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夢値とあれと遊戯王 太陽は絶交日和

作者:臣杖特
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レベル7中編 崇高なる存在は幻

 
前書き
前編のあらすじ
樢は、曰く付きの九衆宝家の娘、毛糸に誘われ決闘することに。
夢値とダードがその場に乗り込んだ時には、毛糸の《終焉のカウントダウン》が残り1ターンを示していた。 

 
「残り1ターンで、樢が負ける……」

哀手(アイデ) (モク) LP18600
手札:2枚
フィールド
Kozmo(コズモ)-エメラルドポリス》、《魂吸収》
伏せカード×2

九衆宝(クシュボウ) 毛糸(ケイト) LP4500
手札:6枚
フィールド
伏せカード×1


 いきなりの最終盤に、取り敢えず状況を見ようとダードと老伍路(オイゴロ) 夢値(ムチ)は樢と毛糸が戦っているフィールドに、特殊な布を被りながらもそもそと近づいた。
「このターンの樢さんのエンドフェイズに、《終焉(しゅうえん)のカウントダウン》を発動してから20ターンが経過し、樢さんは負けてしまいますね」
 夢値はスゥと座ると、バッグのポケットからポテトチップスを取り出した。
「呑気だなおい」
 ダードはお座りしながらも真剣な表情だ。
「大丈夫ですよ。これは、ぼくらの姿だけでなく声までシャットアウトしますから。音を立てて食べるポテトチップスは美味しいですね」
 夢値はボリボリとポテトチップスを食べた。
「いやそうじゃなくて、九衆宝家ってのは爺さんが家族ぐるみでサンサーヴ探させてるとこなんだろ?もし樢が決闘(デュエル)に負けたりしたら、取られるんじゃないか?」
「それはそうですが、人の決闘に口を挟むのは気が進まなくて」
「人ん()に忍び込むのはいいのか?」
「それは必要な犠牲です」
 夢値はきっぱりと言った。
「わけ分かんねぇ」
「ともかく、ぼくとしてはこの戦いは見守って……あれ?」
「どうした夢値」
 ダードは、突如言葉を切った夢値と同じ方向、樢の方を向いた。

「ええと、私のターンだよね?ド、ドロー」
 樢が渋い顔でカードを引くが、顔は一向に晴れない。
「うわーどうしよう。どうやったら逆転出来るだろう……」
 樢はぶつぶつと呟いている。特殊なスピーカーを併用しているので、少しぐらいの小声なら夢値達にも拾えるようになっている。
「どうやったら、そもそもこのデッキ、勝つには……うーん、」
「きつそうだな」
 ダードは張りつめた顔で呟いた。
「まだ終わりって決まったわけじゃないが、これからどうにかするのは難しそ……お前は何をしているんだ?」
 ダードが横を見ると夢値は樢のフィールドを見て、何かを数えている。
「うーん、ぼくの目算が正しければですけど」
「なんだ?」
「樢さんのデッキ、61枚ありますね」
「はぁ?」
 遊戯王のデッキ枚数は、40~60枚と定められている。
「よく1枚の違いが分かるな。樢が入れ間違えたのか?」
「うーん」
 夢値は下を向いた。
「心当たりが無いですね」
「心当たり?」
「あのデッキ、《(となり)芝刈(しばか)り》を入れる為に60枚デッキにしたんですが、60枚も入れたいカードが思いつかなかったので、うっかり越しちゃったってことは、あまりないと思いますが……」
「なんでそんな知って……あ、そうか」
 ダードは肉球をポンと打った。
「あれがお前の言っていた、護身用のデッキか」
「いえ、それと間違えて未完成のデッキ持たせちゃいました」
「はぁ!?」
 ダードは声を荒げた。しかし外には漏れない。
「《魂吸収》と《エメラルドポリス》ということはほぼ確実ですね。いやぁ、びっくりでしたよ」
 夢値はあははとはにかんだ。
「え、は、み、未完成ってなんだよ?」
「デッキとして形にした後に1人回ししてみたんですが、どうもデッキとして安定しなくて。ぼくが使う分にはそこまで問題にはならないんですが、初心者の樢さんに渡すものとしては未完成なんです。あと使い方難しいし」
「そんなん使わせちまって大丈夫なのか?」
「それは樢さん次第ですね。で、その樢さんは?」
 無理矢理視線を樢に引きちぎると、どうやら樢はぶつぶつ呟くのをやめたようだ。暗いながらもどこか悟ったような目で対戦相手と、自分の手札を見た。
「元気そうですね」
「あれのどこが元気そうなんだよ。というか、」
「スタンバイ、メイン」
「あいつ、なんか様子おかしくないか……?」
 ダードの声も届かず、樢はゆらりと伏せカードを捲った。
「まだ勝てる。リバースカード、《攪乱作戦(かくらんさくせん)》!」
「……」
 毛糸の眉がピクリと動いた。
「「《攪乱作戦》!?」」
 ダードも夢値も素っ頓狂な声を上げた。
「って、夢値が入れたカードじゃないのか?」
 ダードは夢値の方を振り向いた。
「はい。多分あれが、61枚目のカード……」
「……それにチェーンして《PSYフレームギア・ε(イプシロン)》の効果を発動」
 毛糸が動いた。罠カードを無効にする『PSYフレーム』だ。
「あ、あれを止めるのか!?。ただ単に、手札をデッキに戻して、戻した分ドローするだけのカード、九衆宝の手札が減るわけでもないんだぞ?」
「でも、《撹乱作戦》は普通のデッキには入らないカード。溢れる程妨害を持っているなら、念には念を入れてということもあります」
 夢値は見えない毛糸の手札を注視した。
 《ε》と《ドライバー》が毛糸のフィールドに特殊召喚され、罠カードの《攪乱作戦》は無効になり破壊された。
「だけどこれで、他の『PSYフレーム』の効果は使えない」
 樢は口角をニュッと吊り上げた。
「そうね」
 毛糸は表情を変えない。
「やっぱ樢のやつ変だ。あんな気味悪い笑い方するやつか?」
 ダードは顔だけを夢値に向けた。
「案外友達の前では日頃からあんな感じなのかもしれませんよ?」
「あのな」
「というか、」
 夢値は顔を毛糸の方に逸らした。
「毛糸さんも全く動じてませんよね」
「そうだな。あいつ、何か知っているのか?」
「知っているわ」
「そうなんですかー……、ぁ?」
 突然の声に驚いていると、毛糸の顔が、視線が、夢値とダードを射抜いた。
「あれはサンサーヴの影響よ、侵入者さん」
「あ、……」
 夢値は愛想笑いをした。
「ど、どうもご親切に……」


