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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十一話 戦艦大和その五

「実はこれお店で買ったんです」
「ああ、候補生学校の前の」
 本当にすぐ前にあるのだ、そうしたお店が。
「自衛隊の服とか靴を売ってる」
「あそこで候補生の時に買いまして」
「今もですか」
「こうして着てます」
「そうなんですね」
「靴もです」
「そういえばその靴は」
 井上さんもその靴を観た、そのうえで言うことはというと。
「白ですね」
「エナメルです」
「靴も汚れが目立ちますね」
「いつも磨いてます」
「そうですか」
「冬は黒です」
 あの黒のブレザーの時はというのだ。
「その時もいつも磨いています」
「靴も磨かれるとは」
「そうしていないと汚れが目立ちますので」
 だからという返事だった。
「制服のアイロンがけとそれは忘れられません」
「ううん、凄いですね」
 僕も話を聞いて思った、それも心から。
「靴も磨いて」
「候補生学校で徹底的に叩き込まれます」
 この中でというのだ、今まさに僕達がいる場所で。
「制服のアイロンがけもベッドメイクも整理整頓も」
「全部ですね」
「さもないと台風か呼び出しで再チェックです」
「チェックですか」
「毎朝制服とかチェックされるんです」
 その手入れの度合いをだ。
「そのお話は去年も聞かれたのでは」
「はい、ですが聞く度に」
「驚くものです」
 僕も井上さんもこう答えた。
「そこまでとは」
「とても」
 二人で言った。
「そこまではです」
「ないですね」
「厳しいっていうか」
「またそれはと思いました」
「海軍からの伝統です」
 帝国海軍、その海軍のというのだ。
「服の手入れも徹底的にです」
「アイロンをかけて埃一つ付いていなくて」
「はい、そしてです」
 そのうえでというのだ。
「靴もです」
「それもですか」
「磨いています」
 いつもというのだ。
「そうしています」
「そちらも汚れ一つなくですか」
「そうしています」
「そうなのですね」
「はい、服の乱れは心の乱れ」
 よくある言葉だった、実際は心の乱れが服の乱れになっているという人もいるけれど服を正してそこから心もという考えもある。
「気をつけています」
「ベッドもですか」
「お部屋全体をです」 
「お掃除してるんですね」
「候補生学校の場所は全て」
 それことだ、僕に答えてくれた。
「毎日塵一つなく掃除しています」
「文字通り、ですね」
 井上さんはこれまでここで聞いてきたことを佐々木さんに尋ねた。
「それは」
「はい、まさに文字通りです」
「若し塵一つでもあれば」
「掃除のやりなおしです」
「普通の学校とは比較になりませんね」
「それが候補生学校です」
 海上自衛隊幹部候補生学校、その学校だというのだ。 
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