魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Eipic19-Bその日、ミッドチルダ~Lost Property Riot Force 6~
†††Sideアリシア†††
(いやぁ~、久しぶりの重要任務。ちゃんと参加できて良かった~♪)
ホテル・アグスタの警備任務で、リヴィア・アルピーノに撃墜されてからというもの、入院したりリハビリしたりと六課を空けて、みんなにいっぱい迷惑を掛けた。特に海上戦の時なんて、入院中に増えた体重を落とすためのダイエットとかいうふざけた理由で不参加だったし。
(退院してからは一応、フェイトやアリサ、ギンガとも一緒に外回り仕事やったけど・・・。ほとんど実入りの無いものだったし。ここはやっぱりおっきな仕事をサクッとやり遂げないと、復帰したって感じがしない)
そう、公開意見陳述会が開催される今日、プライソンは地上本部、それにわたし達の居る六課の隊舎にも襲撃があるかもしれないという話。地上本部を襲撃する理由は未だに判ってないけど、六課を攻める理由だけは確定してる。
(ヴィヴィオとフォルセティ・・・)
プレシアママがわたしの遺伝子からフェイトを生み出したように、プライソンが古代ベルカの王様オリヴィエと、騎士オーディンの遺伝子から生み出した子供2人だ。何かしらの計画に必要だからこそ、わざわざ聖王教会本部から聖遺物を盗んでまで生み出したんだから、必ず奪い返しに来る。その戦力を迎撃するのが・・・
「お待たせ、アリサ、すずか、シャマル、ザフィーラ、アイリ、ヴァイス」
わたしを含めての7人の防衛戦力だ。他にルシルっていう管理局内でも指折りのSSランクが居るけど、残念ながら内務調査官っていう味方でも敵でもない中立の立場っていうことで一緒に戦えない。でもルシル抜きだって大丈夫。わたし達7人なら、どんな奴らが来ても勝てる。
「これで全員ね。公開意見陳述会が終わる19時まで残り15分。出撃前に防衛戦の配置確認ね。あたしとザフィーラとアイリが前衛。隊舎前のターミナルにて戦線を張る」
「承知した」「ヤー!」
「すずかとシャマル先生は中衛。隊舎エントランスで陣地を張り、サポートをお願い」
「うんっ」「了解!」
「アリシアとヴァイスは後衛で、隊舎屋上から狙撃をお願い。向こうはAMFを常備する兵器が主要戦力だから、ヴァリアブルシュートを主要魔法として使って」
アリサからの指示に、「オッケー!」あたしと、「うす!」ヴァイスも頷き応える。そう、勝つ自信はあっても統率の無い戦闘だと危ないから、隊舎のエントランスで集合して、こうして作戦の再確認中。
「アリシアさん、同じスナイパー同士よろしくお願いします!」
「うんっ!」
「それじゃ、19時に備えて配置につきましょ」
そういうわけで、あたし達はそれぞれ配置先へ向かう。わたしとヴァイスは隊舎の屋上へ上がって、ヴァイスは陸士武装隊共通のバリアジャケットに変身して、ドッグタグ型の待機モードをした“ストームレイダー”を、スナイパーライフル型のカートリッジシステム搭載デバイスに変形させた。
「フォーチュンドロップ! ブレイブスナイパー!」
≪ブレイブスナイパー、オッケーで~す♪≫
宝石で出来たフリージア型の待機モードをした“フォーチュンドロップ”をキャンディポッドに変形させた。そしてポッドの中から丸いアメ玉のような宝石が飛び出して来て、ソレがスナイパーライフル型のデバイス・“ブレイブスナイパー”に変形。
「こちら後衛。スタンバイ・オッケー!」
『了解。前衛、中衛もすでに準備完了しているわ。あとは19時に注意して待機よ』
それから19時までの間、わたしとヴァイスはスコープを覗き込みながら360度をしっかり警戒。そして『19時まで残り10秒となりました』司令室のグリフィスから連絡が入る。わたしは「・・・5、4、3、2、1、0!」カウントして、とうとう陳述会の終了予定時刻の19時になった。
『各員、襲撃に備えよ!』
アリサからそう言われるけど、ぐるりと周囲をスコープで覗いても人っ子1人、ガジェットや戦闘機の機影すら見えない。
『八神部隊長より連絡があり、地上本部に襲撃があったそうです! こちらへの襲撃も考えられるので最大の警戒を、とのことです!』