「……って夢値、ダード!?」
 樢にも見つかってしまったようだ。だがその素っ頓狂な声にダードは少し安堵した。
「ちょ、え、なんで、2人、じゃなくて1人と1匹が……」
「へぇ、樢さんの知り合いなのね」
 毛糸は夢値に視線を向けた。
「それで、どうしてぼく達のことが分かったんですか?特殊な機械でちゃんと姿を消していたのに」
「サンサーヴを巡る諍いに、身を隠す人が出てくることぐらいは想像つく」
「成る程。隠す機械があれば暴く機械がある、ということですね」
「それに、床に突然お菓子のカスが散らばっていたら誰だって不審に思うわ」
「あちゃー。ごめんなさい掃除しますね。それでちりとりは……」
「夢値!」
 椅子を蹴る音と樢の怒鳴り声で夢値はビョンと向き直った。
「御機嫌如何ですか、樢さん?」
 夢値はにっこり微笑んだ。
「あんたのせいで最悪よ!」
 樢は思い切り夢値を睨みつけている。
「まぁまぁ樢さん」
 夢値はゆっくり立ち上がりながらにこやかに手で宥めるようにした。
「まぁまぁじゃない!着いてこないでってあれだけ言ったのに!」
「着いていったんじゃなくて、改めて毛糸さんの家を調べて乗り込んだんです」
「違わないでしょ!」
「まぁまぁ、災い転じて福となすって言うじゃないですか」
「福になってないでしょうが!」
「いいえ、どうもこの場にぼくがいた方が良さそうなので」
 そう言うとちらりと毛糸を一瞥した。
「なんかごたごたしそうですもん、ね?」
「……」
「ってケートごめんね!」
 樢は腕で夢値を押しのけた。
「えっと、この子達はその、なんか、親戚?の子で、」
「樢さんのいとこの割り箸のはとこに顔が似てる人の甥です」
「アンタは黙ってて!」
「大丈夫、予想はつくわ」
 毛糸は静かな表情で立ち上がった。
「よ、よかった、」
「大方、サンサーヴを守る為に雇った傭兵でしょう?」
「そこまで分かるの!?」
 樢は驚きからかよろめいた。
「傭兵、という言い方は少年の心に響かないんですよねぇ」
「え、え、じゃあ、何?もしかして、ケートもハンターなの!?」
 夢値を無視しながら樢は顔を強張らせた。
「ハンター、ね。ハンターを『サンサーヴを自分の手中に収めようとする人』とするなら、私はそうではないわ」
「ええっ!?」
 驚く夢値。
「……んで、結局そこら辺の関係なの?」
 淡々としている樢。
「そこら辺?」
「いや、なんかごめん、サンサーヴ関連でどうこうしてる人達って、みんな同じに見えちゃって……」
 樢は気まずそうに応えた。
「……私も、サンサーヴを追っているという点ではハンターと同じね」
「な、成る程」
「質問でーす」
 夢値はぴょっと手を挙げた。
「サンサーヴを手に入れるのが目的でないのなら、何が目的なんですか?」
「私は……」
 毛糸は拳を握りしめた。
「サンサーヴを無力化する」
「無力化する!?」
 驚く樢。
「成る程!意外とブレイクスルーなスキルかもしれませんね!」
 感心をしている夢値。
「こちら『アミゼ』としては綺麗なサンサーヴさえあれば能力はどうでもいいんですよね。むしろ曰く付きの能力という他のセールスポイントが消えれば狙うハンターも減りますし。実際のところはディアンさんに確認しますけど、多分ぼく達も力になられるんじゃないかなと思います」
「いえ、結構」
 興奮したようにまくし立てる夢値を毛糸は片手で制した。
「そうですか。気が変わったらよろしくお願いしますね」
