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エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )

作者:cipher
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第16話 宿敵の牙

Side キラ・ヤマト

サイーブ達はバナディーヤに補給目的に来ていた。
バナディーヤは北アフリカの都市である。
ここ市場では住民達が売り買いで賑やかである。

カガリ
「じゃぁ、4時間後だな。」

キサカ
「気を付けろ。」

カガリ
「分かってる。そっちこそな。アル・ジャイリーってのは、気の抜けない奴なんだろ。」

ナタル
「ヤマト少っぃ…しょっ少年…た…頼んだぞ。」

ナタルは濃いサングラスの下で言い間違いで顔を赤らめている。
ナタルに同伴しているトノムラは、ナタルが階級を呼びそうになって頭を押さえていた。

キラ
「…」

サイーブ
「行くぞ!」

ナタル
「ああ。」

カガリ
「おい!何ボケッとしている。お前は一応護衛なんだろ?」

キラは薄いサングラスを掛けている。

キラ
「本当に、ここが虎の本拠地?
随分賑やかで、平和そうなんだなぁ。」

カガリ
「ふん!付いて来い。」

キラ
「え?」

カガリは路地裏へと案内する。
目の前には破壊された建物があった。

カガリ
「平和そうに見えたって、そんなものは見せかけだ。」

キラ
「あぁ…!」

バナディーヤの子供達
「あははは…」

カガリは上を見上げる。キラもカガリの視線の方へを向ける。
建物の上にはレセップスの上部が見えている。

カガリ
「あれが、この街の本当の支配者だ。
逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ。」

バナディーヤの子供達
「あはは…うふふ…待て待てー…あはは…」

バルトフェルドはカガリ達を睨んでいた。

Sideout



Side マリュー・ラミアス(アークエンジェル)

マードック
「あーあぁ…たっくもう…こんなもん持ち込んでよぉ…何だってコックピットで作業しなきゃ、なんねぇんだよぉ…」

マリュー
「でも…いつからそんな…」

フラガ
「さぁ…?けど…地球に降りてからじゃないの?…それまで…そんな余裕なかったでしょ?」

マリュー
「あの子は…コウキさんの部下でしょう…。」

フラガ
「コウキが何か頼んでいる?だよねぇ…俺もそう思うんだけどさぁ…。」

マリュー
「…ハァ。」

マリュが格納庫ら通路の扉を開く。

フラガ
「あ!ぁぁ…」

マリュー
「それにしても迂闊だったわ。
パイロットとしてあまりにも優秀なものだからつい、正規の訓練も何も受けてない子供だということを私は…。」

フラガ
「君だけの、責任じゃないさ。俺も同じだ。
コウキがレジスタンスの指導でここに戻っていないのがいけない。
いつでも信じられないほどの働きをしてきたからなぁ、必死だったんだろうに…。
また…いつ攻撃があるか分からない。
そしたら、自分が頑張って艦を守らなきゃならない。
そう思い詰めて、追い込んでっちまったんだろうなぁ…自分を。」