こっちは静かだけど、地上本部はすごくホットみたい。とにかく地上本部の様子を見るためにスコープをそっちに向けると、「マジかよ。シールドが可視化してんじゃねぇか・・・」ヴァイスと、「そこまで強い攻撃なの・・・?」わたしは、物理シールドがフル稼働してる状況に戦慄した。
『アリシア、ヴァイス。そっちからは何か見えない?』
「いえ。アリサ姐さん。地上本部だけが襲われてるみたいっすよ」
「うん。隊舎周囲にイレギュラー反応なし」
『六課の探査システムでもクリアです』
六課じゃホントに何も起きないのに、「おい、冗談だろ! シールドが!」地上本部を護る物理シールドが砕けたのがスコープ越しで見えた。ヴァイスがうろたえるのも解る。ゲイズ中将は鉄壁だって評価してる地上本部を護る物理シールドは、他の地上本部にも設けられてるもので、その強固さは有名だ。
『クイント・ナカジマ准陸尉、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、およびガジェット群が、地上本部が勧めていた魔力砲台アインヘリヤルを襲撃。直掩部隊と交戦、これを壊滅』
『クイント准陸尉たちはそっちへ行ったのね・・・。メガーヌ准陸尉、ルーテシア、リヴィアは?』
『地上本部近辺でルーテシアの魔力、召喚魔法が確認されました。おそらく、一派総出で本部を陥落させるつもりかと・・・』
アリサとアルトの通信を聴きながら周囲を警戒してると、『アリシア執務官補、ヴァイス陸曹。南方の空に何か見えませんか?』シャーリーにそう訊かれたから、ヴァイスには周囲警戒を続けさせて、わたし1人で南の空を見る。
「どうっすか、アリシアさん?」
「う~ん、雲が多い上に星の光が強いからね~・・・。でもシャーリー、南の空になんかあるの?」
倍率とかコントラストの設定を変えつつ南の空を見ながら訊くと、『地上本部の物理シールドを破った攻撃が、そちらから来ているようでして』とのことで、わたしは一層注意して空を見る。でも「わかんね~」だった。さすがに雲を見透かすことは出来ないからサッパリだ。
『どういった攻撃なのかは判ってるの?』
『はい、すずかさん。ヴィータ副隊長から言われたのですが、質量兵器であるため熱源を確認するように、と』
『あぁ、となると攻撃方法は・・・ミサイル、かな? 弾道か巡航かは判らないけど』
技術官としてのすずかはこういった兵装について勉強してるから、結構詳しかったりする。レールガンだってすぐに見抜けたりしたし。弾道とか巡航の違いは、管理外世界・地球で過ごしたことのあるわたしでも判るんだけど、「アリシアさん。そのダンドウとかジュンコウってなんすか?」魔法ありきの管理世界出身者のヴァイスは判らないよう。
「あー、簡単に説明すると、弾道ミサイルはこう・・・弧を描くように飛ぶのが特徴ね。一度大気圏外まで上げて、あとは慣性に従って飛んで来るの。巡行ミサイルは推進力と翼のある物で、こう真っ直ぐに飛ぶの」
「へぇ~。で、メリット・デメリットがあるんすか?」
「えっと・・・『すずか、ヘル~プ!』」
手振りを交えて説明すると、さらに詳しい事を訊かれたから思わずすずかに通信を繋げる。すずかは短く笑った後、弾道ミサイルは射程が長くて迎撃され難く、巡航ミサイルは命中率が高い、って軽く説明した。
『んで、そのどっちかのミサイルが撃たれてるってわけね。六課に撃たれてないのは不幸中の幸いね』
『熱源を探知しました! 加えて機影を確認! やはり南の空からで、高度2000mの距離32000!』
『サーチャーで機影を捉えることが出来ました! シャックス、アンドラス、シームルグが各10機、マルファスが2機の32機編隊!』
『地上本部を攻撃した物は残念ながら確認できませんが、高度は6500mの距離12000辺りだと思います!』
グリフィス達からの報告を受けて、スコープの設定を合わせて空を見る。雲の切れ間に「見えた!」戦闘機編隊の影を発見。あとはミサイルを見つけるだけなんだけど、「魔力シールドまで破られちまった!」それより早く着弾しちゃってた。
『各員、来たわよ!』
『魔力反応、増大!』
『召喚魔法を確認!』
