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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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603部分:第八十六話 四柱の神々その六


第八十六話 四柱の神々その六

「いいことだな」
「全くじゃ。それではじゃ」
「うむ。これで終わるのか」
「いや、そうではない」
 姿を消すというのではなかった。これからであるというのだ。
「これからじゃよ」
「何がだ、今度は」
「わしのことじゃが」
 彼自身のことであった。男がこれから話すことはである。
「よいか」
「うむ、何だ」
「その子供達のことじゃ」
「あの子供達のことか」
「一人わしに預けさせてくれるか」
 こうシオンに申し出てきたのである。
「ここはじゃ。よいか」
「御前にか」
「左様。幸い聖衣もある」
 それもあるのだという。
「だからじゃ。一人な」
「そうだな。それはだ」
「よいか?」
「いいだろう」
 シオンも彼のその申し出に対して賛成の言葉で返したのだった。
「それではだ」
「そうか。済まぬな」
「その手配はしておく」
「では決まりか」
「あの子供達は大きな力だ」
 それは既に決まっているというのである。もう既にである。
「その力を育んでくれ」
「済まぬのう。わしの我儘に」
「あの聖衣だけではあるまい」
 シオンは男に対してさらに言ってきた。
「御前が求めているのは」
「ふぉふぉふぉ、それもわかるか」
「長い付き合いだ。当然だ」
 わかるのはそれが当然だというのであった。
「その程度のことはな」
「御主はアリエスの聖衣をムウに継がせた」
「うむ」
「ならばわしもじゃ」
「黄金聖衣は主を選ぶ」
 シオンが今度言ったのはこのことだった。それは彼がかつて黄金聖闘士だっただけにとりわけよくわかることであった。実感としてである。
「ならばだ」
「そうじゃ。ならばじゃ」
「御前が育むその子供もまた」
「選ばれるように育てるつもりじゃ」
 そうするというのである。
「そう、わしが育てたあの者達の様にじゃ」
「アルデバラン、デスマスク、シュラ、カミュ、アフロディーテの様にか」
「あの者達はよくやってくれている」
「そうだな。そして」
「ムウ、アイオリア、シャカ、ミロ」
 男が名を挙げたのはこの二人であった。
「この者達もじゃな」
「黄金聖闘士になることはわかっていた」
 シオンはこれもまた既にというのである。
「それもだ」
「そうじゃな。わかっていたが」
「思い出してもらう必要があった」
「本人達が覚えておらずともじゃな」
「サガにアイオロスも同じだ」
 黄金聖闘士の中で年長の彼にしてもそうだというのである。
「あの者達もだったな」
「サガはわしが育て」
「アイオロスは私が育てた」
 二人をそれぞれ育てたというのである。
「場所は様々だったがな」
「ふぉふぉふぉ、思念は幾らでも遅れるからのう」
「そうだな。それではだ」
「その子供もしかと育ててみせよう」
「頼むぞ。そしてだ」
 ここでさらに言うシオンであった。
「他の子供達もだが」
「それぞれに相応しい師を用意するのじゃな」
「今十の聖衣が空いている」
 それだけの数がだという。
「そしてその中にはだ」
「そうじゃな。あの聖衣もある」
「あの聖衣を受け継ぐべき子供もまたいるのじゃ」
「全てはあの時のままじゃな」
「そしてアテナも」
 彼等の中で話が続く。それは今を語っているものではなかった。彼等の遥かな過去を、そして未来を語っている言葉であった。
「その中におられる」
「そうじゃな。間も無く全てがはじまる」
「その時には私はいない」
 シオンは、というのだ。
「それが心残りと言えば心残りだが」
「運命には誰も逆らうことはできんよ」
「それもわかっている」  
 全てがわかっている。それは間違いなかった。そのうえでのやり取りである。
 その中でだ。さらに言うシオンであった。
「だからこそだ」
「わかっておる。わしもその時になればじゃ」
「頼んだぞ」
「うむ。それではじゃ」
「今日はこれで終わりだな」
「そうじゃな。それではな」
 こう言い合ってそのうえで男が鏡から消えてそれで終わった。シオンも鏡が男が姿を現す前に戻って無数の世界をそこに映し出しているものになるとであった。その場から静かに立ち去ったのであった。後に残ったものは静寂、その一つだけであった。


第八十六話   完


             2010・1・14
 
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