マリュー
「解消法に、心当たりは?先輩でしょ?」

フラガ
「え?…あ…んー…あまり…参考にならないかも…。」

フラガはマリューの胸に視線を向けている。

マリュー
「のようですわねぇ。取り敢えず、今日の外出(コウキさんの指示)で少しは気分が変わるといいんですけど!」

フラガ
「…ハァ…いいよねぇ若者は…!」

Sideout


Side チャンドラ二世

チャンドラ二世
「しっかし思い切ったことするよねぇ艦長も。」

パル
「ですね。数時間とはいえ、ヤマトを艦から離れさせるなんて。」

チャンドラ二世
「あ〜ぁ、俺も出かけてぇなぁ。」

パル
「護衛って、あいつそんなに強いの?」

チャンドラ二世
「ん?コーディネーター、コーディネータ。
それにコウキさんの格闘訓練にも付き合っているようだし。」

パル
「VR機でコウキさんの武術をロードしだろう。あれは本当に凄いぞ。」

チャンドラ二世
「元々はナチュラルの技だそうだ…。」

Sideout


Side ミリアリア・ハウ

ミリアリア
「…ハァ。」

トール
「どうした?」

ミリアリア
「え…あー、なんか落ち着かないなーって思って…キラ居ないと。」

トール
「う…大丈夫さ、すぐに帰ってくるよ。それまではなんかあっても俺達が守るし。
それにドッグいれば、安心だ。」

ミリアリア
「うふ。そうよね。」

Sideout



Side キラ・ヤマト

キラとカガリはアークエンジェルの買い出しを頼まれている。
ドッグでは食料は十分だが、現地調達している。
現地の人々がどんな食べ物を食べているか、ドッグから出られないクルーへのお土産でである。
バナディーヤ住民達の喧騒を横に、買い出しの最中である。

カガリ
「ほら!次行くぞ!」

キラ
「あっ…ああ。」

Sideout



Side サイーブ・アシュマン

サイーブ達はアル・ジャイリーの豪邸を訪ねていた。

ジャイリー
「しかし驚きましたよー。貴方が私のところへ御出になるとはねぇ。」

サイーブ
「水を押さえて優雅な暮らしだな、ジャイリー。
俺も出来れば貴様の顔など二度と見たくはなかったが、仕方がない。
俺達の水瓶を枯れさせるわけにもいかん。」

ジャイリー
「お考えを変えられればよろしいものを…。大事なのは、信念より命ですよ?
サイーブ・アシュマン。水場も替わるものです。が、どこの水でも水は水だ。
飲めればいい。それが命を繋ぐのです。」

サイーブ
「そんな話を、今更貴様としようとは思わん。
どうなんだ!こっちの要望を聞いてもらえるのか?もえらえんのか?」

ジャイリー
「それは無論、同胞は助け合うもの。
ま、具体的なお話はファクトリーの方で。へぇほっほっほっほ…。」

ナタル
「ぁ…ぁぁ…」

Sideout



Side キラ・ヤマト

キラ
「っはぁ。」

キラ達はカフェの椅子に座り休憩を取る。

カガリ
「これでだいたい揃ったがぁ、このコウキの注文は無茶だぞ。
各種スパイスだの調味料だの、店を何店か回り少量ずつ買い込めって。」

カフェのボーイ
「お待たせねー。」

キラ
「何、これ?」

カガリ
「ドネルケバブさ!あー、疲れたし腹も減った。
ほら、お前も食えよ。このチリソースを掛けてぇ…」

バルトフェルド
「あーいや待ったぁ!ちょっと待ったぁ!
ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ!
このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろうがぁ。」

