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Track 1 両手を広げて
  活動日誌3 のーぶらんど・がーるず! 2

 たぶん、あのままだったら私達は何も変わらなかったのかも知れない――どちらも平行線を辿(たど)っていたのだから。
 きっと何かの拍子でバレても同じ状態が続いていたんだろう。 

 そんな壁を壊してくれたのは、お姉ちゃんだった。
 だって、クラスメートの前で言われてしまえば(かく)す必要がなくなる。みんなだってバレているのに遠慮はしないだろうしね。
 うん。やっぱり、お姉ちゃんには敵わないな?
 
 そして――
 気さくで話やすくて、親身になって話を聞いてくれる――現生徒会長にして μ's のリーダー。それは、お姉ちゃんにとって美徳な点だと思う。
 でもそれ以上に――
 その場で立ち尽くして踏み出せない誰かに気づいて――その人が見たことのない場所へ連れ出してあげる! 
 それが、お姉ちゃんの最大の美徳だったんだ。

 お姉ちゃんはきっと――
 もう、無意識に気づいて最良の方法を実行できるんじゃないかな? 
 ――それが去年1年間の成長の(あかし)
 ううん――ただ純粋に思ったことをそのまま実行して、結果がお姉ちゃんに付いてきた! みたいな感じなのかも?
 とにかく、お姉ちゃん、ありがとう。
 
 私はクラスメートと友達になれた瞬間、その場にいないお姉ちゃんに心の中でお礼を告げて、目の前に広がる景色を眺めていたのだった。

♪♪♪

「高坂 雪穂の姉の高坂 穂乃果です!」

 お姉ちゃんが言い切ったあと、クラスメートは普通に受け止めつつ拍手をしていた。
 えっ? そこ拍手するとこ? まぁ、何となく拍手をしたくなるって気持ちは理解できるんだけど。

「ありがとう! ……さて、雪穂? 亜里沙ちゃん?」
「……何よ?」
「は、はいっ!」

 お姉ちゃんは、拍手をするクラスメート達に笑顔を振りまいてお礼を述べると――私達に向き合い、声をかける。
 私はぶっきらぼうに、亜里沙は緊張した風に返答する。
 そんな2人を見ながら、満面の笑みを浮かべて―― 

「部活行くよ! 部室まで案内するから、ついておいで!」

 そう言ってきたのだった。
 あのねー? お姉ちゃんって一応、この学院の生徒会長様なんだよね?
 と言うより、2年間この学院に通ってきたんだよね?
 まぁ、お姉ちゃんの場合――部活を設立した様なものだから、新規部活申請しかしていないんだろうけど?

 私が入部届を放課後に提出することは昨日話してある――つまりは、まだ入部届は手元にあると言うこと。
 きっと、部活経験者の海未さんなら知っていること――いや、ことりさんだって知っているだろう。この学院ではまず先にやらなければいけない(・・・・・・・・・・)ことがあることを。

♪♪♪

 国立音ノ木坂学院の部活動には、他の学校とは少し(こと)なる形式の入部届が(もち)いられてる。
 いや、他の学校は知らないからわかんないんだけど、ね?

 とは言え、見た目的には何も変わらないのだと思う。
 普通にクラス、氏名、入部希望の部活名。
 それだけを記入する枠が存在するだけの普通の小さな用紙。
 だけどそれが2枚綴りで渡されるのだった。もちろん転写(てんしゃ)なんてされない普通の用紙がホッチキスで()じてあるだけの用紙。
 つまり、2枚とも記入をしなくてはいけないのだった。
 でも、これにはちゃんとした理由がある。
 
 そもそも、この2枚綴りを綴じているのは教師や事務員ではない。ましてや、外部の人達でもなかった。
 この2枚綴りの用紙を綴じているのは――去年の卒業生の先輩達だったのだ。

 これは、毎年の通例行事(つうれいぎょうじ)なのだと言う。
 その年の卒業生達全員が卒業式の前日に集まり――教室で先生から配られる、入部届が印刷された用紙を綴じる。
 卒業生全員に対して新入生分だから、それほどの作業でもない。それに、別に学院側が面倒だからと押し付けている訳でもない。
 
 これは本人達の意思や(たく)した想いなのだと言う。
 自分達はもうこの場所(・・・・)にはいない。だけど自分達が大好きだったこの場所で――新入生達が自分達の居場所を見つけて楽しんで大好きだって思ってほしい。そんな願いを込めて綴じる。
 その場に存在しなくても、自分達は此処にいる。
 そんな私達との繋がりを持っていられる為。時間を越えて私達との絆を持ち続けていきたいから、卒業生達は望んでおこなっているのだと。

 この話は入学式を終えて教室に戻ってきた時に、先生の口から伝えられた話。
 繋がる想い、託された時間、次へと繋げる意味。
 たぶん、今年度の新入生には誰よりもその意味(・・・・)が深く感じられているだろう。
 そんな託された想いに、私達は自分達の居場所を決めて希望の部活を書き(しる)す――だから2枚綴りになっているんだと思う。
 勢いやノリで決めて書いた1枚目――もちろん、ちゃんと決めているんだろうけど。
 2枚目を書く時点でキチンと自分の心と向き合えるように――自分の気持ちを再確認する為に、同じことを書くのだろう。そんな気がするのだった。

