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干物女

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第二章

「アンコウの雄になりたいわ」
「ヒモじゃない、それって」
「ただ雌についてるだけでしょ、アンコウの雄って」
「小さくて餌採るのは雌で」
「食べさせてもらってるだけじゃない」
「楽だから」
 またこうしたことを言った亜衣実だった。
「だからね」
「何度も言うけれどそうした態度って駄目だから」
「女の子としてね」
「いつも言ってるけれど」
「ちょっとは青春してみたら?」
「普通の青春ね」
「興味ないし」 
 そうした普通の青春にもというのだ。
「家でゲームして漫画読んでラノベ読んでゴロゴロいてコーラ飲んでポテチ食べていたい」
「全くの駄目人間じゃない」
「それじゃあ」
「家でゴロゴロしてゲームとかばかりって」
「何処まで干物なのよ」
「干物の青春でいいじゃない」
 居直っているというか最初からそのつもりの言葉だった。
「別に」
「やれやれね」
「これはもう駄目ね」
「亜衣実もいい恋愛出来るのに」
「これで性格は悪くないし」
 ものぐさであるが基本優しく面倒見がいいのだ、気遣いもある。ものぐさなりに気付けば友人の為に動いてまた怠けるのだ。
「顔もいいのに」
「小柄で可愛いのに」
「本人にその気がないとね」
「やれやれってことね」
「やれやれでいいの」
 またこう言う亜衣実だった。
「じゃあ今から授業がはじまるまで寝るから」
「本当に困った娘で」
「こんなのでいいかしらって言ったらいいだし」
「どうしようもないわね」
 友人達もお手上げだった、亜衣実のものぐさには。彼女の干物女ぶりはどうしようもないかと思われていた。
 そんなある日だ、亜衣実はこの日の授業が終わるとすぐに家に帰ろうとした。だがその彼女に友人達が誘いをかけた。
「ちょっと百貨店行かない?」
「八条百貨店?」
 亜衣実は百貨店と聞いて駅前のそこを話に出した。
「あそこ?」
「そう、今日はあそこに寄らない?」
「あそこの屋上でまた面白いレトロゲーム入ったらしいから」
「ちょっと見に行かない?」
「あと本屋さんやゲームショップにも売ってね」
 新刊や新作を見ないかというのだ。
「そうしない?」
「今日はね」
「レトロゲームなら」
 そう聞いてだ、亜衣実が連想して話に出したゲームはというと。
「ギャラクシアンとかディグダグとか」
「どっちももうない?」
「ディグダグならマークツーもあったでしょ」
「あそこの店員さんナムコ系好きみたいだから」
「そうしたゲームもあったわよ」
「そうだった?けれど面白いゲームがあるのなら」
 それならとだ、亜衣実は興味を感じてだった。
 この日はクラスメイト達について百貨店に行くことにした、全員でまずは百貨店の屋上のそのゲームコーナーに行った。
 そしてだ、そのゲームを見てだった。亜衣実は目を輝かせて思わず声をあげた。
「うわ、これはいいわね」
「あれっ、このゲーム何?」
「はじめて見るゲームだけれど」
「何、このゲーム」
 友人達はそのゲームを見てもわからなかった、見ればジャングルの様な場所で赤い鉢巻きを巻いた上半身裸の主人公が銃を放ち手榴弾を投げて敵を倒している。
 そのゲームを見てだ、彼女達は首を傾げさせて言うのだった。 
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