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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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恋敵か!?

 
前書き
今回の日常編はお遊びのストーリーだから軽い気持ちで作ってます。おかしいところとかあるかもしれませんが、細かいことは気にしない気にしない。 

 
ギルドを出て早数時間。俺たちは今、依頼に行くために特急列車へと乗っている。

「最近酔わなくなったな、お前」
「ウェンディに忘れずにトロイアしてもらってるからね」

第三世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)になってから、乗り物に弱くなって酔ってしまうようになった俺。レオンはその事を覚えていたようで声をかけてきたのだが、最近は忘れずにウェンディに酔い止めの魔法をしてもらいなんとかなっている。

「シリル先輩って乗り物弱いんですか?意外ですね」

俺とレオンが座っている正面の、ウェンディとシェリアの上から顔を覗かせたのは新しくギルドに入ったサクラ。この列車は四人ずつのボックス席になっており、彼女はセシリーたちと座っていたんだけど、こちらの会話が気になって入ってきたみたいだ。

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は酔うらしいよね」
「じゃあなんでウェンディは無事なのよ」
「さ~?」

ナツさんやガジルさん、スティングさんたちも乗り物酔いをするのになぜかただ一人だけ、目の前の少女だけは絶対に酔うことはない。その理由が何なのかさっぱりだけど、もしかしたら天空魔法が関係あるのかな?いや、それなら俺も酔わなくなるから違うか。

「ウェンディはまだ伸びしろがあるってことだよ!!」
「俺はもう伸びないのかよ」

今のシェリアの言葉をそのまま取ると、もうこれ以上成長しようがない人が酔っちゃうみたいになっちゃうじゃん。俺はまだまだ強くなるし、身長だってきっと大きくなるぞ!!タクトさんくらいまでなる予定だし!!

「あそこまで行くと不便だろ」
「それは言えてるかもしれない」

レオンの言う通り、タクトさんくらい背が高いと色々と大変かもしれない。着るものや扉を通るとき、ありとあらゆるもので弊害が出てきそうだ。

「あ!!見えてきた!!」

乗り物酔いから身長の話に変わりつつある中、窓の外を子供っぽさ全開で見ていたウェンディが目的地を発見したらしく、テンションがはね上がる。彼女に釣られて俺たちも外を見てみるが、その街には見覚えがなく、なんとも言えない。

「この街、ウェンディは知ってるの?」
「うん!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入った時に依頼で行ったことがあるの!!」

それを聞いた途端全員の視線がこちらを向いたのですぐさま顔を背ける。ウェンディが妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいた時ってことは、もしかして俺も行ったことあるのか?全然記憶にないんだけど・・・

「シリルはその時いなかったから。心配しないで」
「よかったぁ・・・」

それを聞いてホッと一安心。俺が一人で出掛けている時とかに、彼女がシャルルとかと一緒に依頼にでもいった際の思い出の場所って言ったところか。

「あぁ。あいつね」
「シャルルさんわかるの?」
「えぇ、まぁ」

シャルルには覚えがあるらしく、一人遠い目をしていた。サクラが色々と聞き出そうとしているのだけど、彼女は面倒くさいといった感じで一切答えようとはしない。

「その街からどんな依頼が来たの~?」
「気になるね」

彼女が一度(といっても入った時だから七年前かな?)は依頼が達成した街からの再度の依頼。それが一体どんなものなのか、非常に気になるところではある。

「う~んとね、《最近山から流れてくる川の流れが悪く、水不足に悩まされています。原因等詳しいことは着いてから説明しますので、屋敷にお越しください》だって」

依頼書の文面を読み上げるウェンディと静かにそれを聞く俺たち。水不足なら俺が余裕で解決できそうな気がするけど、原因があるならそれを解決するべきだろう。でも、水不足の原因って日照りくらいなものだろ?一体他に何の原因があるのだろうか。

「なんだ。大した依頼じゃないな」

それを聞いてガッカリしたような印象を与えるのは氷の神。彼としてはもう少し歯応えがあった方が肩慣らしになるのだろうから、あっさり解決できそうな依頼で残念がっているのだろう。

「でも報酬が30万J(ジュエル)ってなってるよ?」
「「「「「30万J(ジュエル)!?」」」」」

達成報酬の金額を聞いて、サクラ以外の全員が立ち上がる。しかし、ここは動いている列車の中。なので当然のように・・・

ガタガタ

「「「「「うわっ!!」」」」」

レオン以外の立ち上がったメンバーが揺れに耐えきれず転んでしまう。

「ダッサ」
「えっと・・・大丈夫?」
「いきなり立ち上がるからですよ!!」

何事もなかったかのように座るレオンと心配して声をかけるウェンディ、そしてサクラは立つべきでない場所で見合った行動を取らなかった俺たちに頬を膨らませていた。

「いや・・・だって・・・」

サクラはまだ初めての依頼だから知らないだろうけど、30万なんて相当な金額だ。討伐とかならまだしもこんな簡単な依頼でこの金額・・・驚かずにはいられない。

「何かとんでもない原因があるのかな?」
「そうかもしれないわね」

お尻叩いて席に座り直すシェリアとシャルルがそう言う。よほど解決が困難な原因があるとは思うんだけど、それがどうやったら水不足と繋がるのだろうか?これは色々と聞いてみないといけないな。
一人そんなことを考えていると、列車の速度が次第に下がっていき、目的地である駅で停車する。

