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Fate / the beelzebub comes.(魔王来たりて)

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第3話 拠点探索

 
前書き
一日空いてから引越し再開です。 

 
「「「っ!?――――――何だと(ですって)!?」」」

星瞬く夜空に、三人の男女の絶叫が木霊した―――――















(シリウスサイド)

「・・・何故、その様な話になるのですか?」
いち早くキャスターが立ち直り、冷静に質問してきた。

「そんなに驚く様な事か?一応、利害は一致してるだろう?」

「・・・普通は、初見の敵勢力と同盟を結ぼう等とは考えない物ですわ。
 それは、例え利害が一致していたとしても同じ事。」

ふむ・・・そんな物か?

「しかし、聖杯を破壊するという目的がある以上、彼等以外の魔術師と同盟を組める可能性は低い。
 ・・・それに、コイツらは―――――特にランサーは信用に足ると思うぞ?」

「・・・その根拠は何かしら?」
おや、キャスターの口調が段々冷たいモノになっていってるな・・・・すっごく怖いぞ(汗)

「どうやら、ランサーは条件付きの制約を受けているみたいだからな。
 ランサー・・お前さん、人に食事に誘われたりすると断れない制約か何か受けてるだろ?」

殺気の収まり方が不自然だったし、魔力流動にピントを合わせて凝視すると、
何種類かの加護系の魔法と制約の術式が見てとれたからな。

「なっ!?何でテメエがそれを――――――
 ハッ!?しまっ「何でアッサリ引っ掛かりますか、貴方は―――!?」グフゥ!?」
アッサリと俺の誘導尋問に引っかかったランサーの鳩尾に、バゼットによる怒りのボディブローが深々と突き刺さった。

あれは・・・・凄く効くだろうな・・・(汗)

「・・・・・・。」
ランサーは物言わぬ屍と化し―――いや、胸が上下している所を見ると、辛うじてまだ息が有る様だ。
岸に打ち上げられた魚の様に、ピクピクと痙攣して、如何にも瀕死の状態といった感じだが。

どちらにしても復活には暫し時間が掛かりそうだ。

「・・・とまあ、言質も取った事だし、同盟を組む事を前提に話を進めて良いか?」

「・・・仕方ありませんね、ランサーがこの状態では私達に勝ち目はありませんし・・・
 同盟の条件を話し合いましょう。」

「いや、ランサーを行動不能にしたのはお前さんなんだが・・・・」

「・・・・・・・・・・・。」

「分かった・・・・分かったからその振り上げた右拳を下ろせ、ゆっくりとだぞ(汗)」
俺はただ事実を指摘しただけだというのに・・・・理不尽極まりない。

・・・とは思っても口にはしない。
言えば、途端にランサーと同じ運命を辿る事になるのは目に見えているからだ。

「・・・そういえば、同盟を組むに従って、先ずはお前達の拠点を聞いておきたかったんだが・・・
 連絡を取るにしても必要だしな。・・で、お前達の拠点は何処にあるんだ?」

連絡用に使い魔を放つにしても、場所が分からなければ大分時間が掛かってしまうからな。

ん?・・・そういえば、俺達の拠点は今から確保しなければならないんだったか。

まぁ、見つからなかったら見つからなかったで、位相空間に居を構えれば良いのだから別に構わないのだが・・・

ただ、これだとキャスターが自由に行動出来ないんだよな。
それに、今後の事を考えれば、日常生活に必要な衣食住は、現実世界で確保して置きたい。

ま・・・ひとまずは街の偵察から始めないといかんな。

話すべきか、悩んでいるバゼットを脇目に、俺は今後の方針を思案していた。

















(バゼットサイド)

「・・・本来ならば、魔術師が自らの拠点を教えるなどタブーなのですが・・・・・背に腹は代えられませんね。
 私達は街の外れにある、エーデルフェルト家所有の洋館を拠点として使用しています。
 龍脈の上に位置していますし、ベースとするには最適場所ですからね。」
気付けば、私は何時の間にか彼らの問に逐一答えてしまっていた。

・・・まさか、精神操作の魔術を使われた・・?

いや、そんな素振りは全く見せなかった。

・・・彼の・・眼前に座るこの紅い男の持つ独特の雰囲気がそうさせたとでもいうのだろうか?
確かに敵同士という認識は、随分と薄れてしまっているが・・・

「ふむ・・・お前は既に拠点をキープしているのか・・・まぁ、当然と言えば当然か。」

「?・・・その様子からすると、まだ拠点が決まっていないのですか?」

私は思わず対面に座っている、赤毛の男を見つめていた。
当然だろう、殺し合いをしようとしているのだ、準備を万端にして臨むのが当たり前なのだから。

「ああ、俺は今日こっちに来たばかりだし、キャスターもとある理由で前マスターを排除したばかりだ。
 当然、拠点なぞある筈も無い。」

「な!?前マスターを排除したですって!?」

「ま、それはこっちの事情だ。ただ一言だけ言えば―――――その前マスターってのが外道だったって事だけだ。」

「それは・・・・」

俺とキャスターの表情から事情をある程度察したのだろう。
バゼットがそれ以上言及してくる事はなかった。

「・・・ま、こっちは拠点が決まり次第知らせるとして・・だ、取り敢えずコレを渡しておく。」
俺は懐から探知・連絡用の魔方陣を封入した魔石を取り出し、バゼットの投げ渡した。

