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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十四話 軍港その二

「とても、そもそも鉄棒は」
「苦手ですか」
「今は全くしません」
「そうなんですか」
「何か手を痛めそうで」
 見れば早百合さんは今も革n手袋を着けている、半袖の制服だけれど手はそうしてしっかりとガードを固めている。
「体育の競技でもしませんし」
「だからですか」
「しないです」
「手が大事ですか」
「はい」 
 何といってもというのだ。
「ピアノを弾くものなので」
「だから今も手袋をしていて」
「守っています」
「本当に手を大事にしていますね」
 早百合さんはピアノを弾く時以外は手袋を脱がない、そうしていつもガードしている。
 そのうえでだ、こう僕に言った。
「大事にし過ぎて悪いことはないと思います」
「ピアノは手ですからね」
「はい」
 だからという返事だった。
「そうしています」
「だからですね」
「そうです、ですがどなたも大車輪が出来たとは」
「予科練では」
「予科練は凄い場所だったのですね」
「精鋭でしたから」
 何しろ募集倍率も驚く位だった、そうして厳選した精鋭を鬼の様な訓練でさらに鍛え上げた。それで強くない筈がない。
「海軍の中でも」
「パイロットの方々として」
「そうでした、あと」
「あと?」
「予科練の人達の軍服って人気あったんです」
 僕は早百合さんにこのことも輪した。
「七つボタンで」
「八条学園の制服にもある」
「はい、あの詰襟です」
 白と濃紺がある、学園の制服の中に。
「あれです」
「あれは元々ですか」
「予科練の服だったんです」
「そうだったのですね」
「今も海自さんでは航空学生や曹候補生の制服なんです」
「そうですか、今も着ている方がいるのですね」
「そうなんです」
 僕は早百合さんにこう説明した。
「元々は」
「そうですか」
「白が夏で」
「紺がですね」
「黒だったかも知れないですが」
 形はともかく色は今一つどっちか覚えていない。
「とにかく七つボタンでした」
「予科練の冬の軍服は」
「そうでした」
「そうですか、あの七つボタンがですか」
「予科練の制服でした」
 僕はまた早百合さんにこのことを話した。
「それで今はです」
「航空学生や曹候補生の方が着ているのですね」
「そうです、あの制服はセーラー服と違いまして」
「所謂エリートですか」
「ですかね、何か曹候補生は候補学生だったそうですが」
 二年で三曹、下士官になれたらしい。曹候補士や一般採用の人達ははセーラー服だったけれどこの人達は制服からして違っていたとのことだ。
「その頃からなんです」
「七つボタンの制服だったのですね」
「そう聞いています」
「何か明らかな差別化ですね」
「海自さんはそうみたいですね」
 陸自さん、空自さんと違ってだ。 
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