アリサ、シャーリー、グリフィスから警告が入った。スコープを覗くまでもなく召喚魔法陣が海上に展開されたのが視認できる。だから「こちら後衛! 敵影視認後、攻撃開始します!」バイポットを立てて、床に伏せて“ブレイブスナイパー”を構える。そしてグリップにはめ込まれた魔石に魔力を流し込んで、「んっ・・・」魔石から数倍にして返還してもらう。これで今のわたしはAAA+の魔力だ。
「ヴァイス!」
「うっす!」
ヴァイスも“ストームレイダー”の銃口を召喚魔法陣上に合わせる。そしてガジェットのカプセルタイプのⅠ型と球体タイプのⅢ型の頭が出たのを視認して・・・
「「ヴァリアブル・・・」」
「シューット!」「バレット!」
魔力を圧縮して生み出した魔力弾を膜状バリアで包んだ、対AMF多重弾殻射撃魔法・ヴァリアブルシュート(もしくはバレット)を発射。召喚途中で撃ち抜くなんて、変身中とか口上中のヒーローに攻撃を加えるっていうKY攻撃だけど、ヒーローはこっち側だからきっと大丈夫、うん。
「ブレイブ、どんどん撃ち抜くよ!」
≪オッケー!≫
――ヴァリアブルシュート――
「俺たちも負けてられねぇぞ、ストームレイダー!」
――ヴァリアブルバレット――
出現しきる前に次々とガジェットを撃ち抜いていく。ヴァイスも百発百中の腕前でどんどん撃ち抜いてく。さすがはかつてはエース級のスナイパーと謳われた魔導師。わたし以上の速さで撃破数を伸ばしてる。わたしだって「負けてられない!」よね。
†††Sideアリシア⇒アリサ†††
地上本部への襲撃から遅れて始まった機動六課への襲撃。迎撃に出るのはあたし、すずか、シャマル先生、ザフィーラ、アイリ、そしてヴァイス。地上本部近辺にガジェットやら死体兵器LASやらを召喚していたルーテシアの召喚魔法が、ここ六課にも発生したとなればルーテシアやリヴィア、メガーヌ准陸尉がこっちに来てる可能性が大。
「その調子よ、アリシア、ヴァイス。おかげであたし達は楽できてるわ!」
隊舎屋上から精密射撃援護してくれてるアリシアとヴァイス。2人が召喚途中のガジェットⅠ型とⅢ型を撃ち抜いていってくれるから、前衛のあたしとザフィーラとアイリ、中衛のすずかとシャマルは、ただ眺めてるだけで良い状況だ。
「バニングス。撃ち漏らしだ、我々の出番だぞ」
馬鹿ほど召喚され続けるガジェット群。アリシア達も頑張って迎撃してくれてたけど、とうとう召喚を許したガジェットも出て来た。ザフィーラが真っ先に駆け出して、「ふんっ!」鋼の軛を発動。Ⅰ型のガジェット4機を拘束杭で真下から貫いた。
「アイリ!」
「ヤー!」
あたしとアイリもいざ出陣よ。“フレイムアイズ”の剣身に炎を纏わせ、それを大きく伸ばして「フレイムウィップ!」として振るってガジェットⅢ型3機を薙ぎ払う。アイリは「アイスマン!」ガジェット4機の周囲の水分を急速冷凍、ゆきだるま型の氷に閉じ込めた上で「氷結の軛!」拘束杭で貫いて粉砕した。
『警告! 魔力反応増大! SランクとAAA+ランク! ・・・メガーヌ准陸尉とルーテシアです!』
アルトから報告が入る。それと同時に、あたしも肌で魔力反応を感知できた。Sランクなんてそうはいないもの。だから「すずか、スペルブーストお願い!」こちらも万全の態勢で臨むまで。“フレイムアイズ”を片刃剣ファルシオンフォームから銃剣バヨネットフォームへと変形させる。
『うんっ! ザフィーラ、アイリ、2人にも行きます! パワーブースト・スペルフォース!』
あたしたち前衛3人に、対象の魔法の威力を強化するブースト魔法を掛けてもらう。
――グリッツェンラヴィーネ――
ガジェットの召喚が止んだと思った直後、「なんじゃこりゃ!?」海の中から3ケタ近い魔力弾が横一列に飛び出して来て、カクッと軌道を変えてあたし達の居るターミナルに向かって雪崩のように降って来た。すぐに迎撃をって思ってカートリッジをロードしていると・・・
「私と――」
「私で、防ぎます!」
「アイスミラー八陣の3、ウィドゥスウォール!」
「風の護楯!」
すずかとシャマル先生がそう言って、2人は即座にシールド、それぞれ4枚ずつの計8枚が横一列に並んで展開した。直後にガツンガツンと魔力弾の雨がシールド8枚に着弾していく。
(これほどの物量攻撃、ルシルくらいしか使えないって思ってたけど・・・!)
