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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十二話 ホテルに帰ってその七

「口の中に風味が漂ってくるのだ」
「それからですの」
「大阪や神戸の料理は違うな」
「食べてすぐにね」 
 僕が答えた、そちらのお料理については。
「お口の中に来るよ」
「味がだな」
「うん、いい味がね」
「それが違うのだ」
 その南座の料理はというのだ。
「後で風味が漂い口の中を支配する」
「そうなんだ」
「それが京都の料理なのだ」
「不思議なものだね」
「高いがな」
 留美さんはこの言葉も付け加えた。
「しかしそうした味だ」
「後でくるんだね」
「風味がな、味付けはないと思えるまでに薄いが」
 京料理は薄味というけれど本当にそうらしい、尚親父は京都の料理は高くて味が薄いうえでに一見さんお断りばかりだと不平を言ってばかりだった。
「そうした味なのだ」
「通の味ですの」
「そうなる、ただ嫌いな者は嫌う」
 僕の親父みたいにだ。
「織田信長さんもそうだったしな」
「ああ、そういえばあの人都で食べて怒ったんだよね」
 僕も留美さんの話を聞いてこのことを思い出した。
「そうだったよ」
「うむ、味がない水っぽいと言って怒った」
 上洛した安土桃山時代がはじまったその時の話だ。
「そして作り直させた」
「そうだったね」
「今度は尾張の濃い味付けだったので満足した」
「その頃からあそこは濃い味だったのかな」
 尾張は今の愛知県、名古屋だ。清洲城は今の名古屋市内にあったので信長さんは文字通り名古屋で生まれ育った。
「やっぱり」
「焼き味噌が大好物だったという」
「そのままだね」
 名古屋といえば味噌というイメージからだ、僕は言った。
「それって」
「そうだな、しかしだ」
「信長さんは濃い味が好きで」
「京料理は口に合わなかった」
「そうだったんだね」
「薄味は好きではなかったのだ」
「信長さんもそうだったんだよね」 
 僕はしみじみとした口調で応えた。
「薄味だから」
「うむ、尚私もだ」
「留美さんもって?」
「今では神戸や大阪の濃い味付けも食べる様になった」
「最初からそうだったんじゃ」
「最初は抵抗があった」
 神戸に来たての時はというのだ。
「その味にな」
「そうだったんだ」
「どうもな、西の方は大体味付けが濃いな」
「ここもそうなんだよね」
 この広島にしてもだ、僕達が今いる江田島も広島県だ。
「濃いよ」
「お好み焼きは言うまでもなくな」
「味付けはね」
「九州は言うまでもないな」
「あそこはもうね」
 全体的にだ。
「豚骨ラーメンとかね」
「そうしたものでな」
「濃いよ」
 その味付けがだ。 
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