 夢値はどこからか取り出した椅子に座った。
「で、無力化って、どうするの?私はどうすればいいの?というかどうされちゃうの?」
「手順としては、まず、樢さん。あなたの中のサンサーヴをこの決闘で目覚めさせるわ」
「それ、私大丈夫なの?」
「あなたに害は無い筈。恐らく」
「恐らく!?」
「それってどうやってやるんですか?」
 夢値が挙手した。
「サンサーヴは戦うことを好み、戦いに負けることを嫌う。だから、まだ完全に目覚めていないサンサーヴをずっと決闘で劣勢に置き続けて、怒りで覚醒を早めれば、おそらくこの決闘が終わる頃には完全に目覚めている筈よ」
「成る程。そんな性質があったとは知りませんでした」
 夢値は感心するようにうんうんと頷いた。
「それで樢さんを乗っ取らせて、それから?」
「完全に覚醒したサンサーヴを決闘で負かして、特殊な装置で封印する」
「へぇぇ。そんな物まであるんですか。面白い時代になりましたねぇ」
「そして、サンサーヴを破壊する」
「へ……え?」
 ニコニコしていた夢値が固まった。
「なんで破壊するんですか?」
「封印をする物があるなら、また封印を解く物もあるのよ」
「ぼく達が封印されたサンサーヴを守ります」
「いいえ、あなた達が何を思っているのかなんて関係無い」
 毛糸は苦虫を噛み潰したように、それでも殆ど表情を崩さず前を睨んだ。
「まだ可能性があるなら、人はそれを追う。だから私は、全部壊して無くす」
「……あなたのおじいさんの可能性も、ですね」
「そうね」
 毛糸はあっさりと頷いた。
「へ?ケートのおじいさん?」
 状況が分からない樢に、毛糸は昔話を始めた。没落した九衆宝家、その復興をかけて初めたサンサーヴの捜索、サンサーヴ捜索の理由付けで家族皆で行ったテーマパーク。
「サンサーヴの無い現在での凋落を、誰も全く気にしていなかったわ。まるでサンサーヴを言い訳にするみたいに」
「ケート……」
 樢は溢れるように呟くと、スゥと顔を上げ毛糸を見据えた。
「さっさと決闘するぞ」
 樢は毛糸を睨みつけた。
「!?」
「え、いや、ケート、今のは……」
「知っている。あなたじゃなくてサンサーヴの声ね」
「そう!多分それ!そんなことどうでもいいからさっさと続きするぞ」
「随分サンサーヴの侵食が進んでいますね」
 夢値は樢の顔をじぃっと見た。
「あなたもせっかちね」
「いや、待って、さっきのも」
「樢さんに言ったわけじゃないから」
「どうっでもいいんだよ!俺を散々待たせやがって。俺としてはずっと前から我慢の限界だったけどよぉ、俺を封印するだの言ってたからなぁに言ってんだと聞いてやってたんだ。そっから先はなんだ!?お前が過去で誰とジェットコースターに乗ろうが誰と神社でジェットコースターに乗ろうが俺の知ったこっちゃねぇ!」
 樢は吐き捨てるように怒鳴り散らした。
「え、私、どうなって」
「樢さん大丈夫よ。サンサーヴは怒ると早く目覚めるようになるの」
 焦る樢に対し毛糸は落ち着いた声をかけた。
「そっか……。これも、ケートの計算の内なんだね」
「ええ」
 毛糸は頷いた。
「ただ、ここまでサンサーヴの侵食が早いのは想定外。あなたとの決闘はおあずけね」
「……」
「またいつか、やりましょう」
「……うん」  
 樢が頷くと、樢の首がガクンと上がった。
「もういいだろ!もういいだろ!なぁ!!」
「…………そうね」
 毛糸は、冷たい目で樢を見据えた。


