FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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特殊能力の力
前書き
スマホの調子が悪くて新品交換してもらいました。
そしたらダメになったスマホがいつにもましてチカチカしだして交換してもらってよかったと思う今日この頃。
遡ること少し前・・・
ヒュンッ
敵を捜索している五人のすぐ近くに瞬間移動してきた銀髪の少女と藍髪の少女。彼女たちは敵に見えないようにその姿を確認すると、顔を引っ込めて作戦を確認する。
「いい?ウェンディはミリアーナさんかリオンさん、どっちかを倒してくれればいいから」
「うん。わかった」
二人とも倒せればそれに越したことはないのだが、状況が状況なため、最低限一人を倒せばいいと作戦を考えた小さき魔術師。ウェンディはそのことを再確認すると、真剣な表情でうなずいた。
「イメージはちゃんとできてる?」
「たぶん・・・大丈夫!!」
ウェンディの特殊能力が鍵を握る今回の作戦。特殊能力はイメージができていないと発動できないので、それがしっかりとできているのかを確認しあっていた。
「一人倒したらすぐに迎えに行くからね」
「うん!!お願い!!」
救出係のためともに戦うことのできないソフィアは柱の影に隠れ、ウェンディは大きく深呼吸をした後、周囲をくまなく探している敵の元へと歩いていく。
「頑張って、ウェンディ」
目的を果たしたらいつでも退散できるようにとその場で待機するソフィア。彼女の視線の先にいる少女は、自身を見る五人の前に立つと、いつでも動けるようにと姿勢を作る。
「どういうことだ?」
「オオーン?」
たった一人で敵の真っ只中へと飛び込んできた少女に目を白黒させているユウカとトビー。いや、他の三人の反応も同様で、なぜ彼女がたった一人でやって来たのかわけがわからないといった様子だ。
(5対1だぞ?それも、ウェンディの実力じゃ俺やカグラには敵わないはずだ。それなのになぜ出てきた?)
少女も少しずつ実力をつけてはいるが、まだ自分たちと張り合えるレベルとは言いがたい。それなのに、この場に現れるということは・・・
(何か策があるということか?)
自分たちを一人で打ち負かす策が存在している・・・そうでなければ、彼女がこんな無謀としか言いようがないことに出てくるはずがない。
(だが、これはチャンスだ!!)
ニヤリと小さく笑みを見せる氷の魔導士。どのような作戦であろうと、有利なのは自分たちに変わりはない。
もしここでウェンディを退場させることができれば、数字的にも有利に立てる。二人が動けない状態ならなおさらだ。
「ここでウェンディを仕留めるぞ!!トビー!!」
「オオーン!!」
リオンの指示を受けウェンディに真っ先に飛び付いたのは犬のような人。彼は両手の長く伸びた爪を出し、天竜に飛びかかる。
「メガ爪クラゲ!!」
「うわっと!!」
連続で切りかかろうとしたトビーだったが、ウェンディは一歩下がり回避する。その間にリオンはカグラにあることを確認していた。
「カグラ、見えるか?」
次から次へと攻撃を仕掛けるトビーを簡単に避けていく少女を凝視しているカグラ。
「ダメだ、文字が見えないぞ?」
カグラのスペルは“五文字透視”。敵チームの5スペルを見ることができる能力なのである。が、ターゲットであるウェンディのスペルが見ることができず、彼女は困惑しているようだった。
「カグラのスペルでも見えない能力なのか?」
「もしくはユウカと被ったのがウェンディなのかってことだ」
ユウカの5スペルは“身体能力上”。自分の身体能力を全て底上げできる能力なのだが、シェリアの“レオン分身”の“身”と文字が被り、封じられてしまったのだ。
「天竜の鉤爪!!」
「オオーン!!」
二人が頭を悩ませている目の前で、トビーの顔面に蹴りを押し込む天空の巫女。攻撃を受けた犬っぽい人は地面に背を擦らせながら飛ばされていく。
「波動!!」
「よっと」
トビーに体を正体させていたウェンディに向けて魔法を放つユウカ。だが、体が空中に浮いていたはずのウェンディは体をくの字に曲げると易々と避けてしまう。
「あれでスペルを使ってないと思うか?」
「いや・・・」
次々に攻撃を仕掛けていく二人の青年を嘲笑うかのように避けていく少女を見て、険しい表情を見せる。中でも彼らはトビーを子供のように扱っている彼女に驚きを隠せない。
「トビーのスペルが発動してない?」
「いや、確実に能力は上がっている」
トビーの5スペルは“絶対無敵強”。本来の狙いは敵に使用されたくない“絶対”・“無敵”・“強い”などの文字を封じるために作り出した能力なのだが、発動できるとなれば使用者のイメージのままに力を引き上げることができる最強のスペル。しかし、それを使用して攻めているはずのトビーがウェンディを捉えきれないでいる。彼の動きは確実に早く、力強くなっているだけにリオンとカグラは違和感を拭いきれないでいた。
