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ViVi・dD・OG DAYS

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第4話 トリル ・ グレアム

 
前書き
一応地の文で説明していく方向ではありますが、
現在と回想が混ざっていくと思います。
○●○で始まる部分(から次の☆★☆の区切りまで)が回想部分だと思っていただければ幸いです。
※冒頭は前話からの続きで回想部分になっております。
 

 
 なのはの言った『はやてちゃん』こと――八神はやて。
 彼女となのは――そして、フェイト。
 3人は彼女達の小学生時代に起こった『それぞれの事件』をキッカケに――
 なのはとはやての生まれ故郷であり、フェイトが小中学生時代を過ごしていた我々の世界――地球で出会った。そして、その事件をキッカケに交流を深めて親友となる。
 今でも3人の交流は続いており、なのはやヴィヴィオとも頻繁に会ったり通信やメールをしていた。
 その為に、ヴィヴィオも彼女の近況については知ることができていたのだった。そして――。

☆★☆

 場面はフロニャルドの大草原へと一旦戻る。

「――ルーテシア・アルピーノと申します。よろしくお願いします」

 対面を果たしたミルヒ達とヴィヴィオ達。まずはゲスト側として――トリルよりヴィヴィオ達の紹介が始まっていた。
 尚、今回の来訪は彼女達が以前――ヴィヴィオ達の通う魔法学院の1学期前期試験の試験休みを利用して伺った場所。
 ミッドチルダとはまた別の異世界。
 ミッドチルダの首都・クラナガンより臨行次元船で約4時間の距離にある無人世界・カルナージ。
 1年を通して温暖な大自然の恵み豊かな大地に建設された、ヴィヴィオ達との古い親交のある、メガーヌとルーテシア――アルピーノ親子の住む家。
 そこへ『春の大自然旅行ツアー&ルーテシアもいっしょにみんなでオフトレーニング!』と称した旅行に参加していたメンバーに、引率者としてトリルが加わった大人数の来訪となっていたのだった。

 彼女達の紹介も最後の1人――ルーテシア・アルピーノへと進んでいた。
 トリルが端に立っていたルーテシアを紹介して、彼女が挨拶を終えてお辞儀をすると――

「……それでは、改めまして。この度、ご無理をお願い致しました……トリル・グレアムと申します。来訪のお許しを頂けたこと、大変感謝しております。大人数の為、ご迷惑をおかけすることがあるかも知れませんが……数日間よろしくお願い致します」
「こちらこそ、わざわざお越しいただいたこと、とても感謝いたしております。色々と至らぬ点もあるとは思いますが、楽しんでいってくださいね」

 最後に自分自身がミルヒ達の前へ進み、挨拶を済ませて深々と頭を下げながら再び感謝と来訪に際しての嘆願をするのであった。それに倣いヴィヴィオ達もミルヒ達に向かい頭を下げる。
 ミルヒは、彼らに高貴な微笑みを送りながら、降り注ぐ日差しのような暖かいもてなしの言葉を送るのであった。

○●○ 

 そんな今回の引率者であり、先の高町家での会話の際、ヴィヴィオが付け加えていた『トリルさん』とは――。
 元時空管理局の提督だったギル・グレアム氏の息子のトリル・グレアムのことである。とは言え、彼もヴィヴィオと同じく養子縁組であった。
 グレアム氏はとある事件の責任を取り管理局を去ったのち、故郷のイギリスで隠居生活を送っていた。
 そして、その事件の首謀者として罪を被せようと。人身御供にしようとした『罪滅ぼし』として。
 事件が起きる以前から、はやての両親の古い知人を装い、彼女に多額の援助をしていたのだった。
 しかし、彼の自責の念は彼女への援助だけでは拭えるものではなかった。その為に――
「余生で何か出来ることはないか?」
 そう考えた末、孤児院育ちで身寄りのない彼を引き取り――立派に彼が自立するまで面倒を見ていたのだった。
 尚、グレアム氏の在籍していた時空管理局――。
 現在、なのはやフェイトを始めとするトリルを除く大人組と――
 元なのはやフェイトの部下であり、フェイトの被保護者であるエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ。
 彼女達は職場こそ違うが、同じ管理局勤めの『公務員』なのである。

 とある事件の関係者であった、はやて・なのは・フェイトの3人は当時9歳。トリルは、13歳だった。
 世代的には、なのは達と近い為に子供と言うよりも孫と言う感じではあるのだが、とても仲の良い親子なのである。
 グレアム氏とはやての交流は未だに続いている。
 当然、現在は昔の様な金銭的な支援は行われていないのだが、家族ぐるみの付き合いは健在であった。
 
