八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十四話 軍港その七
「一番動きやすいから」
「だからなのね」
「そう、半ズボンよ」
その体操着を選んだとのことだ。
「うちのクラス膝までのズボンが多いけれどね」
「半ズボンは冬寒いですよ」
早百合さんはこうラブポーンさんに話した。
「ジャージがいいです」
「冬は」
「冷えますので」
だからだというのだ。
「女の子は身体を冷やしてはいけません」
「そのことはよく言われるけれど、私も」
「はい、本当にくれぐれもです」
「女の子は身体を冷やしてはいけない」
「そうです」
絶対にという言葉だった。
「お気をつけ下さい」
「半ズボンじゃ冷えるのね」
「日本の冬は」
そうだというのだ。
「特に神戸はそうらしいです」
「はい、神戸の冬はきついです」
その神戸に生まれ育っている人間としてだ、僕は早百合さんに答えた。
「六甲おろしがありますから」
「はい、だからですね」
「前は海、そして後ろは山ですから」
それで陸の部分が狭いのだ。
「後ろから来る山からの風でいつも冷やされますから」
「そうですね」
「本当に寒いです」
神戸の冬はだ。
「底冷えします」
「では冬の体育で半ズボンは」
「冷えます」
僕ははっきりと答えた。
「足が出ている面積が多いだけに」
「だから動きやすいけれどね」
「それでもなんだ」
ラブポーンさんにも話した。
「神戸の冬は冷えるよ」
「そうなのね」
「はい、そうなんだ」
まさにとだ、僕は話した。
「神戸の冬は気をつけてね」
「じゃあジャージもなのね」
「用意しておいた方がいいよ」
僕は断った、それも強く。
「神戸の寒さは侮れないから」
「去年からロシアから来てる娘は余裕って言ってたけれど」
「ロシアは違うから」
僕はこのこともはっきりと言った。
「その娘確かロシアはロシアでもサンクトペテルブルグの生まれだよね」
「うん、そうよ」
「あそこはロシアでも特に寒い街だから」
北極圏にある、まさにその場所に。
「格が違うよ」
「日本の冬とは」
「何しろ氷点下三十度らしいから」
「うわ、氷点下で十度をずっと下回るの」
「そうなんだよ」
「タイなんて氷点下なんてね」
ラブポーンさんのお国では、というのだ。
「冷凍庫の中だけの話よ」
「そうだよね」
「それが冬は普通なの」
「酔って道で寝たら凍死するよ」
そのせいかロシアでは道で凍死する人交通事故で死ぬ人より多いらしい。流石ロシアだと思うけれど凄い話だ。
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