「・・これは?」

「俺が作った連絡用の魔石だ。例え結界の中や違う空間に居たとしても繋がる用にしてある。
 何か用がある時はそれで連絡をくれ。魔力を流せば起動する様になっている。」

「・・・凄い技術ですね。」
早速魔力を流し、起動させた様だ。
俺の持つもう片方の魔石が起動していた。

「・・これで分かったと思うが、片方が起動すれば、もう片方も起動する様に出来ている。
 では、俺達は拠点を探しに行く。」

「分かりました。また会いましょう。」
俺達は定期的に連絡を入れる事を約束し、それぞれの方向へと別れた。
















(キャスターサイド)

私とマスターはランサー組と別れた後、漸く市街地へと辿り着いた。

「結構時間が掛かってしまいましたわね・・・」

既に東の空が明るくなってきている。

流石に早朝は冷え込むわね・・・

「・・・それで、本拠地の件はどうなさいますの?」

「取り敢えず目立たない手頃な建物を探すとしよう。この際、地脈の事はあまり気にせんでいい。
 いざとなれば俺が位相空間を創造(つく)って、そこに居住スペースを作るからな。」

「・・・位相空間・・ですか?」
聞いたことの無い単語ね・・・彼独自の魔術かしら?

「分かってないって顔だな?位相空間とはこの世界とは少しズレた似て否なる空間・・・
 言わば、この世界で言う所の【固有結界(リアリティマーブル)】の様な物だ。」

「なっ!?【固有結界(リアリティマーブル)】ですって!?」

「とは言っても、あくまでみたいな物であって、本物みたいに何でも有りって訳じゃないがな。」

「・・っ!・・・・」
私の口から漏れた声は言葉に成らず、金魚の様に口を開閉する事しか出来なかった。

「・・・だが、さしあたって位相空間に居住スペースを作るにしても、メリットとデメリットがあってな。」

「・・・メリットとデメリットですか?」

「メリットは絶対に敵に発見されない事と、この中では周りの被害や監視の目を気にしないでいい事だ。」

「・・・成る程、そもそも世界そのものが違うのだから見つかる事は無いと言う事ですわね。」
確かに、それならば戦術的にかなりのアドバンテージを得る事が出来る。

「で、デメリットだが・・俺の魔力で空間を維持している性格上、展開している間常に魔力を消費する事だ。
 出来ない訳じゃないが、流石に疲れるし面倒くさい。

 そしてもう一つは、(ゲート)用の寄り代が必要になる事なんだよな。」

「門(ゲート)というと・・・位相空間と現実世界とを結ぶ門という事でしょうか?」

「理解が早くて助かる。その門を繋いでおかないと、位相空間が中々安定しなくてな。」

「それで、両世界を繋ぐ道標としての触媒が必要という訳ですわね?」

「そういう事だ。」
確かに敵性勢力に絶対に知覚されないというアドバンテージは大きい。

しかし、マスターが魔力枯渇で行動不能では意味が無い。

・・・あの自分より遥かに強大な魔力が、枯渇するとは到底思えないけれど・・・
聖杯戦争中、何が起こるか分からない以上、魔力を温存しておく事にこしたことはないわね。

「ま・・・取り敢えずはこの街の地形を調べてからだな。
 ―――我が内に眠りし、我が影生まれ出でし子らよ、偽りの楔を解き放ち、今こそ我が下へ来たらん―――」

シリウス様が呪文を唱え終わると、彼の影が膨張し、無数の魔法陣が浮かび上がる。

「一体何を―――」
私がシリウス様に声を掛けようとした瞬間―――――

バサバサバササ!

浮かび上がった魔法陣から、凄い勢いで飛び出して来た黒い影が、月明かりが照らす夜空へと舞い上がっていった。

「「「「「カァ――――――!!」」」」」

・・・か、鴉!?
いや、違う・・・鴉にしては内包している魔力が大き過ぎる。

例え、使い魔だと考慮したとしても・・だ。

それにあの紅い眼・・・

ゾクリ―――

・・・洒落にならないわね。
その闇夜に浮かぶ無数の紅い双眸に、私は背筋に冷い汗が伝うのを感じていた。
















(シリウスサイド)

キャスターが目を見開き、周囲の枝に停まっているカラスもどき達を見回している。

「・・・。」
・・・若干引き気味なのは気のせいか?

