八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十二話 ホテルに帰ってその一
第九十二話 ホテルに帰って
海上自衛隊幹部候補生学校での史跡研修が終わってだ、僕達はホテルに戻った。そこでまずは夕食前にお風呂に入った。
そのお風呂の中でだ、それぞれの部活の一年生の子達が言っていた。
「凄かったな」
「ああ、海軍凄いよな」
「格好よかったな」
「というか自衛隊さんより格好よくないか?」
それは言うなという言葉まで言っていた。
「軍服よかったな」
「特攻隊もな」
「俺あれ見て泣いたよ」
「俺もだよ」
特攻隊の資料を観てというのだ。
「悲しいな」
「悲しいけれど奇麗でな」
「人間ってもの考えさせられたな」
「全くだよ」
「行ってよかったよ」
こうした言葉も出ていた。
「あそこにな」
「だよな、いい場所だったな」
「人生の貴重なもの教えてもらったな」
「本当にな」
「何かと」
「ああ、あそこは只の歴史資料館じゃないぞ」
柔道部の主将が一年の子達に話した。
「そうしたこともわかる場所なんだ」
「実際にそうですか」
「そうしたことがわかる場所なんですね」
「そうだ、だから毎年あそこに行ってるんだ」
どの部も合宿の時はというのだ。
「案内役の人達にも来てもらってな」
「自衛隊の人達にもですね」
「来てもらってですね」
「そうなんだよ、あそこはな」
主将はかなり筋肉質の柔道に相応しい肉体をしている、腰に白いタオルを巻いているだけでお風呂にいるのがよく似合う格好だ。
「人間の素晴らしさもわかる場所なんだよ」
「わかりました、じゃあ来年もです」
「ここに来てですね」
「あそこ見られますね」
「そうですね」
「ああ、合宿以外でもな」
それ以外の時もというのだ。
「あそこには行くといいからな」
「ですね、何か本当にしんみりしました」
「人間ってあそこまで奇麗になれるんですね」
「そうなんですね」
「俺も泣いたさ」
主将ははっきりと言った。
「最初に観た時も去年もな」
「それで今年もですか」
「泣かれたんですか」
「ああ、本当にな」
実際にという返事だった。実はこの主将はかなりの感激屋ですぐに感動して泣く。小説や映画で号泣したことも何度もあったという。
「ああした人達がいてな」
「それで、ですね」
「日本は今もあるんですね」
「そうなんですね」
「そのことを忘れるな」
主将は仁王立ちして一年生達に言う。
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