3ケタ近い魔力弾の一斉発射なんて、なのはやはやてですら無理なこと。この薄い紫色の魔力光はメガーヌ准陸尉のもので、彼女は確か近代ベルカ式の射撃魔法使い。いくら近代ベルカ式が、ミッド式魔法をベースに、古代ベルカ式魔法をエミュレートして再現した魔法体系だからと言って、純ミッド式の高位魔導師であるなのは以上の射撃が撃てるとは思えないわよ。
『アリサ! メガーヌ准陸尉とルーテシアの姿を視認!』
『Ⅱ型に乗って、海上からこっちに向かって来てるっす!』
攻撃が止んだところで入ったアリシア達からの報告に、「撃ち落しなさい」あたしは即指示を出す。わざわざ陸地に降ろして同じ土俵で戦う必要性は感じられないわ。海に落ちたところでサクッとバインドで拘束してやれば、メガーヌ准陸尉たちを傷つけることもないしね。
『りょ~か~い!』
――シューティングスター――
空色に輝く一筋の閃光が海上へ向けて放たれた。さらにもう1発、2発、3発、4発と撃ち続けられる。
――エッケザックス――
――トーデスドルヒ――
撃墜の報の代わりに海の向こうから砲撃1発と射撃魔法(はやて達ベルカ式射撃と同じダガータイプね)12発と飛んで来た。それらを回避しつつ、「アリシア! しっかり撃墜しなさい!」あんだけ撃っておいて外してんじゃないわよ、って注意する。
『ごめん! 防がれた! 狙撃を続ける!』
「Ⅱ型、メガーヌ准陸尉、ルーテシアを視認!」
すずかの言う通りガジェットⅡ型に乗って海上からこっちに向かって来るメガーヌ准陸尉たちの姿が、肉眼でもギリギリ捉えることが出来た。アリシアの狙撃をシールドで防いでるっぽいわね。その持続力と言い、大した防御力だわ。
――アドラーフリーゲン――
――トーデスドルヒ――
先行して飛来する射撃魔法による空爆。あたしは「フレイムバレット!」で、アイリは「フリーレン・ドルヒ!」で迎撃。アイリの28発っていう物量のおかげで、その全弾を迎撃できた。
「アリサ! 海上を狙って!」
「え?・・・ええ!」
“フレイムアイズ”の銃口をⅡ型の行く手の海上へと向けて、「イジェクティブ・ファイア!」火炎砲撃を発射。砲撃は一直線に海に着弾して派手に水飛沫を上げた。
「すずか!」
「うんっ!」
――リフリジレイト・エア――
水飛沫を瞬時に凍らせるすずかの氷結魔法。Ⅱ型の飛行速度と高度、タイミングを考えれば、直撃だったと思うんだけど。すぐに「あらあら」そんな戸惑いの声が頭上から聞こえてきた。凍った水飛沫の頂上に、「メガーヌ准陸尉、ルーテシア」が佇んでいた。
(やっぱりリヴィアの姿が無いわね・・・)
「さぁ、もうひと踏ん張りといきましょうか」
「うん。ママ。さぁ、お出で・・・」
あたし達の居るターミナル全体にいくつもの召喚魔法陣が一斉に展開された。再びガジェットが召喚されてきたんだけど、「無駄よ」即座にアリシアとヴァイスの狙撃によって撃ち抜かれたガジェットは爆散していく。
「メガーヌ・アルピーノ、ルーテシア・アルピーノ。あなた達を保護します。・・・もう1人、リヴィア・アルピーノは今どこに居るのか答えなさい」
ルーテシアと同じSランクで、奇襲とはいえアリシアを戦闘不能にし、エリオを完封したリヴィア。アルピーノ家で一番強いのはおそらくリヴィアだわ。あの子の姿が見えないことが不安でしょうがない。
「自分で探してはどうかしら? 管理局設備のある立派な隊舎が、すぐ後ろに在るのだし」
『ロングアーチ。リヴィアの魔力反応はある?』
メガーヌ准陸尉の視線が隊舎の方へ向く。だったらお望み通りこっちで調べてやるわよ、っていうわけでロングアーチに通信を繋げたんだけど、「・・・!?」酷いノイズだけが返って来た。これは通信妨害を受けてるわね。
