラス神父と共に市長と会った。そうして日曜のミサについて詳しい話をした。そうしたこともしたのである。
 そのカップル、教会の近くに住んでいる若い二人はそれからもだった。こっそりと教会の礼拝堂に入ってそこで会ってキスをし合っていた。このことはだ。
 二人の神父はいつも見ていた。そのうえでだ。
 カレーラス神父は教会の彼等の私室においてだ。グレゴリ神父に話していた。
 二人でコーヒーを飲みオレンジをふんだんに使ったケーキを食べながらだ。グレゴリ神父に対してだ。カレーラス神父は呆れた口調で話した。
「また来ていました」
「そうですか」
「そして接吻をしていました」
「いつも通りですね」
「はい、本当に」
「いいことです」
 微笑みだ。グレゴリ神父はこう述べた。 
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