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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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あげないよ

 
前書き
今日から12月、今年もあと1ヶ月と思うと早いですね。
ちなみに去年のこの時期はまだバトル・オブ・ドラゴンスレイヤーの真っ最中でした。ずいぶんと時間が経ったんですね、早いです。

シリル「今年は色々あったね。ハロウィンネタやりそこねたり」
ソフィア「ポッキーの日にゲームできなかったり」
レオン「クリスマスネタもやらなそうだな」

す・・・好き勝手言ってるな、お前ら・・・ 

 
ミンクさんがようやく正気を取り戻し、お屋敷の中へと案内される俺たち。中に入ると、そこは外観に見劣りしない豪華なものとなっていた。

「ミンクさん、副隊長になったんですか!?」
「あぁ!!俺も結構やるんだぜ」

道案内のために先頭を歩いているミンクさん。その隣には色々とお話ししようと考えたのか、ウェンディが並んでいるんだけど、すごく仲が良さそうで何とも言えない気持ちになる。別に浮気とかではないだろうし、ミンクさんもいい年齢だ。さすがにウェンディに手を出すようなことはしないと思うけど・・・

「近すぎる・・・」

それでもあの距離感は気になる。仲が良すぎて焼いてしまう。ウェンディ・・・頼むからこっちに戻ってきてくれ・・・!!

「キャッ!!」

一人不安に刈られていると、本日二度目の転倒をしそうになる天竜。それに気付いて支えようと思ったんだけど・・・

ガシッ

距離が開いていたこともあり、彼女の隣を歩いていたミンクさんに先を行かれてしまった。

「大丈夫か?」
「は!!はい!!ありがとうございます」

両足を地面に着けさせてから彼女の手を離し、一人で立たせる。助けてもらった少女は何度も何度も頭を下げて感謝の意を表す。

「な・・・なぁ、ウェンディ」
「はい?」
「シリルがこっちをすげぇ睨んでるんだけど・・・」

その様子を羨ましそうに見ていた俺の方を恐ろしいものを見る目でミンクさん。その様子はまるで獣に睨まれた子犬みたいだけど、そこまで睨んではいないぞ・・・たぶん・・・

「こ・・・この先の部屋がビオラ様たちのいる部屋だ」

目線を反らすようにして前へと向き直り、足早に目的地へと向かっていったミンクさん。その際レオンとシェリアに“落ち着け”と視線で訴えられたが、そこまで動揺してはいないぞ?みんな気にしすぎなだけなんだよな・・・

「シリル、ずいぶん怖い顔してるわね」
「ウェンディを取られそうだからね~」

前を歩く二人の猫耳少女が何かブツブツと話をしているが、俺たちの耳には届かない。大丈夫、ミンクさんはどう見ても大人の男性なんだから、ウェンディに手を出したりはしないはず・・・ウェンディは俺とが一番お似合いだもん。心配しなくていいんだよな。

「ここだよ」

案内された部屋は他の部屋よりも一回り大きな扉が付いており、いかにも偉い人が住んでいるような、そんな印象を与える大部屋が目の前に広がっている。

コンコンコンッ

「失礼します」

ミンクさんはネクタイを正してからノックをし、扉を開けて一礼して入っていく。彼に習って俺たちも同じように入っていくと、部屋の中には、ミンクさんと同い年くらいの女性と、彼女より少し年上のような男性が腰掛けていたソファから立ち上がり、全員が中に入るのを待っていた。

「お掛けになってください」
「失礼します」

なんだかかしこまった感じになったので、なかなか席に座れずにいたんだけど、女性の方・・・たぶんビオラさんがそう言ってくれたので、一礼して席に座る。その際ミンクさんは待っていた二人の後ろに待機していたので、これ見よがしにウェンディの隣にピッタリとくっついて座る。

