| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

 
前書き
今回はシリルの戦い一本に絞って展開してみました。
カラスにもそれなりの設定を作っていたけど、主要人物でもないし流していいかなって本編には出てこない感じになってます。 

 
シリルside

「クソッ!!」

最大の好機を逃したことに思わず地面を叩く。相手の攻撃を防いだところだったから、今のを生かせれば完全に流れはこっちに来ていたのに・・・

「チッ。クソガキが」

だが、それは向こうも同じ。カラスもチャンスを得ていながら物にすることができなかった。それにより、かなり苛立っていることが誰の目からも明らかだ。周りに誰もいないけど。

「しょうがねぇ。幼女相手に使いたくなかったけど・・・」
「そこまで小さくない!!」

突っ込むべきはそこだけじゃないけど、全部に突っ込んでいたらいい加減俺の体力が持たない。だって俺の周りって変な奴が多すぎるんだもん。

「本気を出していくしかないか」

俺の突っ込みなど聞いていなかったようにしか見えない男は、武器を地面に突き立てると両手を握り合わせ目をと閉じる。

「?なんだ?」

戦いの最中とは思えない無防備な姿。いかにも攻めてくださいと言わんばかりの彼の姿に、不信感を持たずにはいられない。

(攻撃に出るとやり返してくるカウンター?いや、でもあんなに隙だらけだと・・・)

違和感が拭えないが気にしすぎても話にならない。もしかしたらこうやって魔力を高めている段階なのかもしれないし、攻められるならせめるべきか。

「よし!!」

こちらが動くことが向こうの狙いだったならば仕方ない。そう腹を決めて突撃する。

「・・・」ブツブツ

小声で祈りを捧げるかのように何かを呟いている敵目掛けて全速力で突き進む。もしかしてこの人・・・気付いてないのか?

「ナメるなよ!!」

閉じられている目に力が入っている。それを見て確信を持った。この人は俺のことなど一切警戒していない。ただ、自分がやりたい何かのための準備をしているだけ。

「水竜の・・・」

それならば今は何をしてもいいはず。大きな力を発揮するためには大きなリスクも生じる。その代償が隙を見せることならば、容赦なくそれを突かせてもらう!!

「鉤爪!!」

足に水を集めていまだに目を閉じたまま微動だにしない相手の顔面目掛けてそれを振る。そして、それがカラスの顎を捉える瞬間・・・

カッ

彼の目が大きく開かれた。

ブワッ

「うわっ!!」

その瞬間彼を中心に突風が吹き、攻撃に出ていたはずだったのに大きく飛ばされてしまう。幸い空中で一回転することで着地は問題なくできたが、詰めたはずの距離が大きく開いてしまったことに気が付く。

「今の風・・・どこから?」

彼を運が味方したようには思えない。そもそも、あれだけの強風が吹いたならばカラスだって飛ばされないにしても少しはぐらつくはず。それがなかったってことは・・・

「あいつの魔法か?」

一応、ほとんどそんな様子はないが彼も魔導士らしい。だから、彼が起こしたものだと考えれば説明が付く。そう思い彼の方を見るが・・・

「ん?」

どこか変わった様子があるようには見えない。ただ目付きが鋭くなり、集中が増しているようだけど、別段脅威があるようには見えないんだけど・・・

「ふぅ」

小さく息をつき目の前に刺した武器を引き抜くカラス。彼は再び目を閉じた後、ゆっくりとそれを開きこちらを見据える。

「行くか」

来る!!直感的にそう感じた。ただ、どう攻めてくるのかわからない。なので目を全開にし相手の筋肉の動き、魔力の流れに集中する。

ダッ

わずかな動きも見落とさないようにと集中していると、カラスはさっきまでよりも遥かに速い速度で突っ込んできて、あっという間に俺の間合いに入ってくる。

「!!」

武器を振るおうとする敵。彼が動き出すよりも速くこちらも動き出しそれに対応する。

「ぐっ」

魔力を帯びた腕でギリギリ攻撃を防ぐ。でも、威力も先程より上がってきており、衝撃が大きく顔を歪める。

「がら空きだぜ!!」

それでもどこかで防いだと安心していたたところがあったのかもしれない。敵の武器は両端に70cmほどの棒が付いている。つまり、片方を凌いでももう片方から攻撃が来ることがあることが頭から抜け落ちてしまっていた。

「いっ!!」

左脇腹から激しい痛みが全身に走る。元々奴の動きはかなり速い分類に入るとは思っていたが、ここまでの切り返しの速度があったようには思えない。

水竜の斬撃(ウォータースライサー)!!」

痛みを堪えて斬撃を放つ。だが、その攻撃に驚くべき反応を見せたカラスは脇腹を強打した武器で顔を寸前で受け止める。

「ほら、もう届かねぇぞ」
「ぐっ・・・」

押しきってみようと力を入れていくが、相手の方が体も大きいし押し込めていける気がしない。唯一隙があるのは正面なんだけど、こちらもそこに技を仕掛けられる体勢ではないのでなんともしようがない。