「ミャア!!二人とも何やってるの!?」
数的有利を生かしきれずに攻めあぐねている彼らを見て、ここまで後方で待機していたミリアーナが突進してくる。
「待てミリアーナ!!無闇に動くな!!」
敵プレイヤーシリルを拘束している彼女が前線に上がることは、それなりのリスクを背負っていることと同義である。それをわかっているカグラが止めようとするが、ミリアーナの耳には届いておらず、止まる気配がない。
「ネ拘束チューブ!!」
両手を前に出しゴムチューブのような魔法を繰り出す。しかし、その奇襲もウェンディに容易く交わされてしまい・・・
「天竜の・・・咆哮!!」
「ミャアアアアアア!!」
少女のブレスがミリアーナを直撃する。
パキッ
回転しながら空中へと打ち上げられたミリアーナの左手に付けられたバッジから音が聞こえる。それは、弱点部位へと攻撃命中を物語っていた。
『ミリアーナ選手!!弱点部位へのダメージにより退場です!!』
「そんなぁぁ!!」
場内に響き渡る非情なアナウンス。その直後、空へと投げ出される格好になっていたネコ耳の女性は、転送魔法によりその場から姿を消した。
「シェリアたちの予想だと、これでシリルの拘束が解けたはず」
フィールドから目的の人物を退場させたことに喜びを感じ、小さくガッツポーズする天竜。その頃、そこから離れた地点に待機している少年は・・・
「やった!!これで動けるぞ!!」
ミリアーナの“尻流亀甲縛”から解放され、体の自由を確かめていた。
リオンside
「「「「・・・」」」」
カグラを後ろに置きつつ、目の前の敵に意識を向ける。しかし、予想だにしなかった展開に、俺とカグラはもちろん、ユウカとトビーも額から流れるものの存在を感じていた。
「ふぅ」
一人で複数人数を相手にしているとあって、疲労の色が伺える天竜。彼女は一度一呼吸置くと、口を閉じて敵へと意識を集中させる。
(まずいな・・・これは)
直感でそう感じた。このままでは彼女退場させるどころか、こちらがやられてしまいかねない。
(ミリアーナが退場したことでシリルが復活しているはず・・・万一俺がやられると、間違いなく勝ち目はないぞ)
レオンを叫ばせるスペルを使用しているのはこの俺だ。シリルが復活し、レオンまで動けるようになったらいくらカグラでも勝てるかわからん。
これからどうするべきか、退くべきか戦いを継続するべきか迷っていると、ウェンディの後ろに突然何かが現れる。
「お疲れウェンディ!!戻るよ!!」
現れたのは彼女のチームメイトであるソフィアだった。今の出てき方からすると、移動系のスペルは奴が持っているのか。
「うん!!お願い!!」
「オッケー!!」
「待て!!」
「いい!!行かせろ!!」
ウェンディを連れてこの場から退散しようとしたソフィアを止めようとしたユウカを必死に止める。こちらとしては、このまま戦うよりも、一度距離を置かせてもらった方がありがたい。
「じゃあねぇ!!」
憎たらしいほど余裕のある笑みを見せてこの場から退散する二人の少女。彼女たちがいなくなった後、俺たちは一応周囲に警戒しつつ作戦会議を始める。
「まずいな、これは」
「あぁ」
「オオーン」
こちらのスペルがうまく機能していないところがあった。だが、それは術者がイメージ出来ていないからとかではなく、相手が何かしらのスペルを使って優位性を得ているからだと推測できる。
「ウェンディのスペルは見えなかったんだよな?」
「あぁ。だが、ソフィアのスペルは見えたぞ」
最初に現れたウェンディのは見えなかったのに、後からほんの数秒姿を見せたソフィアのは見えた。とすると・・・
「やっぱウェンディが特殊なスペルを使ってるってことか?」
「だろうな」
動きがよくなっているトビーの攻撃が当たらなかったことも、不意をついたユウカとミリアーナの攻撃が当たらなかったことも、スペルが原因だと考えれば納得が行く。しかし、腑に落ちない点もあることにはあるがな。
「なぜそれをシリルではなくウェンディに使ったかだ」
そこまで強力なスペルを思い付いていたのなら、サブのウェンディではなくプレイヤーであるシリルに持たせるのが妥当なはず。なぜあえてそうしなかったのか・・・そこに今回の勝負のヒントがありそうだ。
「こちらに使われたくない文字を使った結果できたスペル・・・ということか?」
「そう考えていいだろう」
ユウカの“身体能力上”と被っていることから、向こうも自分たちの能力を高めるスペルを発動させようとしていたことがわかる。
たぶんウェンディは弱点に攻撃を当てさせないようにするためのスペルなはず・・・
「適当にコールしてみるか?」
スペルのコールはどこからでも、何度でも行うことができる。ここで当たるまでがむしゃらにコールするのも一つの手ではあるが・・・
「いや、やめておこう」
そのスペルを封印できているかどうか、確かめる術がない。スペルを封印されてもアナウンスが鳴るとは思えないし、封印したものだと思い込んで戦いに挑んでは、返り討ちに会う可能性すらある。