 更にトリルが中学の頃。とあるキッカケにより、グレアム氏の口から魔法の存在を知ることになる。
 その折、彼の話に出てきた『八神はやて』と言う少女の存在。
 彼はその時――彼女に会いたい。会わないと何も始まらないと切に感じ、彼に対面の仲介を嘆願する。
 グレアム氏は即時にはやてへ連絡を取り事情を説明して彼女の了承を得た。
 数日後。彼は単身、彼女の家まで遊びに行き、八神家の全員と対面を果たしたのである。
 フェイトやなのはを始めとする3人の家族や友人、知人の面々には同じく、八神家滞在初日に開いてくれた歓迎会で対面を果たし、以降も変わらずに交流を深めていた。

 その頃の話は別の機会にするのだが、なのは達3人とはその時から今でも兄妹の様な関係が続いている。
 そして彼は現在、地球のイギリスではなく――何故かミッドチルダで小さな喫茶店を営んでいるのだった。
 なのは達は彼の店を個人的に良く利用する上、ヴィヴィオを連れても何度か訪れていた。
 ヴィヴィオ曰く――
「なんとなく、翠屋に雰囲気が似ていて好き」
 とのことで、彼女自身も個人的に何度も訪れていたのだった。

 これはトリル本人しか知らない話であるのだが、彼が喫茶店を始めた理由。
 実は、なのはの父親である高町士郎の淹れてくれた1杯の紅茶だったのである。
 彼はなのはの家族で経営する、喫茶 「翠屋」 の優しくて暖かな雰囲気の漂う空間を目指して喫茶店を開いたのだが、ヴィヴィオよりも長く空間にいたはずのなのはには何も感じて貰えていないでいた。

 彼女は喫茶店の開店初日に遊びに来た時、室内を見回して――
「なんか、翠屋とは違う新鮮な雰囲気だねぇ」
 そんな言葉を、悪びれた様子もなく彼に言い放っていたのだった。
 その言葉と彼女の表情を彼は今でも鮮明に覚えている。
 それが喫茶 「翠屋」 の雰囲気を十数年間、肌で感じ続けてきた人間に突きつけられた現実であった。

 勿論、翠屋とは年季が違う。培ってきた基礎が違うのである。
 片や、翠屋は何年も続く喫茶店。しかし彼の店は今日が初日。
 しかも彼には下積みが全くない状態だった。
 実は開店日の数ヵ月前まではミッドチルダの治安を維持する為の下積みをしていたのである。
 そんな彼が喫茶店を開くキッカケになった士郎に師事を仰ぎ、どうにかこうにか開店に漕ぎ着けた様な喫茶店に、オリジナルの様な雰囲気など出せる訳がない。
 その点は彼にも承知の上であると同時に、特に負の感情を抱いているから鮮明に覚えている訳ではなかった。

 ただ、その時に見たなのはの表情。彼に向けられた純粋な笑顔が非常に魅力的であり、それが喫茶店を開こうと思った本当の理由だったからである。

 それから幾年が経過した現在。
 当然ながら喫茶 「翠屋」 との年季の差は埋まらない。
 しかし彼の喫茶店の基礎は出来上がりつつある。
 なのはは、今の彼の喫茶店を見て何て答えるだろう?
 彼女が数年前の何気ない一言を覚えているとは思えない。
 しかし仮に覚えているなら、あの時と同じだろうか? 少しは変化しているだろうか?
 彼はそんなことを胸に抱いていた。
 とは言え、聞きたいとは思っていない。聞こうとも思っていない。
 ただ、どうなのだろうと思うだけなのだ。 
 そんな特に待ち望んではいなかった彼の元へ――欲しかった答えをくれたのが、なのはの娘であるヴィヴィオだったことに彼は嬉しく思っていたのである。
 血の繋がりはなくとも親子は親子。同じ環境にいれば自然と似てくるものだ。
 斯く言う彼がそうである。
 彼はヴィヴィオを見て、出会った頃のなのはの雰囲気を感じていた。だから、なのはの雰囲気を感じているヴィヴィオに言ってもらえることが嬉しかった。
 勿論、それが嬉しかったからと言う訳でもないが、ヴィヴィオや彼女の友人達とも懇意に接していた。
 そんな経緯を経て、トリルから異世界の話を受けたはやてから、なのはの元へ来た話だったのだろう。