「んじゃ」
「あっ!!」

水の剣を力で押し切られ転倒する。ヤバイと思って顔を上げると、そこには武器を振り上げているカラスが立っていた。

「仕留めるとするか!!」

すでに降り下ろしに入っていたらしく、こちらが動こうとするよりも速く敵の攻撃が背中に直撃する。

「がっ・・・」

思いきり背骨に入った攻撃に吐きそうになる。だけど、相手は一度降り下ろした武器をまた振り上げようとしていたので、転がるようにしてその場から一度離れる。

「あ!!コラ!!逃げんな!!」

ある程度・・・ほんの数メートルほどではあるが距離を取ってから体を起こす。

「うぷっ」

ただ、かなりの距離転がったことで酔ってしまっていたけど。

「やばっ・・・痛みと気持ち悪さで本当に吐きそう・・・」

容赦なく背骨を叩きつけてきたから、普段じゃ味わえないような激痛に襲われている。それに加えて目も回っているから、目の焦点が定まらない。

「どうした!!動かないならこっちから行くぜ!!」

俺がなかなか動かないことでチャンスと悟ったカラスが再度攻めに出てくる。

(下がるしかないか)

もう少し酔いが覚めるまで反撃するのは難しい。とにかく動き回って今は回復するのを待つか。

「無駄だぜ!!」

しかし、こちらは背面走行、相手は普通にダッシュしてくる。これじゃあどちらが速いかは一目瞭然で、瞬く間に距離を詰められてしまう。

「ダメか!!」

相手の方が動きがいいし、この状態じゃ接近されてしまってもしょうがない。まだふらつくけど、やり合うしかないか。

「水竜の・・・咆哮!!」

広範囲に放てるブレスなら、この状態でもぶつけることができる。最悪当たらなくても相手を押しやることができれば十分視界を回復させる時間が取れる。

「弱い!!」

そんな狙いを持っていた一撃だったのに、敵は武器を回転させながら突っ込んできて、ブレスに自分が通れる空間を作り出す。

「ウソッ!?」

あまりにも粗雑な突破方法に目を疑う。たまにこんな方法で抜けてくる人も見たことあるけど、普通なら絶対やらない。俺なら間違いなくやらない・・・と思う。

「オラッ!!」
「くっ!!」

最短距離で突っ込んできたカラスはそのままの勢いで攻撃を仕掛けてくる。こっちはまさか直進するとは思ってなかったので対応する術がない。胸に突き付けられた一打で後ろに押される。

「まだまだ行くぜ!!」

距離が詰まったことで一気に攻め立てようと次から次へと攻撃を仕掛けてくるカラス。

「あわわわわ!!」

俺はそれをようやく回復した目を使ってギリギリのところで交わしていく。でも、向こうの攻撃がいつまでも襲ってくるから、一向に攻撃に転じることができない。

「こ・・・の!!」

このままではダメだと感じたので一か八か、武器を掴み相手の攻撃を防ぎにかかる。

ガシッ

その狙いは見事に嵌まり、カラスの猛攻を掴むことができた。

「よし!!」

やれそうな気はしていたので、本当にできたことに思わず喜びの声を上げる。失敗したら手が折れそうなほどの攻撃だったけど、おかげで防戦一方の状況から五分の段階に戻すことができた。

「意外に力あんね」
「そりゃどうも」

棒を引き抜こうと力を入れているカラスと逃がさないと対抗している俺。あれ?これさっきも似たようなことが起きたような・・・

「よっ」

既視感(デジャブ)に襲われていると、予想通り腹部に蹴りを入れようとしてきた。でも、二度も同じ手を喰らうつもりはない。こちらも足を挙げてそれを払い、元の状態へと戻す。

「やるな、嬢ちゃん」
「嬢ちゃんじゃないって・・・」

何度言ってもいい改めようとしないカラスに怒った俺は、掴んだ武器を利用して敵の顔付近までジャンプする。

「言ってんだろぉ!!」
「おわっ!!」

持っている武器を引き寄せ敵を近付けると、その顔面目掛けて足裏蹴り。カラスはそのダメージで肌身離さず持っていた武器を離し、地面に背中から崩れ落ちる。

「あれ・・・もしかしてこれ・・・」

着地して彼の使用する武器をまじまじと見ていた俺はあることに気が付いた。サイズが大きくてイマイチイメージがしづらかったからか気付かなかったけど、この武器って・・・

「ヌンチャク・・・だっけ?」

東の国々で生まれたと言われている、二本の棒を紐などで繋いで片手で持って振り回しながら戦う武器なんだとか。本来は全長1メートルほどの武器らしいけど、これはその何倍の大きさがある。