「久しぶりね、ウェンディ」
「はい!!お久しぶりです!!」

優しげな笑顔で隣に座る少女に挨拶をするビオラさん。それに対しウェンディもにこやかに答える。

「他の皆さんは初めてですわね。私の名前はビオラ。こっちは夫のストリングス」
「よろしく」

紹介を受けた男性は無表情のままペコリと一礼する。なんか系統がレオンと似てるな、仏頂面なところが特に。

「夫!?結婚してるんですか!?」

ただ、その説明によって火がついた女の子が一名いた。サクラは相も変わらずハイテンションで詳しく結婚生活のことを聞こうとしていたが、話が進まなくなるのでレオンにアイコンタクトを送って口を塞がせてもらう。

「あの・・・今回の依頼って一体・・・」

水不足なのは依頼書に書いてあったが、詳しいことは来てから話すと書いてあった。なので、そのことを聞こうと思い二人に声をかける。

「そうでしたね。すみません、ウェンディが元気そうだったからつい嬉しくて」

話を反らしてしまったと言うわけか。なんでもウェンディが亡くなった妹さんに似ていたらしく、七年前もそれを利用して彼女のことを救ったらしい。てかよく聞いたらウェンディがこの街に来たのって依頼じゃないらしいじゃん!!ドラゴン探しなら俺にも声かけてよ!!

「一番の問題は水が不足しているということなのは依頼書にも書いてあったと思うが」
「そうらしいわね」
「見たよ~」

水は何に取っても重要なものであることに変わりはない。それが足りなければ生活していくのが困難なわけで、解決しようとするのは当たり前のこと。

「そこまで困っているようには見えなかったが?」
「ちょっとレオン」

疑わしいものを見るような目をしている少年を、幼馴染みの少女が肘でこつく。今の態度で気分を悪くしないか心配だったけど、二人は特にそんな様子はなく、ひとまず安心する。後ろのミンクさんはすごい睨んでたけど。

「今は隣街から水を分けてもらっていて、なんとか生活していく分には困らないようにはなっている」
「しかし、最近あちらの街でも水不足になりつつあるらしくて、分けてもらうことが難しくなりそうで・・・」

それで俺たちに依頼を出したというわけか。街の人たちに不便な思いをさせないために、なんとか水を工面してきたけど、今ではそれも難しくなりそうで、だからギルドに依頼を出したというわけだ。

「だったらもっと早くに出したらよかったんじゃない?」

二人の説明を聞いて、疑問に思った点を聞いてみたのは天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)。言われてみれば、隣街から水をもらっていても、その間に依頼を出せば解決できて困ることもなかったんじゃ・・・

「なぜ川の流れが弱くなったのか、俺たちで調査をしていたんだ」
「調査?」

そういえば、原因をすでに突き止めている的なことを書いてあったから、彼ら自身でなんとかしようとしてはいたということなのか。だからこっちに依頼を出すのが遅くなったのか・・・

「それで?」
「調査した結果は?」

シャルルとレオンの頭の上にいるラウルがストリングスさんに聞いてみると、彼はミンクさんに指示を出し、束になった紙を机の上に置く。

「こいつらが自分たちの住み処に水を引いていたんだ」

差し出された紙を引き寄せ中身を覗く。全員が同時にその内容に目を通したのだが、所々、説明文と共に送付されている写真を見て怒りを覚える。

「川を止めて自分たちのアジトに水を集めてるんだ」
「人もずいぶんといるみたいだね」
「これだけいたら、大量の水が必要になるわな」

どうやら川上で山賊らしき男たちがアジトを作り生活をしているらしく、自分たちの水を確保するために川の流れを止めて水を引いていたらしい。そのため、川下にあたるこの街まで水が流れて来ず、水不足に悩まされていたというわけだ。

「俺たちでなんとかしようとも考えたんだけど、こいつらに返り討ちにあってな」
「手の立つ山賊なんですか?」

ミンクさんたちでこの山賊たちを退治しようと試みたらしいのだが、相手がなかなか手強くて倒せなかったらしい。さっき囲まれただけでも相当人数がいたのに、それでも歯が立たないのか?

