八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十六話 吸血鬼のお茶会その四
「とてもね」
「ええ、だから快くだったの。ただ」
「ただ?」
「心配無用って笑って言われたわ」
「ああ、この学園の妖怪はね」
数多い話があるけれどだ。
「皆そういう話がないからね」
「だからって言われたわ」
「僕もそう思うけれどね」
「用心になのね」
「持って行った方がいいね」
これが日本の妖怪だとお経やお守りになる。
「やっぱり」
「だからよ」
「貰ってきたんだ」
「全部ね」
「全部っていうと大蒜も」
「テニス部の部室の傍に大蒜畑があるのよ」
農業科の畑のそれがというのだ。
「そこに丁度農業科の子がいたから」
「貰ったんだ」
「形の悪いのをね」
「それはまたタイミングがいいね」
「大蒜もいいのよね」
「うん、いいよ」
吸血鬼にとだ、僕は詩織さんに答えた。
「お昼にも話したけれどね」
「それじゃあね」
「大蒜も持っていって」
「そうそう、十字架は人数分あるから」
僕と友奈さんの分もというのだ。
「安心してね」
「僕達のもあるんだ」
「借りてきたわ、大蒜もね」
そちらもとだ、詩織さんは僕にさらに話した。
「たっぷり貰ったから」
「人数分あるんだ」
「ええ、手に持つなりしたらね」
「いいんだね」
「ポケットに入れるなりしたらいいと思う」
「ポケットに入れたら」
どうかとだ、友奈さんが言ってきた。
「あまりよくないわね」
「匂いがあるから」
「大蒜だから」
匂いがするので有名な野菜だ、特に食べると凄い匂いがする。その匂いもまた魅力と言っていいのだけれど。
「ポケットに入れることはね」
「よくないのね」
「そう思うわ」
「じゃあ」
ここでだ、詩織さんはポケットからあるものを出した、それはビニール袋に包まれた大蒜だった。十個はある。
その大蒜を僕達に見せつつだ、こうも言った。
「これは私が持っておくわね」
「大蒜は」
「何かあればね」
その時はというのだ。
「すぐに出すから」
「その大蒜を」
「若し襲って来たらぶつけるわ」
「そうするのね」
「だから任せて」
「そのことはわかったわ、ただ」
ここで友奈さんは詩織さんが持っているビニールの中の大蒜、十個程のそれを見てこうしたことも言った。
「それがいらない大蒜なの」
「商品にならないそうよ」
「形が悪くて」
「そう言われたから簡単に借りられたの」
「そうなのね」
「売れると思ったでしょ」
「ええ」
その通りという返事だった。
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