「すずか、シャマル先生。ロングアーチと連絡が取れないわ。様子を見て来て」
「・・・判った。シャマル先生」
「ええ。ザフィーラ、アリサちゃん達をお願いね」
「うむ」
すずかとシャマル先生が踵を返して隊舎の中へと駆けて行ったのを確認して、「プリンツェッスィンとプフェルトナー、返してもらおうかな」あたし達の立つターミナルに1人降り立ってそう言うメガーヌ准陸尉へと視線を戻す。
「あんなに素晴らしかった貴女が、洗脳か改竄かは知らないけど最低な女性になってしまいましたね。あの子たちには、ヴィヴィオとフォルセティと言う名前があるのよ。それを・・・」
「??・・・大人しく引き渡さないなら、力尽くで取り返すのみよ。ルーテシア」
「ん。ガリュー!」
ルーテシアが何かの名前のような言葉を発した直後、激しい肉のぶつかる音と共に背後から「むっ!?」ザフィーラの驚きの声が聞こえてきた。ザフィーラの方を向くと、虫のような羽を生やした人型の人外が、ザフィーラに殴り掛かっていた。そして男同士?の殴り合いに発展。
「フォーゲルケーフィヒ」
そんでメガーヌ准陸尉は魔力発射体10基で構成されたリングを3つと展開。ルーテシアはルーテシアで、ガジェットⅠ型とⅢ型の召喚を続ける。
「ザフィーラ、ソイツは任せた! アリシア、ヴァイス、ガジェット迎撃をしっかり頼むわよ!」
「承知した」
『『了解!』』
戦術は変わらない。あたしとアイリで、メガーヌ准陸尉とルーテシアを抑える。“フレイムアイズ”のカートリッジをロードし、「クレイモアフォーム!」へと変形させる。半実体化した炎熱系魔力の大剣を有する“フレイムアイズ”の柄を両手で握る。
『アイリ、ちょっとだけメガーヌ准陸尉を抑えておいて』
『ヤー!』
――コード・シャルギエル――
アイリは自身の周囲に穂先がハート型の氷の槍を20本と展開して、「撃ってきなよ、メガーヌ准陸尉!」って挑発。
「言われずとも♪」
――シュヴァルムシュパッツェン――
メガーヌ准陸尉の周囲に浮遊してる魔力スフィアリングから、小さな魔力弾がガトリング砲のように連射されてきた。アイリも「ってぇぇーーー!」氷槍を一斉発射。メガーヌ准陸尉の攻撃に巻き込まれる前に・・・
「せい!」
――フォックスバット・ラン――
短距離高速移動魔法を発動して、凍った水飛沫の上に立って召喚魔法を発動中のルーテシアの元へと跳ぶ。ルーテシアの目の前で止まったあたしは“フレイムアイズ”を大きく振りかぶる。この時点でルーテシアは「っ・・・!」大きく目を見開いて、ベルカ魔法陣型のシールドを張った。
「(この速さ、オートで張ったわね・・・。でも)無駄よ!」
そのシールドへ向けて「うりゃぁぁぁぁ!」“フレイムアイズ”を横薙ぎに振るった。クレイモアフォームの強みはひたすらに高火力に尽きる。Sランクの魔力で作られたシールドだろうが、この火力を以って「ぶった斬る!」わ。斬撃がシールドに衝突。抵抗は確かに感じられたけど、すぐにガシャァン!と破壊した。
「あ・・・」
(安心なさい。刃で斬るんじゃなくて腹の方で打ってあげるわ・・・!)
刃がルーテシアに届く前に“フレイムアイズ”の向きを咄嗟に変え、剣身の腹でルーテシアをぶん殴ってやった。あたしの打撃をまともに受けたルーテシアは吹っ飛び、「ルーテシア!」ターミナルの方からメガーヌ准陸尉の悲鳴が聞こえてきた。
「アイリ・・・!」
凍った水飛沫の上に着地してターミナルを見ればアイリは片膝を突いていて、メガーヌ准陸尉との撃ち合いで押し負けたのがその様子で判る。そして人外は、ザフィーラに蹴り飛ばされたその勢いのままにルーテシアが吹っ飛んだ方へと飛び立った。
(今ならメガーヌ准陸尉を墜とせる!)