「ほとんどは雑魚ばかりだったのだが、何人か魔導士がいて、そいつらに全員やられてしまったんだ」

そう言って最初に出した資料の中から三枚の写真を指さす。そこには一枚に一人ずつ写っていて、二人は男、一人は女が戦っている姿があった。

「三人とも武器を使った魔法を使用するんだが、俺たちでは相手にならない」
「ですから、魔導士の方たちにお願いしたいと思いまして・・・」

それで来たのが以前助けてもらったウェンディだったというわけで、何とも心強いと思っていたらしい。

「任せてください!!」
「必ず山賊たちをやっつけるから!!」

それを聞いてより一層のやる気を見せるウェンディと、彼女に同調したシェリアが席から立ち上がり、ビオラさんと視線を合わせる。

「なるほど。だから報酬が高かったのか」

依頼の詳細を聞いて、報酬の金額が相場より高かった理由が判明し、納得している氷の神。討伐依頼で、しかも街に大きな被害が出ているのなら、早期解決するためにこのくらいの金額に設定することも十分にある。

「水ならシリルで簡単解決だと思ったのに~」
「そういうわけにはいかないわよね」
「確かにね」

一方エクシードトリオは、楽に解決できると思っていた依頼が難しくなったことにガッカリしているようにも見える。

「勘違いさせてしまってすみません」
「いえ、気にしないでください」

セシリーたちの声が聞こえてしまい、申し訳なさそうに頭を下げるビオラさん。彼女が気にすることなんか全然ない、悪いのは自分勝手な行いをする山賊たちなんだから。

「早く解決した方がいいよな」
「そうだね」
「その山はどこに?」

そうとなったら善は急げ、各々席を立ち上がり山賊たちの居場所へと向かおうとする。

「待ってくれ!!」

ビオラさんなら山賊たちのいる場所を聞こうとしたところ、彼女の後ろに立っていた青年が手を上げて待ったをかける。

「俺も付いていかせてください」

前に座っていた二人の目に入る位置に移動して深々と頭を下げるミンクさん。それには俺たちも驚いてしまい、目を白黒させている。

「なぜだ、ミンク」
「これは俺たちの問題だし、やられっぱなしで引き下がるわけには・・・」

山賊たちにやられたのが相当気になっていたらしく、リベンジの機会がほしいと参加を希望したらしい。負けず嫌いなのかな?いや!!まさか・・・

「ウェンディはあげないよ?」
「何を勘違いしてるの?」

俺からウェンディを奪い取ろうとしているのかと思って彼女に抱き付き宣言するが、彼は全くその様子を見ておらず無意味に終わってしまう。なんだ、ちょっと安心した。

「だが、その判断は俺たちには・・・」
「大丈夫です!!」

ミンクさんの直訴を退けるのは忍びないが、勝手に許可を下して俺たちに迷惑をかけることもできない。それを伝えようとしたストリングスさんの言葉を遮り、俺の腕の中にいるウェンディが声を発する。

「ミンクさんがいれば心強いです!!一緒に行きましょう!!」
「俺も、道案内もしてもらえて一石二鳥ですし」

言葉だけの説明だと迷子になる可能性だってなくはない。一時期迷子の常習犯だった俺としては、ちゃんと道案内をしてくれる人がいた方が安心できる。

「そうね。警備兵なんだから、体も鍛えてるでしょうし」
「全然問題ないよね~」
「ラウもいいと思う」
「私も賛成です!!」

シャルルたちも彼が付いてくることに異論はないようだ。となると残るは・・・

「あたしも大丈夫だよ!!」
「敵の数も多いみたいだしな」

一番難関だと思っていたレオンもずいぶんあっさりとOKを出してくれた。これで満場一致で賛成を得られたミンクさん。彼は嬉しそうに頬を緩ませた後、後ろに座るストリングスさんに視線を向ける。

「ウェンディたちに迷惑をかけるなよ」
「はい!!もちろん!!」

小さくため息をついた後、渋々といった感じで許可を下ろしたストリングスさん。ミンクさんはそれに返事をした後、こちらを向いて小さくガッツポーズしていた。

「ミンク、道案内も頼みますよ」
「はい!!任せてください!!」

ビオラさんから笑顔でそうお願いをされた彼は、ストリングスさんの時とは比べ物にならないくらい元気になっていた。もしかしてこの人って、ビオラさんのことが好きだったのか?だったら心配して損したな。まぁ、別にいいんだけど・・・



















「この先にあいつらがいるはずだよ」

草むらの影に隠れながら、音を立てないようにして前へと進んでいく。途中までは普通の道を来ていたんだけど、敵のアジトに近づくに連れて道からは反れていき、なるべく気付かれないように接近することにしたのだ。

「いた!!あそこだ」

先頭を歩いていたミンクさんが指を指した先を見ると、そこには写真で見た顔がチラチラといる。数もざっと見渡した感じ、話しに聞いていたくらいの人数かな?