カガリ
「ああ?」

バルトフェルド
「いや、常識というよりも…もっとこう…んー…そう!
ヨーグルトソースを掛けないなんて、この料理に対する冒涜だよ!」

カガリ
「なんなんだお前は!」

バルトフェルド
「あぁ…!」

カガリ
「見ず知らずの男に、私の食べ方にとやかく言われる筋合いはない!ハグッ…」

バルトフェルド
「あぁーーなんという…」

カガリ
「っんうまぁーーいぃーーぞ!ほぅらお前も!ケバブにはチリソースが当たり前だ!」

バルトフェルド
「だあぁ待ちたまえ!彼まで邪道に堕とす気か!?」

カガリ
「何をするんだ!引っ込んでろ!」

バルトフェルド
「君こそ何をする!えぇい!この!」

カガリ
「ぬぅぅ!」

キラ
「あぁ…。」

光輝
『キラ、静かに私の声を聞け!
虎がブルーコスモスの連中に狙われている。
必用ならこちらから支持を出す。
気取られない様に普通のフリをしていろ。』

光輝はキラのサングラスに仕込んだ、通信機へメッセージを送った。
キラのサングラスには、ブルーコスモスの連中の映像とその会話が入る。

ブルーコスモス構成員A
『チィ!いい気なもんだぜ。』

ブルーコスモス構成員B
『あのテーブルに居る子供は?』

ブルーコスモス構成員A
『その辺のガキだろ、どうせ虎とヘラヘラ話すような奴だ。』

ブルーコスモス構成員B
『では行くぞ。開始の花火を頼む。』

ブルーコスモス構成員A
『ああ。魂となって宇宙(そら)へ還れ!コーディネイターめ!』

光輝
『ブルーコスモスの連中の配置図を送る。
確認したら左耳を掻いて合図をしろ。』

キラは指示された通りに合図をする。

バルトフェルド
「いやー悪かったねぇー。」

キラ
「…ええ…まぁ…ミックスもなかなか…。」

バルトフェルド
「しかし凄い買い物だねぇ。パーティーでもやるの?」

カガリ
「五月蠅いなぁ、余計なお世話だ!
大体お前は何なんだ?勝手に座り込んであーだこーだと…」

光輝
『敵のロケット弾の信管は壊してある。
爆発はしない、前方10mの所へ着弾させる。
ロケット弾の発射音を合図にテーブルを蹴り上げ、カガリと身を伏せるんだ。
敵は銃撃戦をするつもりだ。
そいつらは、虎の配下に任せてカガリの身を守るんだ。』

バルトフェルド
「!」

キラ
「伏せて!」

カガリ
「うわぁ!」

周辺の人々
「キャァァー!」

バルトフェルド
「無事か君達!」

カガリ
「なっなんなんだ一体。」

ブルーコスモス構成員B
「死ね!コーディネイター!宇宙(そら)の化け物め!」

ブルーコスモス構成員C
「青き清浄なる世界の為に!」

カガリ
「ブルーコスモスか!?」

ブルーコスモス構成員D
「うわぉ…!!」

バルトフェルド
「構わん!全て排除しろ!」

ブルーコスモス構成員E
「うっわぁ!」

光輝
『路地裏にも一匹いる。
そこに落ちている銃を投げつけ、気を逸らして投げ倒せ!』

キラ
「えぇぃ!」

カガリ
「あぁ!」

キラ
「えいっ!」

キラはコウキに教わった格闘術で相手を投げ飛ばす。

ブルーコスモス構成員F
「うをっ…。」

バルトフェルド
「ふっん。」

ブルーコスモス構成員F
「うわ…」

警護兵
「よし!終わったか!?」

ブルーコスモス構成員F
「う…は…」

警護兵がキラが倒した相手を撃ち殺す。

キラ
「…」

カガリ
「お前!銃の使い方知ってるか?
それにしれも…。」

ダコスタ
「隊長!御無事で!」

キラ
「なぁ…」

バルトフェルド
「ああ!私は平気だ。彼のおかげでな。」

カガリ
「ぁ…アンドリュー・バルトフェルド…」

キラ
「え?」

カガリ
「砂漠の…虎…」

バルトフェルド
「いやぁー助かったよ。ありがとう。」

Sideout



Side サイーブ・アシュマン

ジャイリー
「水と食料、燃料等は既に用意させてあります。あとは、問題の品の方ですが…。
75mmAP弾、モルゲンレーテ社製EQ177磁場遮断ユニット、マーク500レーダーアイ、それから…」