「しかも・・・重たい・・・」

両手で棒の部分の片方を持ち、もう片方を地面に下ろしている体勢で立っているのに重たくて腕が震える。こんなのを振り回していたのか。道理で一撃でも体に響いてくるわけだ。

「おい」

この武器をどうしようかと考えていると、ドスの効いた声が足元から聞こえる。そちらに目を下ろすと、目が血走っているカラスの姿が目に入りギョッとする。

「そいつに触んな」

俺が自分の武器を持っていることが相当気に入らないらしく、かなりご立腹の様子。でも、離せと言われて話すやつはどこにもいないよね。

「絶対ヤダ」
「それは俺の・・・」

舌を出して彼の願いを退けると、カラスはフラッと起き上がり、右手を強く握る。

「魂なんだよ!!」

なりふり構わず振るわれた拳をガードしようと、向かってくるそれの軌道に巨大ヌンチャクを持ってくる。

ガツンッ

拳とヌンチャク、それぞれがぶつかり合った途端そこを中心に強い衝撃波が襲ってきた。

「何!?」

信じられないような衝撃で手がしびれてしまい、持っていたそれから手を離さざるを得なくなる。離した影響で風に飛ばされるが、耐えることは十分にできたため少し後方に押された程度で済んだ。

「ぐっ・・・」

地面を転がる巨大ヌンチャクを手に取ろうとした時、カラスが苦痛の表情を浮かべる。よく見ると、拳を開いた手からかなりの出血が出ており、確実に折れているのが見て取れる。

「お前・・・マジかよ」

痛みを必死に堪えヌンチャクを拾い上げると、まるで何事もなかったかのようにそれを構える青年。それに衝撃を受けているのは、きっと当たり前のことだと思う。

「こいつは俺を暗闇から抜け出させてくれた。だから、俺がこいつをもっと日の当たる場所に連れていくんだ」

強い意志を持ったその瞳は、悪人のものとは対極に存在しているように感じる。なんでこんなに真っ直ぐな目をしていることに、俺は気付けなかった?

「こうやって村を乗っとることが、そいつのためになると?」
「これは単なる足掛かり。エーメもこの計画が成功すれば、俺たちはその名を世界に轟かせることができるって言ってた」

なるほど。今のを聞いて色々と理解できた。こいつはきっと、過去に何かあったんだ。それによって正義感が歪み、またそれを利用してこいつの能力を悪用するヤツもいた結果が今の彼なのか。

「逆だな」
「はっ?」
「お前のしていることは、そいつのためにはなってない。そいつは悪用されるために作られたわけじゃないだろ?」

もし本当にその武器が自分の魂なのなら、こんなことには使わず人のためや何かの役に立つことに使うべきだ。それをこいつは践み違えている。

「ウソ・・・だってあいつらは・・・」
「そいつらは信用に値する人間なのか?」

意外と頭はいいようで、気持ちがぐらつき始めているのを感じ最後の一押しと説得してみることにした。しかし、なぜか俺の言葉を聞くと、迷っていた彼の心が安定し始める。

「できるさ!!あいつは俺にこいつをくれた。そのおかげで俺はあの地獄の日々から抜けれたんだから!!」

カラスは恩人に報いるために戦っている。何かの影響で正義感を失った彼にとって、その人物が全ての基準。その言葉が正しい道だったんだ。

「だったら俺が、そいつの誤りに気付かせてやるよ」
「上等。俺は何がなんでも勝つからよ!!」

地面から掴みあげた武器を投じ先手を打ってくる。それを難なく回避すると、両腕をクロスさせ彼に向かって突き進む。

「無駄だぜ無駄!!」

もう片方の棒を持つ手を引っ張り投げた方で後ろからの攻撃を仕掛けてくるカラス。今のを見た限り彼の魔力はほとんど残ってないはず。だから力で武器を引き寄せたのだから。

「そんなにこいつが大切なら」

彼の目の前で急ブレーキをかけ背中を向ける。つまり、後ろから迫ってくる武器へと正体したことになる。

「これで仕留めてやる!!」

向かってくるヌンチャクの片端をガッシリと掴み、振り向き様に敵の折れた手の甲を突く。

「っ!!」

重症部位を突かれたことで声にならない激痛に襲われ、全身から力が抜け落ちた青年。その隙に彼の武器をこちら側へと引き寄せ、それぞれを合わせて両手で無理矢理持ち上げる。

「タァッ!!」
「ガッ!!」

高々と振り上げ脳天を撃ち抜く。巨大ヌンチャクの重量と脳天を強打されたカラスは、その衝撃に耐えきれず意識を失い、地面へと崩れ落ちた。










 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
最後の決着がやっぱり物足りない感が否めない・・なんだろう、何が悪いのかな?
ウェンディの方はラストもうまくいけそうな気はしてるけど・・・シリルだとうまくできない病気なのかな?

水竜「人のせいにするな!!」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