☆★☆

 ヴィヴィオ達ミッドチルダからの来訪者の紹介が終わると――今度はホスト側として、ミルヒが笑顔を浮かべてシンクとエクレとリコの紹介を始める。
 ミルヒとエクレとリコは、その外見――3人とも獣耳と尻尾を生やしている。つまり全員がフロニャルドの人達であることをヴィヴィオ達は知った。
 とは言え、国によって獣耳と尻尾は見た目的に違うようなのだ。
 ミルヒ達の住まうビスコッティ共和国は――差し詰め、地球で言うところの犬耳と尻尾なのだと思う。
 だがシンクは彼女達とは違い、外見的に自分達と同じように見えた。
 そもそもトリルとの知り合いであったことから多少は理解していたのだが、彼は地球の――日本人の父とイギリス人の母を持つ、イギリス国籍で日本在住であるハーフの少年だと言うことを知らされる。
 日本は母であるなのはの生まれた国。イギリスはグレアム氏の生まれた国やトリルの育った国の為、詳しくはないが2つの国のことを知っているヴィヴィオ。
 そんな彼の紹介を、彼女は先日のなのはとの会話を思い出して、心の中で吹き出し笑いをしながら聞いていたのであった。

○●○

「そうなんだ? それで――」

 トリルが元気なことを確認したヴィヴィオは、聞きたかった部分を聞く為に相槌を打つや否や、言葉を繋げていた。それはまるで――ノックもせずに入ってきた母親の言葉に驚きも怒りもせず、ごく自然と言葉を返していた時のように何も疑問を持たずに、彼の話を棚上げして先を促していたのだ。
 とは言え、元気だと確認できれば彼のことなど別にどうでも良いと言うことではない。
 当然、だから存在を忘れていたかのように、突然思い出して付け足した訳でもないのである。
 ただ彼女にとって、もっと知りたい部分が存在したから言葉を繋げたのであった。
 元より、彼のことなら自分でも知ることができる。彼自身の話なら自分で後で連絡をすれば済む話なのだ。
 しかし、彼女が話してくれたことは彼女が話を進めなければ何も始まらない。
 単純に話の続きを心待ちにしている読書家の彼女らしい理由なのであった。

 そう、彼女は好奇心旺盛な初等科4年生。
 勿論、初等科4年生全員が好奇心旺盛な訳ではないのだが、彼女は――
「自分が何をしたいのか、何が出来るのかもわからないから今は色々やってみる」
 そう言う想いを抱き、ミッドチルダで流行している格闘技・ストライクアーツを始めた。
 そして今では、初等科1年生の頃からの親友であるコロナ・ティミル。
 初等科3年の最後の頃に無限書庫で出会い、親友となったリオ・ウェズリー。
 彼女達3人で、ヴィヴィオの古い友人であるノーヴェ・ナカジマから指南を受けていた。
 そして、こちらも古い友人である――無限書庫の司書長を務めているユーノ・スクライアとの縁で、無限書庫へも頻繁に通っていた。
 その影響なのかは定かではないが、本を読むのが好きな女の子。本好きが高じて、無限書庫司書の資格を有するほどであった。

 きっと、そう――本を読んでいる内に自分の知識を蓄えていく喜びを覚えていたのだろう。新しいことを沢山吸収したいと言う意欲を持つようになったのかも知れない。
 そんな気持ちの表れからか、自分の知らない異世界へ行ったことのある人が『知人の知人』にいることに新しい知識の吸収出来るチャンスだと感じて舞い上がっていたのだろう。
 ――もしも近くに住んでいるなら話を聞ける機会も多いかな?
 ――年齢が近いなら友達になってもらえるかな?
 そんな淡い願望に似た感情をなのはに投げ掛けたくて聞こうとしたのだが、直後に返ってきた答えは彼女の想像を越えていた答えだったのである。

 実は、なのはの言う異世界とはヴィヴィオ達の住むミッドチルダから見て言っている言葉ではなかった。
 彼女の故郷である時空管理局・管理外世界。現地惑星名称・地球。
 つまり、我々の住むこの星である。
 そう、彼女は地球から異世界へ飛んだ話をしていたのだった。
 しかし、ヴィヴィオはミッドチルダの人だと思っている。この話の流れでは他の地域を考える必要があるとは思えない。彼女は、そう感じていたのだった。
 だから、彼女は普通にミッドチルダの――

「どこに住んでる人?」

 探究心を前面に押し出したような、嬉々とした表情で主語を省略して聞いてみたのだが、自然に返ってきた――

「イギリスだよ?」
「…………。……?」

 その言葉の意味が一瞬理解できずに固まった表情を浮かべるヴィヴィオ。即座に思考の軌道修正を済ませて言葉の意味を理解すると、今度は疑問の表情を浮かべてなのはを見つめていたのだった。
 
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