トノムラ
「うわぁ…純正品じゃないか…」

ナタル
「呆れるな…ったく。どこから横流しされてるんだか。」

ジャイリー
「世界にはご存知ない地下水脈も、多御座いましょう?
ふわっはっはっは。ま、その代わりと言っては何で御座いますが…」

サイーブ
「分かっている。どうなんだ?それでいいのか?」

ナタル
「ああ!品物に文句はないが。」

サイーブ
「希望した物は全て揃うんだろうな?」

ジャイリー
「それはもう。これを。」

トノムラ
「ぎ!?なんだこの額は…嘘だろ?」

ジャイリー
「貴重な水は高う御座います。お命を繋ぐもので御座いましょう?」

サイーブ
「キサカ!」

キサカ
「支払いは、(きん)でいいか?
アースダラーより信用がある。それに確実に相場は上がっている。」

キサカは金の入ったカバンをジャイリーに手渡す。

トノムラ
「いっいっ!」

ジャイリーは金を数えている。

ジャイリー
「…はい、これでけっこうで。」

キサカ
「では、すぐ運ばせろ!
それと金を換金して欲しい。」

サイーブの部下が金の延べ棒の入ったカバンをジャイリーの足元へ置く。

トノムラ
「ど…どうなってるんですかねぇ?ついて行けないですよ、俺…。」

ナタル
「…」

ジャイリーが部下に指示してカバンを調べさせている。

ジャイリー部下A
「本物です!大西洋連邦の刻印が入ってます。」

ジャイリー
「この金はどうした!」

サイーブ
「これは俺達の命の値段だ。
1/4はお前の取り分でいい。」

サイーブの部下たちが腕や足を(めく)って、リングを見せる。

サイーブ
「これは奴隷の首輪と同じさ、俺達はある傭兵組織に買われたのさ。
逃げ出せば自動的に締まり足や腕を失う。」

ジャイリー
「そんな話聞いたことがないぞ!」

サイーブ
「それはそうさ。
奴らの本業は暗殺や産業スパイだ。
ミスリルって聞いた事ないか?
それで傭兵も金になるって思いつきやっがたって分けさ。
仕事に応じて(かね)を支払う。
貰った(かね)の10倍払えばこのリングを外して貰える。
もし組織の事を俺が喋ったら、組織に報告すれば俺の金額だけ配当を貰えて返却金額も減らして貰える。
奴らは俺達に相互監視をさせているのさ。裏切れない様に。
それに家族を調べていやがる、人質されているようなものさ。」

ジャイリー
「…」

サイーブ
「もし、お前が取引金額を安くしていたら、(きん)の換金量を10倍渡してくれた。
そう指示を受けている。ジャイリー、地下水脈って言っていただろう。
地下水脈にも源流がある。
さっきの品は、オーブのサハク家がダミー会社を通して、大西洋連邦に横流した品さ。
裏の企業には大体、奴らのスパイがいる。
ジャイリー、地下水脈の下流で良かったな。
奴らはプラントの技術者を買収して技術情報を入手している。
それを味方企業に横流しして、敵対する企業を潰している。
俺からの忠告だ。源流に近付いたり、奴らの組織を探らせたりするなよ。
奴らに目を付けられたら潰されるぞ。
奴らは要人を決して暗殺しない。人目が付くからな。
周りから攻めて来る。
そして気が付いた時には衰退させられている。
気を付けろよ。あっそうだ、奴らはミスリルを乗っ取りたいらしい。
ミスリルの本部の場所には、懸賞金がかけらている。
ジャイリーお前の資産以上だ。
ただし部下を使って調べさせれば、部下は裏切るだろうな。
なんせお前の出せる金額以上だからなぁ。」

ジャイリー
「…」

Sideout



Side キラ・ヤマト

バルトフェルド
「さ、どうぞー。」

キラ
「いえ…僕達はほんとにもう…。」

バルトフェルド
「いやいや〜、お茶を台無しにした上に助けてもらって、彼女なんか服グチャグチャじゃないの。
それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね?僕としては。」

キラ
「…」

光輝
『キラ、大丈夫だ。俺も潜入する。
そのまま案内されて行けばいい。』

バルトフェルド
「ふぅ。」

警備兵
「こっちだ。」

キラ、カガリ
「あぁ!」

アイシャ
「この子ですの?アンディ。」

バルトフェルド
「ああ。彼女をどうにかしてやってくれ。
チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ。」

