FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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サイレントにらめっこ
前書き
今回はちょっと時間がかかりましたね。
なかなか話が進められなくて・・・苦労しました。
シリルside
ゲームが終了したため、広場に出現していた迷路の壁が消えていく。全体が見渡せるようになると、中央に近い場所で対照的な四人の姿が見えた。
「ごめん、みんな・・・」
「うぅっ・・・」
あと一歩のところで勝利を逃してしまったがためにショックを隠しきれない様子の二人の少女。でも、最後のは仕方がなかったことだと思う。
ソフィアの狙いはすごくよかった。トビーさんを追いかけていくフリをして後ろから付いてくるであろうウェンディの数字を覗く。完璧に思えたはずの作戦だったが、なぜかユウカさんには通じず、それどころか逆手に取られてしまったのがこの結果だ。
「気にしないで、ソフィア、ウェンディ」
「うん、二人はよくやったよ」
ユウカさんが偶然とはいえ判断が良すぎた。ベストを尽くしてくれた二人を責めることなど、俺たちには一切資格がない。
「俺がタヌキじゃなければ・・・」
落ち込む二人にシンクロするようにまだ着ぐるみのことを引きずっている金髪の少年に冷たい視線を向ける。はっきり言うけど、例え彼の着ぐるみがタヌキじゃなくて動きやすいものであったとしても、今回のゲームではユウカさんのポイント以外にはなれなかったと思う。まさかあんなタイミングでソフィアに呼ばれるとは思わなかっただろうし、気にしすぎもよくないんじゃないかな?
「ほら、気にしないの」
「イタタタタッ!!シェリアソフィアの扱いひどすぎっ!!」
慰めても暗い表情をしていたソフィアの頬を引っ張って無理矢理に笑顔を作ろうとするシェリア。ただ、あまりにも頬を強く引っ張りすぎていたようでソフィアはかなり怒っていたけど。
「でも、かなりピンチだよね?」
「それは否定できないね・・・」
広場にセッティングされた魔水晶ビジョンを見上げる。今までのゲームの流れからもわかるように、1対2でリオンさんたちがリードしていることが映し出されている。
「しかも向こうで残ってるのが・・・」
「あの二人だもんね」
魔水晶ビジョンから敵である五人へと視線を映す。相手で残っているのはリオンさんとカグラさんというフィオーレでも有数なギルドの中で1、2の実力を持つ魔導士だ。こちらもそれなりの面子を残してはいるけど、正直まともに戦ったら勝ち目が薄い。競技にもよるだろうけど、芸術系だと造形魔導士であるリオンさんが有利だし、バトル系で俺とカグラさんが当たったらそれだけで詰みだ。より慎重にプレイヤーを選んでいかなくちゃいけない。
「リオンくん」
「??」
一人で次のゲームでの心構えをしていると、突然レオンが離れた場所にいる従兄へと声をかける。名前を呼ばれた青年は訝しげな表情を浮かべながらこちらへと顔を向ける。
「次のゲーム俺が出るから、逃げるなよ」
「「「「ブフゥ!!」」」」
慎重に選ぼうと思っていた矢先にレオンの突然のプレイヤー出場宣言。彼が何を考えているのか一切わからない俺たちは驚きのあまり吹き出してしまった。
「フッ、いいだろ。受けてやる」
それを聞いたリオンさんはニヤリと笑みを浮かべてその挑戦を受ける。だがこれにはもちろん俺たちは大慌てだ。
「ちょっとレオン!!」
「何バカなこと言ってるの!?」
幼馴染みの肩を掴む少女とその少女に引っ張られていた頬を赤くしているセクハラっ娘が詰め寄る。
「まだゲームも決まってないんだよ?」
「いくらなんでもそれはダメだよ」
恐ろしい形相で掴みかかる少女たちの後ろから冷静に少年へと声をかける。四人から迫られているレオンはビビっているのかと思ったが、一切気にした様子など見受けられないほどに飄々としていた。
「いいんだよ、これぐらいの賭けに出ないと」
「賭け?」
彼の言葉に首をかしげる。一体何が賭けだというのだろうか?
「細かいゲームはリオンくんに有利だけど、体を動かすものなら俺の方が有利なはず。先にプレイヤーを決めてしまえば、ゲームがどれだけ不利でも出てこないわけにはいかないからね」
どっちに得意なゲームになるかの賭けをレオンは狙っていたらしく、不敵な笑みを浮かべる。
「でも、それならレオンじゃなくてもよかったんじゃ・・・」
不安そうな表情でなぜか俺とレオンの顔を交互に見る赤紫髪の少女。なんだ?彼女は何がいいたいんだ?俺が最後じゃ不安だというのか?