「ソフィアのスペルをコールするのも一つの手だが・・・」
カグラのスペルによって明らかになっているソフィアの5スペル。それをコールして封じてしまえば、敵の奇襲も退避方法も奪える。
(ただ、それは敵の居場所がわからんことには意味をなさん)
相手がどこにいるのかわからない限り、あの瞬間移動系スペルを封じても、自分たちに有利になったとは言えない。どちらも偶然遭遇するリスクが出てくるだけで、何も好転したとは言い難いのだ。
「うわああああああああ!!」
「「「「!!」」」」
何も策がないまま、時間だけが過ぎようとしていたところで、運が我々に味方した。
「カグラ!!すぐにソフィアのスペルをコールしろ!!」
「え?」
遠くから響いてきた少年の叫び。それが聞こえたと同時に隣にいた剣士に指示を出すが、彼女は不意な叫びに驚き、頭の理解が追い付いていない。
「いいから!!早く!!」
「わ・・・わかった」
説明するよりも今は、ソフィアのスペルを使ってあいつらが場所を移動するよりも早く彼女の能力を封じることが先決。
「“瞬間場移動”」
さっき見た少女のスペルをコールするカグラ。こいつの5スペルなら、今コールしたのが正解なはず。
「さて、今度はこちらから行かせてもらおうか」
さっきはいいようにやられたが、今度はそうは行かない。首を洗って待っているといい。
シリルside
ヒュンッ
俺とレオン、そしてシェリアが待機していた場所に現れる二人の少女。そのうちの一人は俺の姿を見ると、嬉しそうに笑顔を見せる。
「よかった!!シリルの拘束が解けたんだね!!」
駆け足でこちらにやってくるウェンディを迎え入れようと両手を広げる。だが・・・
ガッ
「キャフッ!!」
彼女は足がもつれてしまい、何もない場所で転倒してしまう。
「な・・・なんか久しぶりだね」
彼女が転ぶ姿をずいぶん久しぶりに見たような気がする。大魔闘演武以来かな?それ以降はずいぶんしっかりしてきたなと思っていただけに、少々驚いてしまう。
「えへへ/////ごめんね」
「ううん。むしろありがとう」
舌を出して照れ隠しをするウェンディに手をさしのべる。たぶん、彼女は疲れてて足がもつれてしまったんだろう。俺がスペルをちゃんと発動させていなかったばかりに彼女にふたんをかけてしまって、本当に悪いことをしたな。
「頑張ったんだね!!ウェンディ」
「うん!!ちゃんとミリアーナさん倒してきたよ!!」
立ち上がってスカートについた埃を払っていた少女に声をかける天神。彼女は友人からの声かけとあって、楽しそうな表情で答えていた。
「ウェンディ本当に無双だったよ!!攻撃一つも受けてないもん!!」
「「えぇ!?」」
ソフィアから話を聞いて思わず目が飛び出しそうになった。言われてみると、ウェンディのどこにも傷がついているようには見えない。それどころか服にもダメージがないことから、完全に相手を圧倒していたことが伺える。
スゥッ
そんな彼女に向けて差し出される一つの手。その主は口を押さえたままの氷の神。彼はひとまず役割を果たしてくれた彼女にハイタッチしようとしているみたいだ。
「ごめんね、レオンのは解除できなくて」
フルフルと首を横に振って大丈夫だということを伝えるレオン。しかし、この行動が事態を最悪な方向へと誘ってしまう。
「うわああああああああ!!」
「「「「!!」」」」
首を振ったことにより勢いで手を口から離してしまったレオン。その結果、堪えていた声が漏れてしまい、周囲に響き渡る。
「ちょっ!!口!!口押さえて!!」
またしても叫び出した少年の口を大急ぎで塞ぐ幼馴染み。それでひとまず絶叫タイムは終了したが、さらなる問題が起こる。
「相手に聞こえたよね?今の」
レオンの絶叫はこのフィールド内全体に聞こえるほど大きなものとなっている。つまり、敵に俺たちの居場所が判明してしまったのだ。
「大丈夫!!ソフィアがみんなを安全な場所に運んであげるから!!」
「そっか!!」
しかし、その不安もすぐに取り除かれる。だってこっちには“瞬間場移動”を使えるソフィアがいるのだから。
「じゃあ早めに逃げよ!!」
「うん!!リオンたちが来る前に!!」
「了解!!」
早速この場から退避しようとソフィアの周りに集まる。しかし、ここで最悪の事態が俺たちを襲った。
カチッ
「え?」
「ソフィア?」
突然固まって動かなくなる銀髪の人魚。その様子はとてもふざけているようには思えないことから・・・
「まさか・・・」
「5スペルを・・・」
「当てられた!?」
両チームの特殊能力が次から次へと炸裂する最終戦。5スペルサバイバルは、さらなる混戦へと陥っていく。
後書き
いかがだったでしょうか。
ウェンディの無双にレオンが足を引っ張るというなかなか斬新な今回の戦い。
次は次の段階に移行します。
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