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干物女

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第三章

「戦争ゲームなのはわかるけれど」
「はじめて見るわ」
「コントローラーも独特だし」
「どんなゲームかしら」
「これ怒よ」 
 亜衣実は目を輝かせたまま友人達にそのゲームの名前を教えた。
「名作よ、私達が生まれるずっと前の」
「っていうとディグダグ位?」
「それ位昔のゲーム?」
「ディグダグとかギャラクシアンも私達が生まれる前のゲームだし」
「それだったら」
「少し後よ」
 ディグダグやギャラクシアンよりもというのだ。
「けれど凄い名作よ、よくこんな名作持って来たわね」
「何か新しい店員さんが入ったらしくて」
「その人が懐かしの名作をさらに発掘してるらしいのよ」
「それで持って来てるらしいのよ」
「こうしてね」
「そうなのね」
 亜衣実は友人達が自分に何故そうしたゲームがこの店に入ってきているのかという事情を聞いて頷いた。
「それでなの」
「若いけれどそういうのに詳しいらしくて」
「それで入手ルートも知ってるらしくてね」
「安い値段で仕入れてくるらしいのよ」
「やり手でもあるみたいよ」
「その店員さんは何処?」
 亜衣実はここで店の中、自分達が今いる屋上の中を見回した。
「何処にいるの?」
「受付じゃない?」
「この階の店員さんそこにいるし」
「スナックコーナーのところにあるね」
「そこじゃないの?」
「それじゃあ」
 亜衣実はその言葉を受けてだ、屋上の受付のところを見るとだった。そこに彼女がここでははじめて見る若い男がいた。
 背は一七〇位で縮れている黒髪を七三にしている、細長い顔は顎の先が平坦で引き締まり頬が痩せている感じだ。眉は濃いめで太く短めだが上に向かっている。奥二重の目は流線型で黒目が鋭い。鼻の形が整っており髪から見えている目が目立つ。着ているのはこの店の制服で青と黒の清潔なものだ。
 その青年を見てもだ、亜衣実は目を輝かせて言った。
「あの人が怒を持って来てくれた人」
「そうみたいね」
「あの人が新入りの人よ」
「入社してここに配属になってすぐだけれど」
「いきなりそうしたことしたらしいのよ」
「見事」
 これが亜衣実の今度の言葉だった。
「私あんな人はじめて見たわ」
「あんな?」
「こんなじゃないの?」
「違うの?」
「何かちょっと違うわね」
「それに格好いいし」
 こうも言ったのだった。
「素敵な人ね」
「えっ、まさか」
「まさかと思うけれど」
「これは春?」
「亜衣実に春が来たとか」
「何かもう」
 その顔を赤くさせていきだ、亜衣実はさらに言った。
「止まらない感じ」
「っていきなり!?」
「何でここでそうなるのよ」
「もう、今日の授業終わるまで干物だったのに」
「一変じゃない」
「豹変というか」
「本当にそこまで変わる?一瞬で」
 皆驚き呆れていた、だが。
 亜衣実はこの時から一変してだ、ファッション雑誌や女の子向けの雑誌をやたらクラスでも読む様になってだ。 
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