アイシャ
「あらあらー、ケバブねー。」

カガリ
「ぁ…ぅーん。」

アイシャ
「さ、いらっしゃい!?」

キラ
「カ…カガリィ。」

アイシャ
「大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて。」

キラ
「おーい!君はこっちだ。」

バルトフェルド
「僕はコーヒーには、いささか自信があってねぇ。」

キラ
「ぁぁ…。」

バルトフェルド
「まぁ掛けたまえよ。くつろいでくれ。んっ。」

キラ
「…」

バルトフェルド
「エヴィデンスゼロワン。実物を見たことは?」

キラ
「いやぁ…?」

バルトフェルド
「何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える?」

キラ
「いや…そう言われても?」

バルトフェルド
「これどう見ても羽根じゃない?普通鯨には羽根はないだろう。」

キラ
「え…まぁ…でも、それは外宇宙から来た、地球外生命の存在証拠ってことですから。」

バルトフェルド
「僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ。」

キラ
「…じゃぁ、何ならいいんですか?」

バルトフェルド
「んーー、何ならと言われても困るが…、ところで、どう?コーヒーの方は。」

キラ
「…」

バルトフェルド
「あ、君にはまだ分からんかなぁ、大人の味は。

ま、楽しくも厄介な存在だよねぇ、これも。」

キラ
「…厄介…ですか?」

バルトフェルド
「そりゃぁそうでしょう。こんなもの見つけちゃったから、希望って言うか、可能性が出てきちゃった訳だし。」

キラ
「あぁ?」

バルトフェルド
「人はまだもっと先まで行けるってさ。
この戦争の一番の根っ子だ。」

キラ
「んん…。」

光輝
「コンコン。隊長失礼します。
隊長にお届け物です。」

光輝はドアをノックして、返事も聞かずに入る。
光輝はザフト軍の一般兵士の恰好をしている。

バルトフェルド
「君は…。」

光輝
「新兵です。それより、コウキ・イチジョウさんからの荷物です。
中身はブレンドコーヒーとそのレシピでした。」

光輝は肩に担いだ段ボール箱を降ろし、レシピを渡す。

バルトフェルド
「あっはっはっは、君は大胆な奴だなぁ。
一般兵の恰好して、コウキ・イチジョウ。」

キラ
「コウキさん…」

光輝
「へぇー、これが噂の独自ブレンドのコーヒーですか。」

光輝は会話を横に、勝ってにコーヒーをカップに注いでいる。

「「…」」

コーヒーカップを持ってキラの横に座る。
帽子を脱ぐことも忘れない。

光輝
「旨い。
お返しに私のコーヒーも御馳走しましょう。」

光輝は蓋の空いている段ボール箱から、一つのポッドを取り出してテーブルの上に置く。
自分のカップのコーヒーを飲み干して、自分のカップにポッドの中身を注ぐ。

光輝
「うん、美味しい。
キラ君もバルトフェルドさんも飲み比べてみませんか。
ここでは手に入らない豆をブレンドしていますから、美味しいですよ。」

「「…」」

光輝
「鯨石ですか?本物とは限りませんよ。
年代測定や羽の部分が偽物でないと鑑定されていません。
もしかすると二種類の生物がたまたま重なりあったかもしれません。
起源も地球や他の惑星で進化した生物かもしれません。
実証は2例以上見つかってから議論するべきです。科学者としてわ。
太陽系には風化しない空気のない衛星も沢山ありますから。
そこに存在しないと分かれば。
その時は外宇宙から飛来した衛星が、太陽系の惑星に捕まったと考えるべきです。
一般にエヴィデンスゼロワンの説は仮説の段階です。
人は権力者や見識者の言う事を信じすぎです。この戦争の一番の根っ子です。
私の述べた意見に反証出来ますか?」