ルーテシアは手応えからしてリタイアしたはず。ガリューはルーテシア救出へ、メガーヌ准陸尉は意識を全部ルーテシアヘ向けてる。若干卑怯な感じだけど、これはメガーヌ准陸尉たちを救うチャンスでもある。プライソンをブッ倒すまでの間、保護しきればあたし達の勝ちよ。
「ヴォルカニック・・・スカッシャァァァァーーーー!!」
上段に振り上げていた“フレイムアイズ”を振り降ろしつつ、剣身を大きく伸長させてメガーヌ准陸尉にヒットさせようとした。メガーヌ准陸尉があたしからの攻撃に気付いてこっちを見上げたから目が合った。距離があっても判るほどの怒りを宿した眼光。
(今はどれだけ憎まれたって構わないわ。あなた達をプライソンの呪縛から解き放つためなら・・・!)
でもこれでメガーヌ准陸尉も撃破ってところで 、“フレイムアイズ”の剣身に強い衝撃が奔って「きゃあ!?」半物質化が強制的に解除されて爆炎と化した。
『アリサ! 7時の方から新手のガジェットⅡ型が16機! 兵装はレールガンとミサイルポッドを搭載した2種!』
『アリサ姐さんのフレイムアイズを撃ち抜いたのは奴らっす!』
アリシア達からの報告を受けた直後にまた、「っく・・・!」レールガンから射出された弾丸が襲ってきて、あたしの立っていた水飛沫を粉々に吹き飛ばした直後にドォーン!と遅れて砲声が聞こえてきた。
「ルーテシアが伸びてる間、Ⅰ型とⅢ型は召喚されないわ! その内に撃墜して!」
『『了解!』』
「アイリ! まだ動けるならルーテシアとガリューを捕縛しておいて!」
『ヤー!』
ミサイルポッドやらレールガンから放たれて来る何十発っていうミサイルと弾丸。ここですずか達を隊舎に向かわせたのが裏目に出た。シャマル先生だけでも防御担当として残っておいてもらうべきだったわ。
(レールガンはあたしを、ミサイルは隊舎を狙ってるわね・・・!)
飛行魔法を発動して、その場に留まって的にならないように動き続けながら“フレイムアイズ”を銃剣バヨネットフォームへと戻して、「フレイムバレット!」を連射してミサイルを迎撃しつつ、「メガーヌ准陸尉・・・!」にも火炎弾を撃ち込む。
「この・・・!」
――トライシールド――
ベルカ魔法陣型のシールドを張って防御しながら、ルーテシアを抱えて陸地にまで戻って来たガリューの側まで駆け寄ろうとしたけど、「これで一網打尽! 氷結の軛!」タイミングを見計らってたアイリによる拘束杭が、メガーヌ准陸尉、ルーテシアとガリューを隔離するように突き出した。さらにザフィーラも「鋼の軛!」を発動して、強固な檻としてメガーヌ准陸尉たちを完全に閉じ込めた。
「ナイスよ、アイリ! んで、あとはガジェットを――」
Ⅱ型へと銃口を向けた直後、隊舎1階と2階から爆炎が上がった。それはあまりに突然で、「きゃぁぁぁ!?」アリシアと、「うぉぉぉ!?」ヴァイスが悲鳴を上げる。
「すずか! シャマル先生!」
2人からの連絡が無い上、こちらもメガーヌ准陸尉たちとの交戦で精いっぱいだったから、すずか達のことは意識の外へ置いてた。だから今さらになって念話を繋げるけど、ノイズしか返って来ない。
――バスターラッシュ――
藤紫色に輝く砲撃が1発、隊舎の壁を突き破って来た。あの魔力光はすずかのものに違いないから、今の砲撃はバスターラッシュだわ。嫌な予感は当たってた。姿の見えなかったリヴィアが、メガーヌ准陸尉たちと別行動で六課の隊舎に潜り込んでいたのね。そして今、すずかと交戦に入ったに違いないわ。
「ルシルは何やってんのよマジで! アイリ、ザフィーラ! アリシア達と一緒にⅡ型の迎撃をお願い!」
「ヤー!」「承知!」
緊急時でも出向先の利になることはしてはいけない。そのルールの元に内務調査官として徹底して戦力にならないことを貫いてるとしたら、たとえそれがルールだとしてもここまでされて遵守するならマジでハッ倒す。
「邪魔すんな!」
――フリンジングボム――