「シリルじゃリオンくんにもカグラさんにもケンカ吹っ掛けられないだろ?」
「それは言えてるね」
レオンのもっともな意見にソフィアが賛同する。レオンはリオンさんと従兄だからそれなりにタメ口でもいいけど、俺はそういうのはあまりできない。年上の人にさっきの彼のようなことなんか絶対に言えないんだよなぁ。
「それに・・・」
レオンが言った理由に納得しかけていた四人だったが、まだ他にも理由があったようなのでそちらに耳を傾ける。
「シリルの勝負強さなら、最終戦は十分任せられるよ」
「!!」
無表情のまま親指を立ててこちらに向けてくる金髪の少年。一度拳を交えたことがあるからこそ与えてくれた信頼に、最初は戸惑ったが、すぐにやる気へと変わりうなずいて返す。
「でもレオンが負けたらそこで終わっちゃうよ?」
「大丈夫」
レオンの話を聞いても不安さがなくならないシェリアがそう言うと、レオンはこちらに向けていた視線を彼女の方に移す。
「例えゲームが造形魔法勝負だとしても、必ず勝ってやる」
胸に手を当て、いつになく真剣な表情を見せる氷の神。キリッとした顔に女性陣はというと・・・
「ヤバイ、カッコいい/////」
「ちょっと見直したよ」
「惚れてもいいかも(笑)」
惚れ惚れと見とれてしまっていた。てかウェンディには俺がいるんだけど、どうリアクションすればよいのだろうか?「浮気かっ!!」って突っ込めばいいのかな?
『それでは!!第四戦のゲーム選択に移ります』
すでに両チームともプレイヤーになる二人が一歩前に出て魔水晶ビジョンを見つめている。女の子三人はいまだにレオンに惚れ惚れしていたけど、俺は彼とともに勝敗の大きな鍵を握るゲームが何になるのかを凝視する。
「できることならレオンに有利なゲームに・・・」
両手を握り合わせて神頼み。あまり頭を使わずに、体をメインとして使うゲームならば、彼の右に出るものなどいやしない。逆に、予選のような絵を見て答えるようなものだと、レオンは芸術性があるのか微妙だから敗北は必須。ゲームの内容だけでほとんど勝敗が決してしまう。
ピピピピピ
高速で候補の競技が切り替わり切り替わりビジョンに表示されていく。ようやく正気を取り戻した少女たちもそれを真剣な眼差しで見つめている。
やがて、速度が遅くなっていき、そろそろ競技が決定する時が来る。怖くなってきて思わず目を閉じるウェンディとシェリア。俺とレオン、そしてソフィアは口を真一文字に閉じてただじっとその時を待つ。
ピッ
音を立てて動かなくなる魔水晶ビジョン。最後のゲームになるかもしれないとあって、見ている人たちすべてがそれをただ静かに覗き込んでいた。
《サイレントにらめっこ》
「「「「「!?」」」」」
だが、予想外な競技名を前にした瞬間、張り詰めていた緊張感が一瞬のうちに砕け散った。
『第四戦のゲームは《サイレントにらめっこ》に決定致しました!!』
「「・・・」」
先程までと変わらぬ元気な声で競技名を高らかに宣言する司会者に対し、表情一つ変えずにただ立ち尽くす二人のバスティアの姿は、まさしく唖然としているという言葉が似合っていた。
チラッ
さりげなくこちらの様子を伺おうと軽く視線を向けるレオン。これに俺とウェンディは何も言うことができない。だってこの二人のにらめっこなんて、シュールすぎて笑うに笑えないもん。
「例えゲームが造形魔法勝負だとしても、必ず勝ってやる」
「レオン・・・!!」
哀れみの視線を送ることしかできない俺たちに対し、ソフィアとシェリアは茶化すように先程の彼の言葉を物真似していた。いや、真似してたのはソフィアだけで、シェリアは彼女のキリッとした顔に見とれている役をしていた。
『両チームプレイヤーは前にお願いします!!』
悲惨な戦いが繰り広げられそうな気もするが、あそこまで堂々と勝負を宣言してしまった手前、両者ともに引くことが許されずに司会者の元へと歩み寄っていく。
「レオン!!」
顔がひきつっている少年の名前を叫ぶと、彼は立ち止まりこちらを振り向いた。
その彼に俺は親指を立ててその手を突き出す。それを受けて少年もまだひきつっている顔のまま、同じようなポーズで返事をしてくれた。
『それでは、《サイレントにらめっこ》の準備に移らせていただきます』
司会者がそう言うと、レオンとリオンさんの前に椅子がそれぞれ一つずつ、その間に仕切るかのような長いテーブルが姿を現した。
「ん?」
「なんだ?」
にらめっこなので互いに見つめ合えるようにさえなっていればいいのでこれで準備完了・・・とはならない。彼らの真後ろに何やらプレハブのようなものが出現する。
『準備が整いました!!プレイヤーの二人はそれぞれ中央の椅子に、サブの皆さんはそれぞれのプレイヤーの後ろにある準備室に移動願います』
「準備室?」
にらめっことは到底関係なさそうな名前に首をかしげる。一体何を準備するのか予測がつかないが、とりあえずはと言われるがままに準備室へと移動していく。
「あ!!中から外の様子が見えるよ」
「ホントだ!!」
外から見たときは壁のないプレハブにしか見えなかったけど、中に入ると不思議なことに、ちゃんとレオンたちの様子を見通すことができる。これも魔法の力か?