「《エメラルドポリス》の第1効果を発動。ゲームから除外されている《Kozmo-シーミウズ》を手札に加え、ライフを300失う。更に《エメラルドポリス》の第2効果だ。手札の《フェルブラン》をデッキに戻し、1枚ドロー」

樢 LP18600→18300

 手始めに樢は手札を交換した。そしてドローフェイズに引いたカードを墓地に滑り込ませる。
「手札の『ライトロード』をコストに《ソーラーエクスチェンジ》。2枚ドローしてデッキの上2枚を墓地に送る」
 墓地に落ちたのは、《シーミウズ》2枚。
「おかしい、なんかおかしいぞあれ」
 ダードは煙の中にいるような渋い顔をした。
「ターン初めのドローと《エメラルドポリス》で引いた合計2枚が『ライトロード』と《ソーラーエクスチェンジ(ソラエク)》で、その《ソラエク》で落としたカードが同じカードだと?」
「ふん。これくらいでいいだろう。墓地は十分、手札も増えない。《死者蘇生》のような展開するカードも全部墓地が除外ゾーンだ」
 樢はまるで寛大な為政者のように言い放った。
「あいつ、まるで自分の引くカードを操作出来るみたいに……」
「サンサーヴは人知を超えた存在。出来ると言われれば確かに出来そうですが、どうなんでしょう」
 夢値は当の対戦相手を見やるが、毛糸は一向に表情の変化を見せない。
「《鳳凰神(ほうおうしん)羽根(はね)》で手札の《アマゾネスの射手(アマゾネスアーチャー)》をデッキの一番上に戻す」
「《シーミウズ》、《アマゾネスの射手》、成る程な」
「ええ」
 夢値は頷いた。
「《シーミウズ》の効果で墓地の《シーミウズ》を特殊召喚することが出来るので、《シーミウズ》を墓地に送り続ければ無限に《シーミウズ》を出すことが出来ます。あとは《シーミウズ》がレベル3なことを生かして無限にモンスターをリリースすることで勝つことが出来る《M.X(ミッシングエックス)-セイバー インヴォーカー》と《アマゾネスの射手》のセットでそのまま勝利です」
「だが《シーミウズ》の効果で特殊召喚するには1回毎に1000ポイントのライフが必要だ。普通ならこのコンボは《脳開発研究所(のうかいはつけんきゅうじょ)》でライフポイントの支払いを無くすんだが、これはどうしてるんだ?」
「頑張って《魂吸収(たましいきゅうしゅう)》で回復します」
「……は?」
 ダードはこのデッキの作り主の言葉にぽかんと口を開けた。
「このコンボで《アマゾネスの射手》の効果を7回発動して勝利する為に必要なライフは確か13000。例えばライフ8000ポイントの状態で《魂吸収(たましいきゅうしゅう)》を発動し、《強欲(ごうよく)貪欲(どんよく)(つぼ)》のコストでデッキを10枚除外すれば、1枚につき500ポイントだから5000ポイント回復してこれでもう13000です。そう考えれば、コンボパーツが増える《脳開発研究所》型より強い!と思ったのですが……」
 夢値は顔を落として溜息をついた。
「思いっきり《魂吸収》に依存してるな」
「ですねぇ」
 夢値はだるっと頷いた。
「まぁライフ5000も回復すんのは骨だしな。簡単なことじゃない」
「というわけで仮組みしたまま放置していたのを、間違えて樢さんに持たせちゃったってわけですね」
「ちゃんとしろよな」
「ホントですよねぇ」
「他人事じゃないっての」
「ところで戦局はどうですか?」
 夢値は露骨に話題を逸らした。
「《シーミウズ》を召喚して第2効果を発動」