アリシア達からの迎撃を回避しつつ、あたしに向かってレールガンを撃ち込んで来るⅡ型4機にもうキレた。バスケットボール大の火炎弾を、こっちに向かって来てるⅡ型へ向けて3発と連射。軌道変更して回避に移ったⅡ型だけど、「逃がさないわよ!」火炎弾を同時に炸裂させてⅡ型を爆炎に呑み込ませてやったわ。
「外は任せたわよ!」
Ⅱ型の迎撃をアリシア達に任せて、さらに炎を噴き上がらせた3階へと降り立つ。廊下の至るところに炎が燻ぶっていて、「ごほっ、ごほっ!」黒煙に咽る。そこら中にガジェットⅠ型やⅢ型の残骸が散らばっていて、「コイツらが自爆したのね・・・!」爆発の原因だと推測。
「すずか、シャマル先生! みんな!」
ガジェットの残骸を蹴飛ばしながら廊下を突き進んでいると、ドォン!と階下から爆発音と衝撃が伝わってきた。階下に降りるために階段を目指したんだけど、階段が崩落していた。その階段は、ヴィヴィオやフォルセティと一緒に階段遊び・グリコをやった思い出のあるところだった。
「く・・・!」
2階へと飛び降りて、「みんなー!」声を掛けながら燃えている各部屋を覗き、誰も居ないことを確認しながら移動を続けていると、「っ!?」背後に気配を感じた。振り向きざまに“フレイムアイズ”を横薙ぎに振り払う。
「すごい。今の奇襲、この部隊で見破ったのはあなた1人だけ」
「なに・・・?」
あたし1人だけってどういう意味よ。それにこの部隊で、って。それだとまるで・・・。嫌な光景が脳裡に過って、「アンタ、まさか・・・!」リヴィアを睨みつける。するとリヴィアは「クス♪」ニタリと笑って、左手をこっちに差し出して握り拳を開いた。
「スノーホワイト、クラールヴィント・・・!」
リヴィアが握っていたのはすずかとシャマル先生のデバイスの待機形態だった。リヴィアの手に2人のデバイスが握られていると言うことは、すずかとシャマル先生はすでに負けた後だってことになる。
「(ルシル・・・! ホントに何やってんのよ・・・!)返しなさい、ソレはアンタが持っていていいモノじゃないのよ!」
――フォックスバット・ラン――
高速移動魔法を発動して、一瞬にしてリヴィアへと最接近をする。“フレイムアイズ”の刃の方を向けての斬撃を繰り出す。
――ケレリタース・ルーキス――
「っ!」
リヴィアの姿がなんの予備動作も無しに消滅した。地下水路でのエリオとの戦闘データは何度も観た。結果、リヴィアは高速移動魔法の他に転移スキルを有しているのだと、あたし達は結論付けた。
「フレイムウィップ!」
銃口から炎の鞭を発射して、あたしはその場で旋回しながら振るった。隊舎の廊下の壁を巻き添えに破壊しちゃったけど、今は許してほしいわ。あたしの周囲を炎の鞭で護っていたこともあって、「姿を見せたわね」リヴィアが範囲外に現れた。そしてリヴィアは右拳に魔力を付加して、大きく振りかぶった。
「ハーツイーズ・・・ストライク!」
突き出された右拳から放たれる砲撃。ここが狙い目ね。砲撃発射途中の体勢なら、転移スキルも高速移動魔法も使えないでしょう。あたしは前に倒れ込むように体を傾け、砲撃と床の間スレスレをダッシュ。その途中に魔法をスタンバイ。砲撃が途切れた瞬間にはあたしはリヴィアと肉薄していて・・・
「イジェクティブ・ファイア!」
「っ・・・あ・・・!」
銃口をリヴィアに向け、トリガーを引いて火炎砲撃を発射した。砲撃はリヴィアに直撃したのをしっかりと視認できた。一応は火力を抑えてあるとはいえ、直撃を受けた以上は撃墜は必至。砲撃に呑まれて吹っ飛んだリヴィアの手から、“スノーホワイト”と“クラールヴィント”が離れたから、慌てて左手でキャッチする。
「・・・。すずか、シャマル先生・・・!」
あたしの火炎砲撃の所為でスプリンクラーが起動しちゃったけど、異常じゃないからそのまま放置。踵を返して2人や他の隊員たちの姿を捜していると、「今のは危なかった」目の前にリヴィアがスッと音もなく現れた。纏ってるロングコートの至るところに破れた跡があるから、無傷ではないようだけど・・・。
(墜ちる前に、転移スキルで逃げたか・・・!)
