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英雄伝説 絆の軌跡

作者:フェルト
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第3話 迷子の少女

 
前書き
雪が降ってきた…
あっと言う間に年越し近付いてきますね 

 
模擬戦を終えたメルト達はエルベ離宮に向かっていた。
遊撃士協会に迷子の依頼が入り、その子を保護するためだ。

「エルベ離宮で迷子になるかしら?」

エルベ離宮自体は広いので実際に迷う可能性はあるのだが、親子連れとなるとエルベ離宮の外に出る時点で気付き遊撃士協会まで連絡がいくことはまずない。

「迷子なんて油断しちまえばあっと言う間だ。考えにくいがあり得ない事じゃねえよ」

「それもそっか」

アガットの一言によりエステルの疑問はあっさりと解消された。
エステルは直感が優れているが基本的には深くは考えないので、某有名RPG風に言うのであれば『ガンガンいこうぜ!』的な性格なのだがそんなことを知らないメルトはエステルを少し警戒し始めた。
道中の魔獣を退治しながらエルベ離宮に到着したメルト達は迷子を保護しているレイモンドに話を聞いた。
レイモンドによるとその子は10歳ぐらいの女の子で親を探し回るどころか、この広いエルベ離宮でかくれんぼを始めて居場所が分からない。
そのため、エステルの提案で探し回るが見つからない。
メルトはその子の気配で居場所は分かっているのだが力量を見るため会えて口を出さず、見つからないままレイモンドのいる部屋に戻った。
メルトが心の中で「警戒しすぎたかしら…?」と思った矢先、エステルがカウンターの中を覗きこみ迷子を見つけた。

「うにゃーん。見つかっちゃった」

そんな可愛らしい声をあげながら出て来た子はレンだった。
エステルがレンに話を聞くとレンの親は「パパ達は大切な用事があって少し出かけなければならない。だけどレンはお姉さんだから大人しく待ってられるね?」と言い残し何処かへ行ってしまった。
それを聞いた一行は途方に暮れ、遊撃士協会で今後の話をする事にした。

「ねえエステルお姉さん。これからどこに向かうのかしら?」

「遊撃士協会よ。遊撃士っていうのは…」

「怖い魔獣をやっつけたりするんでしょう?お姉さん凄いわ♪」

「魔獣退治だけが遊撃士の仕事じゃないけどね。レンちゃん達って何処から来たの?」

「クロスベルよ。クロスベルは色々建物があったりして便利だけどレンはクロスベルよりリベールの方が好きね」

クロスベルとはエレボニアとカルバードの両国が宗主国の自治州である。
通常宗主国は1つなのだがクロスベルの豊か溢れる土地により長年エレボニアとカルバードが互いに権利を主張し合っている少々特殊な土地になっている。
因みに自治州は他にもノーザンブリア等があるが七曜協会の総本山、アルテリアが宗主国である。

(クロスベルね…)

メルトはレンの両親がしたことについて多少知っている。
しかしエステル達は知らないのでメルトは想いを心の中に留めた。

そんな話しをしながら遊撃士協会に到着した。遊撃士協会の中ではとある人物が待っていた。

「やあ、久しぶりだね」

「シード中佐じゃない。どうしてここに?」

「ちょっと君達に頼みたいことがあるのだが…」

シード大佐は王国軍に所属している。前は中佐だったが最近大佐へと昇進した。
シード大佐の依頼を聞きたいエステルだがメルトとレンが居るため少し悩んでいる。
そんなエステルの心境を察してか、メルトはレンとティータを連れて2階へあがった。誰にも気付かれないようにエステルに盗聴器をしかけて。
盗聴器ごしに聞こえた会話によるとシード大佐の依頼は脅迫状の調査だった。
脅迫状はグランセル城、グランセル大聖堂、共和国大使館、帝国大使館、ホテルローエンバウム、飛行船公社、エルベ離宮、リベール通信の計9箇所に送られた。
脅迫状の内容は不戦条約の締結から身を引け、というものだった。
不戦条約とはエレボニアとカルバードが両国の問題を力ではなく交渉で解決するようにする、という条約だ。
締結の際にはリベールから飛行船の新型エンジンのサンプルを両国にプレゼントすることから今の所両国による大きな争いは無かった。
この話しを聞いたメルトはそれぞれ聞き込みに行くと予想しレンとティータを連れてグランセル市内の散策に向かった。
流石に聞き込みについて行くと明らかに不審がられるため、エステルに着いていくのを断念した。

聞き込みが終わりローエンバウムに向かったエステル、アガット、ティータ、レン、メルトはエステルとレンで1部屋、アガットとティータで1部屋、メルトは1人で泊まることにした。

(そういえばヨシュアと泊まったのはこの部屋だったっけ…)

今はどこに居るのか分からない恋人(暫定)の行方を心配するエステル。
おませなレンがそれを見逃す訳もなく、ガールズトークへ移行した。

「エステルお姉さんってヨシュアって人のこと、好きなの?」

「ふぇっ。そりゃあ…好きだけど」

「へー。どんなところが好きなの?」

「それは…普段はすましてるけどふとした表情がかっこいいし、あたしの事をいつもフォローしてくれるし、何よりあたしの事を1番に考えてくれるし…」

「お熱いわね♪さっき悲しそうな顔をしてたけどそれも関係してるのかしら?」

「よく見てるわね…そりゃああたしの始めてをあんな形で…」

「始めてって何?もっと聞きたいわ♪」

「わわっ…レンちゃんにはまだ早いわよ。この話はもうおしまい!ほら、早く寝るわよ」

「むう、こうなったら聞き出すまで眠らないんだから」

「はぁ、失敗したなぁ」

レンが襲いかかる睡魔に耐えられるわけもなく、レンが寝たのを確認した後エステルも眠りについた。 
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