樢 LP18300→17300

「それにチェーンして《エフェクト・ヴェーラー》」
「笑止!《妖精伝姫(フェアリーテイル)-シラユキ》の第2効果で《シーミウズ》と墓地のカード6枚を除外する。これで《エフェクト・ヴェーラー》の対象になった《シーミウズ》の効果は有効」
「手札の《増殖(ぞうしょく)する(ジー)》の効果を発動」
「無駄なことを。処理するぞ。墓地の《シーミウズ》と《シラユキ》を特殊召喚」
「《増殖するG》の効果で2枚ドロー」
「《魂吸収》でライフポイントを3500ポイント回復する」

樢 LP17300→20800

 フィールドにモンスターを並べた樢に対して、毛糸は手札を増強した。
「《シーミウズ》の効果を通したのはいいが、ループを始めるには《インヴォーカー(インヴォ)》と《シーミウズ》の並びがいる。《シーミウズ》2枚でどうするんだ?」
「いや、これは伏せてあるカードが」
 夢値が樢の伏せカードを指差すと、樢はそれを発動した。
「罠カード、《バージェストマ・レアンコイリア》だ。《シーミウズ》を墓地に戻させてもらう」
「これでまた場に《シーミウズ》と墓地に《シーミウズ》2体か」
「またコンボを始められますね」
「さぁさぁさぁ!まだ足掻くかなぁ?」
 樢はニタリと笑った。
「あなたのターンよ」
 毛糸はまだ表情を崩さない。
「ならお望み通りに。2体目の《シーミウズ》で3体目の《シーミウズ》を特殊召喚。そして効果使用済みの《シーミウズ》2体でエクシーズ召喚だ。現れよ、《M.X-セイバー インヴォーカー》」

樢 LP20800→19800

 この間に毛糸はカードを2枚ドローしている。
「いくら手札があろうと、遊戯王は勝利した者が勝者!ほぉら、《インヴォーカー》だ。来い《アマゾネスの射手》」
「コンボが揃ったな」
「ですね」
 これから何度でも出せる《シーミウズ》を《アマゾネスの射手》で何度もリリースすれば樢の勝利となる。だが、それでも毛糸からは弱気が見えなかった。
「その能面みたいな顔をぶち抜いてやるよぉ!《シーミウズ》で《シーミウズ》を蘇生」

樢 LP19800→18800

「そして《アマゾネスの射手》で《シーミウズ》と《インヴォーカー》をリリース!1発目ぇ!」
「手札の《幽鬼(ゆき)うさぎ》の効果を発動」
「何ぃ!」

毛糸 LP4500→3300

 《アマゾネスの射手》がダメージを与えつつも破壊され、樢のループコンボが途絶えた。
「《幽鬼うさぎ》はモンスター効果を発動したモンスターも破壊出来るが、破壊したモンスターの効果は有効となる。だから1度破壊されても蘇生し直せる《シーミウズ》や効果を1度使えば用済みの《インヴォ》には使えなかったのか」
 観客のダードは冷静に呟くが、実際に毛糸の妨害に遭った樢は額に青筋を寄せている。
「ぐ、ぐぐ……」
「もう、やることは無さそうね」
 毛糸は冷ややかに樢を見つめた。
「ぐ、ぎ」
 樢の口からギリギリと嫌な音がする。
「することが無いのなら、ターンエンドするものよ」
「くそ……ぉ」
「……」
 樢は目を見開き毛糸をねめつけるが毛糸は冷たい表情だ。
 それから少しの時間の後、
「たーん、」
 樢は絞り出すような声で呟いた。
「えん、ど……」
「20ターン経ったので、私の勝利」
「うぉぉぉぉおおおぉおぉぉお!!」
 決闘に敗れた樢は血を吐くように絶叫した。 
 

 
後書き
読んでくれてありがとう
この展開はこの小説を初めた頃から考えていたのですが、あの、なんでズァークの設定と中途半端に被るんですかね。
いやそこは柔軟にいじればいいんですけど、なんかこういまいち代替案が浮かばなくて……ね。
さて、もうちょっと毛糸の頑張りが続きます。主人公は観客。
書いている内に話が二転三転したので、日本語おかしい所あるかもしません。あったらコメントなりでお願いします。 
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