「え?フツーにマジックミラー的な奴じゃないの?」
「「「・・・」」」
見たこともない現象に感動して窓?にへばりついていた俺たちに対し、そっけなくソフィアが現実を話してしまう。なんか夢も何もなくなっちゃったな、今回の・・・
『それではルール説明をさせていただきます。プレイヤーの二人には、にらめっこで勝負をしてもらいます』
それは知ってるよ!!と突っ込みたい衝動を飲み込んで続きを聞くために耳を傾ける。
『基本的には何をしていただいてもよろしいですが、プレイヤー同士の接触は禁止です。中央にあるテーブルから一部でも体が越えた時点でそのプレイヤーの負けとなります』
つまり二人が互いに面白い顔をして相手を笑わせるということ。だけど、そう考えるとやはり悲惨な未来しか見えない。この二人のイメージが大きく崩れるのは言うまでもないだろう。
『プレイヤーが笑ったかどうかはテーブルに付属されているマイクより、30db以上の音が入ると、例え笑っていなかったとしても敗北です』
にらめっこっていうよりどれだけ冷静さを保てるかのゲームって感じかな?怒らせて席を立たせてその音で勝敗を決めることも出来るだろうし。
『そして、これはにらめっこですのでプレイヤーにはしっかりと見つめ合っていただきます。敵プレイヤーから目を離しますと、その分はロスタイムとして加算されます。勝敗が決した後、ロスタイムで音を立てると強制敗戦になります』
例として魔水晶ビジョンに図が映し出される。プレイヤーAが3秒目を離すと、そのプレイヤーは3秒のロスタイムを受けることになる。そこから対戦相手のプレイヤーBが10秒目を離すと、プレイヤーAの3秒のロスタイムがなくなり、プレイヤーBに差し引き7秒のロスタイムが渡される。
「最初のにらめっこで勝ってもロスタイムで笑ったらダメってこと?」
『はい。その通りです』
ソフィアが疑問点を確認すると司会者はそれを肯定する。目を離さなければ先に音を立てていたって判定されるってことかな?それは注意しなければいけないな。
『サブの皆さんにはプレイヤーのアシスタントをしてもらいます。準備室には様々な小道具がありますので、それを使用して敵プレイヤーを笑わせることもできます』
「できます?」
笑わせてもらいますじゃなくて笑わせることもできる、という言い回しに首をかしげる。それには隣にいたシェリアが答えてくれた。
「何もしないのも手段ってことじゃない?リオンを笑わせようとしてレオンが笑っちゃったら意味ないし」
「「なるほど」」
彼女の説明に納得する俺とウェンディ。簡単に言うと、敵プレイヤーに触れずに音を立たせればいいってことだな?分かりやすくてありがたい。
『サブも音を立ててはいけないのか?』
『いいえ。マイクが拾うのはプレイヤーの音のみです。サブの皆さんは音を立てても何もないのでご安心ください』
カグラさんの声だと思われる問いに司会者が答える。リオンさんが精神的に乱れることを言って揺さぶるのもできるな。
『その他、皆さんから質問はありますか?』
『ない』
『ないよ」
各チームを代表するようにリオンさんとレオンが返事する。今までのゲームに比べれば単純明快だし、別段困ることもないな。
『それでは!!第四戦《サイレントにらめっこ》を開始します!!
笑っちゃダメよあっぷっぷ』
お決まりの台詞とともに開始された二人の男の戦い。一体どんなゲームになるのか、俺には不安しかないんだけど・・・大丈夫かな?
後書き
いかがだったでしょうか?
レオンとリオンによるにらめっこ対決。何か面白い顔とかの絵を描けたらいいんだけど、私には絵心がないのでここでも全て文章で行きます。その辺はご了承のほどよろしくお願いします。
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