八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十話 巨大な模型その十三
「そうした部活も明るいのはね」
「というか明るいことはね」
「いいことよね」
「暗いよりもね」
「それに越したことはないわ」
「そうなんだよね、暗いとね」
そうした部活にいてもだ。
「気が晴れないしね、けれど」
「けれど?」
「何かあるの?」
「むしろ明る過ぎるかな」
シュミレーション研究会に遊びに行ったことがあるけれどその時のことを思い出しながらだ、僕はこうも言った。
「あそこは」
「明る過ぎるって」
「そんなになの」
「うん、もうね」
それこそなのだ。
「あそこは明るいにも程度があって」
「騒がしい?」
「そんな感じなの」
「特に恋愛ゲームをやってる時は」
遊びに行ったら実際にそれをネットで攻略法を検索しつつやっていた。
「もう必死でね、声をあててる人がどうとかね」
「ああ、声優さんのお話もしてるのね」
「ゲームをしながら」
「そっちも凄くてね」
声優さんの話題での盛り上がりもだ。
「もう見ていてびっくりするよ」
「声優さんっていったらアニメ?」
少し考える顔になってだ、香織さんは僕に言った。
「そっちがメイン?」
「まあ話題になる様な仕事はね」
「それとゲームもなのね」
「そのゲームの話題の中でね」
「声優さんの話題でも盛り上がってたの」
「そう、それぞれのキャラの声をあててるね」
これがまた人気の声優さんだったりする。
「そちらの話題でも盛り上がってて」
「明るいのね」
「騒がしかったよ」
明るいを越えてだ。
「もっと言えばけたたましいかな」
「けたたましいって」
「相当ね」
「そこまでいくとね」
「明るいってレベルじゃないわね」
「そんなのだからね」
本当にだ、そんなレベルだからだ。
「ちょっと以上に過ぎるかな」
「うちのシュミレーション研究会は」
「そこまでなのね」
「明るいことはいいことでも」
それでもだとだ、心から思う。
「過ぎたら落ち着かないね」
「じゃあシュミレーション研究会は落ち着かない場所なのね」
「まさにね」
詩織さんに答えた、その瞬間にだった。
後ろからそのシュミレーション研究会の面々の声がしてきた、この資料館の中でも実に騒がしくあれこれと話している。
それでだ、佐々木さんが彼等に穏やかに注意していた。そちらの方は見ていなかったけれど声でわかった。
「もう少しお静かに」
「しないと駄目ですか」
「ここは」
「はい、お願いします」
くれぐれもという言葉だった。
「ここでは」
「そうですか、色々あって楽しくて」
「それを見て話してましたけれど」
「ここでは静かにですね」
「そうして観る場所ですね」
「どちらかというとです」
話を聞いていて回天や神風特攻隊の資料もあるのにそうしたことは当然というか常識だろうと思った。心の中で。
「そうした場所なので」
「わかりました、それじゃあ」
「静かに観ます」
けたたましいけれど実は礼儀正しくもある。そして注意されたら真面目に受け止めて訂正もする。だから僕も彼等は嫌いじゃない。
「失礼しました」
「いえいえ」
こうして彼等は静かになった、僕はそのことにほっとしながらだった、資料館を回って次は大和の模型を観に行った。
第九十話 完
2016・5・6
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