「怒ったんだから。すっごく痛い目に遭っても知らないんだから!」
足元に藍色の魔力光に輝くベルカ魔法陣を展開したリヴィアが、とんでもない魔力を放出し始めた。リヴィアの姿が一瞬だけ光に呑まれたかと思えば、ノースリーブのセーラー服へと変身していた。リヴィアの防護服も換装機能があることはすでにリサーチ済みだから、驚くほどのものじゃないわ。
「泣いたって許さないからね!」
「それはあたしのセリフよ!」
グッと身構えたリヴィアに続いてあたしも“フレイムアイズ”の銃口を向ける。そしてリヴィアが普通に駆け出して来たから若干拍子抜けしながら「フレイムバレット!」牽制の意味を込めた火炎弾連射。リヴィアは手の甲に小さなシールドを展開して、火炎弾を裏拳で弾きつつ、あたしに突っ込んで来る。
「(テスタメントやルシルと言ったモンスター魔導師と相対した経験が、あたしを冷静にさせてくれるわね・・・)だったら、もう一度吹っ飛ばしてあげるわ!」
――イジェクティブ・ファイア――
火炎砲撃を発射。するとリヴィアは、さっきのあたしのように砲撃と床の間を一足飛びで突っ込んで来た。あたしにその手が通用すると思ったなら・・・
「あたしを甘く見過ぎてい――」
バヨネットフォームは近接戦闘を行えるように刃が銃身下にある。だから懐に入られても凌ぎきる自信があった。でも「あが・・・っ!?」背中に途轍もない衝撃が襲って来た。そのあまりに突然の衝撃に体が反り返って、思わず“フレイムアイズ”を手放してしまった。足が床から離れて、体がリヴィアの方へ吹っ飛ぶ感覚を得た。
「ありがとう、ディード。良いタイミングだった」
リヴィアがそう言ったのが聞こえた。ディード。一度はドクターやシスターズがプライソンの研究施設から保護したけど、奪い返された子供の1人と同じ名前。
(伏兵が・・・まだ・・・居たなんて・・・)
「だから言ったのに。すっごく痛い目に遭っても知らないんだから、って!!」
――トイフェルファオスト――
「ぐふっ・・・!」
あたしのお腹に打ち込まれた魔力付加のリヴィアの右拳。反り返ってた体が今度はくの字に曲がる。息が出来ない。意識が薄らぐ。膝から床に落ち、蹲ったあたしは盛大に胃の中の物を吐いた。視界が涙で大きく歪む中、リヴィアと、彼女の隣に寄り添うように佇む、あたしを背後から襲ったディートか言う少女を見上げた。
「どうしますか?」
「放っておいたらまた、攻撃されるかもしれないし・・・。ここで倒しちゃおう」
「判りました。一思いに、一撃でその意識を刈り取ってあげます」
リヴィアの右脚に魔力が付加されるのが判って、ディードは双剣を頭上に掲げた。そして・・・
「バイバイ」
――トイフェルフース――
リヴィアは振り上げた右脚であたしを蹴ろうとし、ディードは掲げていた双剣を振り降ろして来た。バリアでなんとか持ち堪えられないか、って思考を巡らせたところで、「そこまでだ!」その一言と同時・・・
――闇よ誘え、汝の宵手――
平たい影の手がわんさかと所々にある影から伸びて来て「っ!?」リヴィアとディードを拘束した。続けてガシャァン!と窓ガラスが破砕されたかと思えば、「アリサ。すずか達は大丈夫だ」今一番知りたかった言葉と一緒にアイツが・・・
「お、おそい・・・わよ、ルシル・・・」
ルシルが現れた。
後書き
ヨー・レッゲルト。 ヨー・ナポット。 ヨー・エシュテート。
今話は機動六課隊舎での攻防戦をお送りしました。リヴィア、反則級に圧倒的です。そして、とうとうルシルがルールを破って戦線入り。次話は、ルシルが戦線に立つことになった経緯、そして決着をお送りする・・・予定です。
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