「そんなに強そうには見えないな」
「レオンさんから見たら誰でもそうじゃないですか?」

破格な魔力の持ち主である少年に的確な突っ込みを入れる新入り魔導士。でも、俺たちから見てもそこまで大した面子がいるようには思えない。ただ問題があるとするなら・・・

「説明にあった魔導士たちだよね」
「ここからじゃ見えないね」

警備兵の人でも歯が立たなかったという噂の三人の魔導士たち。ただ、今俺たちのいる場所からではその姿を見つけられない。不在なら帰ってくる前に雑魚を片付けて、後からボコボコにしてやれば楽勝なんだけど、いるなら何の考えもなしに突っ込むわけにはいかない。

「聞いてみればいいんじゃね?一人捕まえて」
「よし!!それだ!!」

弱そうな奴を捕まえて現在の人員を根こそぎ話させればいい。となれば早速作戦を実行するに限るよね。

「サクラ、どいつを捕まえてほしい?」
「じゃああれで!!」

迷うことなく少女が指さしたのは、監視役をサボっていると思われる見るからに下っぱの男。一体どんな奴を選ぶのか気になって聞いてみたら、意外とまともな選択をしたことに驚きを隠せない。

「んじゃ、あいつを締め上げてくるか」
「行きますよ、ミンクさん」
「俺もか!?」

勝手に選出した三人で、木の影に隠れて仕事をサボっている男を取り囲み、仲間を呼ばれる前に一度気絶させて元の草むらに連れてくる。

「シリル」
「任せて」

木に縛り付けて準備万端。気絶している男の顔目掛けて水を吐き出すと、呼吸ができなくなった男は苦しくて咳き込みながら目を覚ました。

「ゲホゲホッ!!お前ら何し――――」」

不意打ちに怒りを覚えた下っぱ山賊はキレて怒鳴り散らそうとしてきたが、レオンが唇を鷲掴みにして言葉を封じる。

「余計なことを話すな。叫ぶことも禁止だ。俺たちがする質問に正直に答えろ。そうしなければ・・・」
「関節がいくつが増えることになりますよ」

指をポキポキと鳴らして男を見下ろす俺とレオン。その圧力にビビった彼は、涙目になりながら首を縦に振っていた。

「じゃあ質問。全部に何人いるの?」
「えっと・・・あの・・・」
「遅い」
「ゴフッ!!」

即答できなかったので腹部に拳を叩き込み一度気を失わせる。だけど、そのまま逃がしたりはしない。水を顔にかけて何度でも叩き起こしてやるもんね。

「楽しい尋問の始まりだな」
「久々だからわくわくするね」

情報を引き出すためにはこれが一番手っ取り早い。答えなければレオンのパワーで痛みを与え、俺の水で意識を取り戻させて尋問を続ける。前にやった時に楽しかったから、またやってみたかったんだよね。

「あれは拷問っていうんじゃないの?」
「気にしたら負けよ」
「シリルとレオンがダークサイドに~」
「どっちが悪者かわかんないですね!!」

後ろでコソコソと話をしている声が聞こえるが、あいにくそんなもので考えを改めるつもりはない。すべては街のためなんだ・・・これは仕方ないことなんだ・・・

「見た目の割りに、黒いな・・・こいつら」
「聞こえたら殺されますよ」
「こ・・・ここは二人に任せよっか・・・」

ミンクさんが怯えたような目でこちらを見ているが、そんなものは関係ない。俺たちはとにかく、依頼達成のために最善を尽くすだけだ。楽しいしね♪



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
どんな依頼にするか悩んだ末、今後のストーリーにちょっとだけ繋がるような、そんな感じにしようかと思います。
次は軽く討伐して終わる予定ですけど・・・大丈夫かな? 
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