バルトフェルド
「う~~む、確かに反証出来ないな。
それはさて置き、俺もお替りを貰おうか。」

光輝はバルトフェルドのカップにポッドから注ぐ。

バルトフェルド
「うーむ、ちっ。」

光輝
「その表情は、美味しいと言ってますね。
ブレンドと手に入りずらい豆は段ボール箱に入ってますから、
自分でブレンドを試して下さい。」

キラ
「何で…。」

光輝
「キラ君、バルトフェルドさんは知っているんだよ。
ここに潜入出来たのだから、もし殺す気があるのなら飲み水に毒を混入すればいいと。」

キラ
「そう何ですか?」

バルトフェルド
「その通りだよ。
彼が殺す気なら幾らでも手段がある。
実際、ミスリルはザフト軍を一人も殺さず、救命活動までしている。
それでお前の狙いは何だ。」

光輝
「それは全員揃ってからです。
来たようですね。」

アイシャ
「アンディー。
あらお客さん!?」

バルトフェルド
「おやおや!」

光輝
「初めまして、コウキ・イチジョウです。アイシャさん。
それにしても、カガリ、綺麗だよ。」

キラ
「あぁ…」

アイシャ
「あーほら。もう。」

アイシャは後ろに隠れいるカガリの背中を押す。

カガリ
「ああ…」

キラ
「あー…
女…の子?」

カガリ
「くっ…てめぇ!」

キラ
「あいやぁ…だったんだよねって言おうとしただけだよ。」

カガリ
「同じだろうがぁそれじゃぁ!」

バルトフェルド
「うっはっはっは…」

アイシャ
「あっはっはっは…」

キラ、カガリ
「…」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

マリュー
「なんですって!?キラ君とカガリさんが戻らない?」

チャンドラ二世
「へっ!」

ノイマン
「のっ!」

パル
「あっ!」

サイ
「うぅー。」

キサカ
『ああ…時間を過ぎても現れない。』

光輝
『大丈夫だ。私と一緒だ。
キサカさん、虎の本拠地にいる。
本拠地近くの路地裏に車を回して置いて下さい。
艦長、サイーブ達にも連絡して置いてくれ。
詳細は戻ってから話すよ。』

キサカ
『了解した。』

マリュー
「分かったわ。」

マリュー
「パル伍長!バジルール中尉を呼び出して!」

パル
「はい!」

Sideout



Side キラ・ヤマト

バルトフェルド
「ドレスもよく似合うねぇ。と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ。」

カガリ
「勝手に言ってろ!」

バルトフェルド
「しゃべらなきゃ完璧。」

カガリ
「そう言うお前こそ、ほんとに砂漠の虎か?
何で人にこんなドレスを着せたりする?これも毎度のお遊びの一つか!」

バルトフェルド
「ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」

カガリ
「変装してヘラヘラ街で遊んでみたり…」

光輝がカガリの話に割り込んだ。

光輝
「カガリ、それは違うぞ。
バルトフェルドさんはブルーコスモスの連中を誘き出す餌を自ら行ったのさ。
その証拠に君は気付いていなかった様だが。
警護兵が隠れていた。それに襲撃直後に警護兵が速やかに応戦していただろう。
準備していなかったら、あんなに早く応戦出来るわけがない。」

バルトフェルド
「ふん。お見通しか。」

光輝
「ああ、こちらの作戦でもあった。
基地からコーディネイターを追い出せば、ブルーコスモスの連中がきっと動くってね。
キラ君達に気づくとは思わなかったが。
おかげでロケット弾を不発弾にすり替える必要があった。
それとこれがこの街にいる、奴らの拠点の地図だ。」

光輝は1枚の地図をバルトフェルドに渡した。
地図にはブルーコスモスのアジトらしい処が赤く記されている。

バルトフェルド
「うっはっはっは、上には上がいるもんだ。」

アイシャ
「あっはっはっは、やられたわね、アンディ。」

光輝
「ブルーコスモスのやっている事は非道だ。
血のバレンタインの事も許せない。
奴らには自分達の犯した罪を自分達の法律で裁かしてやる。
バルトフェルドさんザフト軍を撤兵すれば、
アフリカはアフリカ連邦へ変わる。
地球軍とザフト軍に与しない第3勢力となる。
その時はプラントへの資源供給を行う。
プラントの穏健派とも交渉中で、資源供給を前提にアフリカ連邦の容認をして貰う。
その時が来れば、ザフト軍はアフリカ連邦の支配から護衛へと任務が変わる。
君は一軍人だ。そこまでの裁量権はない。
ザフト軍は隠蔽しているが、君は気付いている筈だ。
ストライクのパイロットが優秀なコーディネイターである事を、
但しキラ君はヘリオポリスの学生だったんだ。
ヘリオポリスをクルーゼ隊が襲うまでは。
キラ君、ここで演武をして見せる。本気を見せるんだ。」

キラ
「はい!」

光輝とキラが立ち上がり、演武を見せ始める。
とても演武と思えない迫力があった。
ただ音は空振りをする音しか聞こえない。
テーブルや椅子に乗っても音はしない。
それどころかテーブルや椅子も全く動いていないのだ。
光輝が手を上げて演武が終わった。