周りの眷族達を見回す。
闇夜に浮かぶ無数の双眸・・・確かに不気味ではあるが・・・

「コイツらは鴉の姿(ナリ)をしているが、下級魔族(レッサーデーモン)の一種でな。
 以前、俺が偵察用に生み出した眷族みたいな物だ。」

一応鴉の姿をしてはいるが、当然鳥目ではなく、逆に暗視能力に加え、隠行(ステルス)能力を付与して作り出した、
偵察行動に特化した総数1000にも及ぶ鴉の群れだ。

緊急事態にでもなれば、編隊を組んでの戦闘行為も可能となっている。

一応、コイツらにも下位魔法(ファイアー・ボールやフリーズ・ブリット)位は撃てる様に調整してあるし、
滅多な事ではやられんとは思うが・・・

ま・・・いざとなれば、アノ特殊能力が発動するから問題ないか。

「・・・・本当に、何でも有りですわね(汗)」

「早速、街を調べさせる事にしようか。行け!!」

「「「「「カァ―――!!」」」」」
俺の掛け声と共に、鴉達が暗闇の中へと散っていく。


さて―――手頃な場所が見付けられればいいが・・・

















(???サイド)

ん・・・?
何だ、この理由も無く不愉快になる気配は?

「・・・あれか?」
窓の外、電線に泊まっている無数の鴉が我の目に留まる。

・・・気に食わぬな。
鳥類風情の分際で、我を探る様な視線で見下ろすとは・・・


ニヤリ―――――

「っ!?貴様・・・鳥類風情が、我を嘲りおったな―――!!」

我は窓を乱暴に開け放ち、
王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)より射出、下等種に天誅を下すべく解き放つ。

「ククッ・・・下等種風情が、身の程を知―――――何っ!?」
我が放った宝具の(ことごと)くが交わされただと!?

Bランク程度の宝具とはいえ、鳥類風情に交わせる代物では無いのだぞ!!


フ・・・

「っ!貴様、今度は鼻で嗤いおったな―――!!」
今度は必中の概念を宿した宝具を王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)より取り出し、射出した。

「「「ギィィイィィィ!?」」」

今度は命中し、電線に泊まっていた鴉を原型の分からぬ程の肉片へと変える。

「・・・我の貴重な時間を浪費させよって・・・鳥類風情が粋がるからだ、馬鹿め!」

「「「「「カァ―――!!」」」」」

!?
「な、なんだと・・・?」

再び耳に入ってきた鳥類の嘶き・・・ふと己の周囲を見渡せば、その数を倍増させた、
先程と同じ灼眼の双眸を煌々と光らせたアノ鴉が我を見下ろしていた。

その双眸に宿るのは明確なる敵意・・・

「フ・・・ハハ・・・ハハハハハ!・・良かろう、貴様ら下等鳥類如き・・・我が肉片ひと欠片も残さず消滅させてやる!!」
我は雲霞の様に湧き出てくる下等鳥類共に、最後の鉄槌を下すべく―――

―――起きろ―――乖離剣(エア)―――
我が愛剣、乖離剣(エア)を呼び起こした。

「・・・何をしている?ギルガメッシュ。」

・・・ん?
掛けられた声に気付き己に背後を振り向けば、我が下僕、言峰綺礼が怪訝な表情を浮かべ立っていた。


















(言峰サイド)

泰山にて至福のマーボーを食し、堪能した帰り道―――――

うん?
妙に教会の前が騒がしい・・・?

それにこの魔力は――――

「ギルガメッシュか・・・?一体何をやっているのだ?」

私が教会の敷地に入ると、怒り心頭なギルガメッシュが、乖離剣(エア)を取り出していた。

「・・・何をしている?ギルガメッシュ。」

しかも、既に発射体制に入っている。

「何をやっているのだ!?」
私は慌ててギルガメッシュの背後に回り、羽交い締めにする事で何とか奴を止める。

「離せ言峰!!あの下等鳥類どもを殲滅せねばならん!!離さんか――――――!!」

「下等鳥類だと・・・?何者かの使い魔・・か?」
ギルガメッシュの視線を追って見ると、不気味な紅眼で此方を見下ろしている鴉が―――

ポン!

ポポン!

コミカルな音を立てながら、次々に分裂していく所だった。

「「「「「「「「カアァ――――――――――――!!」」」」」」」」」

「な、何!?・・・ぞ、増殖しただと!?」

「・・・・・・(汗)」
私の脳裏に、何日か前、ギルガメッシュに無理やり見せた【ある映画】のワンシーンが蘇った。

「貴様等はグレム○ンか―――――――――――――――!!?」

私と同じ事を考えていたのであろう、己がサーヴァントの悲痛な絶叫が周囲に木霊したのだった。














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