「さ!!行こっ!!」
「だね!!」

考えたって仕方ない。まずは行ってみてどんな依頼なのかを聞いてみよう。そう思い俺たちは列車から下り、アイーアの街へと降り立ったのであった。




















「はぁ・・・いい匂い・・・」

街中に植えられた花が鮮やかに咲き誇り、心地よい匂いが俺たちを出迎える。

「ホント・・・いい匂いだね」
「はい!!すごくいい街です!!」

あまりのいい匂いに心を持っていかれつつある女子勢。シャルルとセシリーなんか一言も発しないレベルだし、これって大丈夫なのか?

「依頼書には屋敷に来いって書いてあったんだろ?どこにあるんだ?」

ギリギリ正気を保っている俺と、辺りをキョロキョロ見回しながら依頼主の住む屋敷を探すレオン。彼の頭にはすでにやる気がないのか、猫の姿になったラウルが乗っかっていた。

「僕もシリルに乗ろっと~」

それを見たセシリーが人型から猫へと変化して俺の頭に寝るように乗る。別に気にするほどの重さでもないし、このまま乗せててもいい――――

「ダメだ。降りろ」
「え~!?なんで~!?」

かと思ったが、あることに気付いて無理矢理地面に降ろすことにした。もしかしたら俺の背が伸びないのはこいつが頭に乗ることがあるからじゃないのか?もしそうだとしたら、今からでもこれは控えた方がいいだろう。

「ぷ~!!もういいや~」

諦めて人型へと変身して歩き始める少女。きっと俺の身長が低いのはこいつのせいだったんだ。後で説教でもしてやるかな。

「ねぇ、屋敷ってどこ?」

セシリーの方を睨んでいたら、前を歩くレオンが振り返り藍髪の少女へと問い掛ける。それによってようやく本来の目的を思い出したウェンディは、すぐさまこちらへと駆けて来た。

「ごめんごめん。案内するから付いてきて」

そう言って彼女は早足で前を進み始める。よほど楽しみなことでもあるのだろうか、足取りがいつもよりも遥かに軽い彼女に違和感を覚えつつそれについて――――

「キャッ!!」

行こうとしたら、目の前でウェンディが転倒した。それも何もないところで。

「だ・・・大丈夫?」
「う・・・うん。ありがと」

恥ずかしそうに顔を赤らめている少女に手を差し出しゆっくりと立たせてあげる。薄々嫌な予感がしていただけに、ちょっとこれには笑えない。

「ゆっくり行こう。ゆっくり」
「そ・・・そうしよっか」

今の反省を生かして普段通りのペースで先に行くことにした。その際未だ心ここにあらずのシェリアとサクラ、シャルルをレオンとセシリーが引っ張ってきて、合流してから依頼書に書かれていたお屋敷を目指すことにした。

「・・・」
「どうしたの?レオン」

楽しく話をしながら歩いていると、いつの間にやら一番後ろを歩いていたレオンが仏頂面になっていることに気付・・・って、こいつはいつもそんな感じの顔か。

「困ってるように見えるか?」
「「「「「え?」」」」」
「そこまで深刻な問題を抱えてるようには見えないんだけど・・・」

言われてみて周りを見てみるけど、確かにそこまでみんな困っていているようには見えない・・・気もする。

「そうかしら?所々花壇の花も枯れてるし、水不足には変わりないんじゃない?」
「うん~!!そんな気がする~」

でも、シャルルが言う通り花が所々枯れている。だけど、街の人たちには不安そうな表情は見受けられないし、判断が難しいところだな。

「きっとビオラ様とストリングス隊長のおかげだよ」
「誰?」
「ビオラ様はこの町を作った領主さんの娘さんで、ストリングス隊長はその恋人」
「「「!!」」」

それを聞いた瞬間の女子勢の食い付きが半端じゃなかった。シャルルは元々知ってたみたいだから反応が薄かったけど、シェリアやセシリー、サクラはウェンディに話を詳しく聞こうと迫っていき、俺はあっさりと蹴飛ばされてしまう。

「元気だな、こいつら」
「これから依頼ってわかってるのかな?」

それを見ていたレオンといつの間にか目を覚ましていたラウルがその様子を冷静に見ている。別にビオラさんとストリングスさんが恋人なのはいいけど、俺たちはこんなにゆっくりと遊んでいていいのだろうか?