「「…」」

誰も声すら発せずにいる。

光輝
「いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ。
君には味方になって貰いたい。
君も死んだ方がマシなクチか?」

キラ、カガリ
「…ぁ…」

光輝
「アイシャさんはどう思ってんの?」

アイシャ
「え?」

光輝
「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては。」

アイシャ
「うっ!」

バルトフェルド
「お前どうしてそれを!」

光輝
「戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなね。ならどうやって勝ち負けを決める?」

アイシャ
「…」

光輝
「どこで終わりにすればいい?」

キラ
「どこ…で…?」

光輝
「敵である者を、全て滅ぼして!…かね?」

「「…」」

光輝
「ミスリルの顧問として宣誓しよう。
そんな未来を変えて見せる。」

バルトフェルドが引き出しから銃を取り出す。

キラ、カガリ
「あっ!」

バルトフェルド
「止めた方が賢明だなぁ。いくら君らがバーサーカーでも、暴れて無事にここから脱出できるもんか。」

キラ、カガリ
「うぅ…」

キラ
「バーサーカー?」

光輝
「バーサーカーとは神話に出てくる狂戦士のこと、一度怒ると暴れ狂う戦士のことだ。
バルトフェルドさんは誤解しているようだが、『SEEDを持つ者』の事だよ。
狂戦士は狂うと、敵味方関係なく暴れ回る。
それより火事場のバカ力に近い。脳のリミッターを解除する。
『SEEDを持つ者』は脳のリミッターをある程度、コントロール出来る。
研究者は誤解しているが、ナチュラルでも長年鍛錬を繰り返せば出来る様になる。」

カガリ
「お…お前…」

光輝
「安心していいよ。バルトフェルドさんは撃つ気はない。
それより戦場でキラ君との戦いを望んでいる。
今回はバルキリーを出さない。
地上でバルキリーは圧倒的過ぎて、ザフト軍の情報部でも作戦も立てられないからね。
ザフト軍の情報部はバルトフェルドさんを犠牲にしても、
バルキリーの情報を引き出して欠点を探したいらしいが。」

キラ
「そんな…。」

光輝
「戦争とはそう言う物だ、無傷で勝てるとは誰も思っていない。」

バルトフェルド
「まいったね。
そこまでお見通しとは?」

アイシャ
「アンディ、ここは貴方の負けね。」

光輝
「アークエンジェルは準備が出来次第脱出する。
戦わなくても君達は助かる。

それではお(いとま)しますか。」

『戦わなくても君達は助かる。』と予言めいた言葉を残し光輝達は出て行った。

Sideout



光輝達はキサカと合流してバナディーヤの街を離れた。
そして今は、光輝とキラはアークエンジェルに戻っている。



Side マリュー・ラミアス

マリュー
「ナタル達から報告を受けているわよ。どういうつもり?」

光輝
「アル・ジャイリーの事だね。
彼らは金の入手先を調べるだろう。
先手を打って、脅かしておかないといけない。
悪者は知っているのさ、上には上があると。
上に手を出せば自分達の命が危険だと言う事も。
良く出来たシナリオだったろ。」

トノムラ
「俺達は何も聞かせされていないぞ。」

光輝
「場数を踏んでいない君達には、演技は出来ない。
それにアークエンジェルの情報も掴んでいる。
話に真実味を持たせる為だ。
お詫びに私特製のソースでドネルケバブを御馳走するよ。
それに金の市場流通は戦争で少ない。
大西洋連邦の刻印と少量だがプラントの刻印を押してある。
それがどっと市場にでれば、大西洋連邦とプラントで裏切り者探しが始まる。」

マリュー
「これだからね。本当に悪知恵が回るんだから。」

((うん。うん。))

Sideout


アル・ジャイリーの手下が探りを入れたが、光輝に脅されて返された。
以降、アル・ジャイリーは闇の組織(存在しない)を恐れて過ごす事となった。

 
 

 
後書き
悪ノリして一万文字を超えてしまった。反省はしていない。 
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