「ねぇ、もしかしてお屋敷ってあれ?」

ウェンディたちが恋ばなに花を咲かせている時、前方を見て思わず指を指してしまう。だって、今までこの街で見ていたのは普通の一軒家やお店とかばかりだったのに、ここに立っている家だけはやたらデカイ。それも、大きな門まで備え付けられており、驚く以外の反応が思い付かない。

「これはまた大きいな」
「前の依頼のおうちくらいかな?」

俺とウェンディを残して行った依頼の際に向かった家がこれと同じくらい大きかったものだったらしい。だからなのか、レオンたちは軽く見上げる程度の反応に止まり、元々この場所を知っているウェンディは懐かしそうな表情を浮かべていた。

「お邪魔します!!」
「失礼します!!」

何の躊躇いもなく門を開けてお屋敷の中へと進んでいく少女たちの後ろを付いていく。すると、その声を聞いたからなのか、庭や屋敷の中からナツさんやグレイさんぐらいの年齢の兵隊たちが現れる。

「屋敷に護衛まで雇ってるんだ」
「お金持ちだね~」

囲まれているにも関わらず、全く動じた様子のない天神と茶猫娘が率直な感想を述べる。かくいう俺たちも別に動揺することはない。だってこっちは依頼で来ているのだから。

「あれ?ウェンディ?」

誰かに説明しようかと思っていると、兵隊さんっぽい人たちの後ろから人混みをかき分け、20歳くらいだろうか?そのくらいの顔立ちの整った青年が姿を現した。

「やっぱりウェンディだ!!久しぶりだな!!」
「ミンクさん!!」

その青年を見た途端、飛び付くようにして胸に抱き付く天竜。それを見た瞬間、何が起きているのかわからず目を見開いてしまう。

「落ち着け、シリル」
「奥歯噛みすぎ噛みすぎ」

一応平静を装っているつもりではいたんだけど、どうやら動揺しているのが周りからは丸わかりだったらしく、レオンとラウルからストップをかけられる。でも、目の前で彼女がいきなり知らない男に飛び付いたら動揺するのも仕方ないのではないだろうか?そう思いたい。

「お前全然変わらないな!!」
「七年間凍結封印されてて」
「そういえばそんなこと聞いた気がするな」

仲良く二人が話をしていてなんかとてつもなく悔しい。恋敵か!?恋敵なのか!?

「あ、ちょっと待って」

俺が悔しさで血の涙を流しそうになっていると、ミンクさんがこちらに向かって歩いてくる。

「お前か、ウェンディの言ってたシリルって」

そう言って彼は・・・俺の真後ろにいたレオンに顔を近づけ睨み付けている。

「話に聞いてた感じとはちょっと違――――」
「ふんっ」
「ぐはっ!!」

完全に本物()を無視して偽物(レオン)と話をしようとしていたミンクさんだったが、レオンが顔面にグーパンチを叩き込み、軽くKO勝ちを納めていた。

「シリルは俺じゃなくて・・・こっちだ」

手の届く範囲にいたため、首根っこを掴まれ彼の前に盾にされるように差し出される。

「だからっていきなり殴らなくても――――」

顔に拳を受けたミンクさんは鼻を押さえ、顔を上げてこちらを見ると・・・

「・・・」

絶句した。

「え・・・あれ?女の子・・・」
「いえ、男です」

毎度お馴染みの勘違いを繰り出す青年に無表情で突っ込みを入れるが、彼の耳には届いていないのか、突然ウェンディの方を向き直る。

「おい!!どう言うことだ!?ウェンディの好きなのがシリルなんだよな!?」
「あの・・・声が大きいです・・・」

驚きすぎて声の抑えが効かないミンクさんにタジタジのウェンディだったが、そんなことなどお構い無しに彼は話を続ける。

「まさか・・・お前・・・そっちだったのか?」
「シリルは男の子なんですってば!!」

ついにあらぬ勘違いをし始めた彼に再度真実を告げると、彼は間抜けな顔を見せた後、俺の方をチラッと見る。

「はは、あの子が男なわけ・・・えぇ!?」

もうこの扱いにも慣れてきたのでむやみやたらに反応はしてあげない。とりあえず、現実を受け入れられない彼が落ち着くのをしばし待ってあげることにした。俺ってば、紳士だな。

「原因がお前なんだけどな」
「それは言いっこなしだよ」

頭の整理が追い付かずオーバーヒート状態のミンクさんを元に戻そうと奮闘するウェンディと兵隊さんたち。そんな彼の意識が戻ったのは、一時間ほどした後のことだった。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ここに来てブルーミストラルのメンバーを出してくる展開。
この物語では、アイーアの街以降はウェンディが一人で行った設定で行きますので、あらかじめご了承ください。 
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