 そんな内面の意味もあるのだけど、当然外面の理由だって存在する。
 それが――

「って言うかさ? 私達、先に職員室(・・・)に寄るんだけど?」
「え? ……あーっ! うん、そうだよね? ……ごめんね?」

 私の言った『職員室に寄って』と言うのは、先に担任の先生へ入部届の1枚目を提出することだった。
 お姉ちゃんは私の言葉に一瞬戸惑(とまど)ったけど、すぐに気づいて苦笑いを浮かべて謝罪した。
 そう、入部届の1枚目は担任の先生へ――2枚目を部活動の部長へ提出する(なら)わしがあるのだった。

 もちろん、これも繋がりの1つなのだろう。
 確かに部活はクラスの管轄外(かんかつがい)だけど、学院生活の一環(いっかん)なのだ。担任の先生は、自分のクラスの生徒が何の部活に入ったのかを知っておく義務がある。
 そこで1枚目を受け取った先生は、名簿の備考欄(びこうらん)に部活の記入をしているのだった。そして2枚目を受け取った部長は、各部活に手渡された名簿に新入部員の名前を書いて、生徒会と部活の顧問へ提出する。

 つまり――
 担任の先生、部活の部長、生徒会――私達が学院で生活する上での(ちか)しい主軸(しゅじく)。全員に把握(はあく)してもらう為なのだった。
 そして、担任の先生に先に提出をしなければいけない理由。
 担任の先生は2枚綴りの1枚目を受け取って、2枚目に承認の判を押す――その判のないものを部長は受け取ってはいけない(・・・・・・・・・・)。そんな規則(きそく)があるからだった。

 もちろん承認の判を押さない先生はいない。ただ判を押すだけ。
 だったら、承認の判なんて特に必要ないのかも知れない。
 でも、これは押すことに意味があるのではない。
 あくまでも部活動は学院生活の一環なのだ。
 確かに部活動は生徒主体で活動しているものではあるけど、だからと言って学院を無視して活動できるものではない。
 そう言う意味での敬意(けいい)礼節(れいせつ)(おも)んじる校風が生み出した通例行事なのだった。

 そして、そんな敬意と礼節を重んじるから転写されない2枚綴りの用紙なのだろう。担任の先生にしろ部活の部長にしろ、目上の人達なのだから。
 キチンと手書きで書くべきだから――手元にある入部届を眺めながらそんなことを思っているのだった。

♪♪♪

「「失礼します!」」 
「……失礼しまーす!」
「「!?」」

 そんな訳で、お姉ちゃんと共に教室を離れた私達は職員室へとたどり着く。
 私と亜里沙は扉を開けて声をかけて中へ入っていく。
 そう、職員室に用があるのは私と亜里沙だけ――のはずなのに!?

 何故か背後から、お姉ちゃんの声がして驚いて振り向くと、微笑みを浮かべながら私達の後ろを歩いてきていた。
 いや? なんで入ってきているのよ? まぁ、無視して先生のところへ行こうっと!

「先生……入部届を持ってきました」
「……あら、やる気ね? ……はい、確かに受け取りました……じゃあ、これね?」
「「ありがとうございました」」

 私達は担任の先生の前まで足を進めると入部届を差し出した。
 先生は私達の入部届を眺めると、微笑みを浮かべて受け取った。
 先生が言った「やる気ね?」とは――実は、この学院の新入生が部活動を決めるのは当分先の話だから。そう、大抵の生徒は部活説明会――そして部活勧誘を受けて決めるものだった。

 もちろん、入学をした時点から生徒としての資格はあるのだから、今入部を決めても問題はない。そんな理由で、私達は先生に頼んで昨日入部届をもらっていた。
 だけど先生も、次の日の放課後に提出するとは思っていなかったんだろう。だから、やる気ね? と言ったんだと思う。
 まぁ、実際に私達はやる気なので微笑みを返しておいたんだけど? なんてね。

 先生は1枚目を切り取り、2枚目に判を押すと私達に手渡してきた。
 それを受け取って、礼を告げる私達。

「……ところで、私の承認がそんなに信用できないのかしら?」
「えっ!? ……そんなことある訳ないじゃないですかー? あはは……」
「……まぁ、いいわ? ――それよりも?」

 手渡した先生は、私達への視線を私達の後ろへ向けながら、背後にいるお姉ちゃんへと言葉を投げかける。突然話を振られたお姉ちゃんは慌てて否定をしていた。
 そんなお姉ちゃんを(なが)めながら、呆れた表情を浮かべていた先生は言葉を繋げるのだった。

「あなた、園田(そのだ)さんに会った?」
「……いえ、会ってませんけど?」
「そう……さっき探していたわよ?」
「えっ? …………」

 お姉ちゃんは先生の言葉を聞いてサーッと血の気が引いていた。まぁ、察しは十分についたんだけど?
 ちなみに先生の言った園田さんとは海未さんの苗字だ。
 つまり、生徒会の仕事を放り出して私のところに来たんだろう。当然海未さんには内緒で。
 
「――そ、そんな訳だから、私は生徒会室に戻るけど部室へは行けるよね? ぶ、部室に行けば花陽ちゃん達が、い、いるからっ! ――じゃ、じゃあね!」

 職員室を出るとお姉ちゃんは捲くし立てるように部室への道を教えると、こんなことを言って足早に去っていくのだった。
 そんな慌てて去っていくお姉ちゃんの後姿を眺めて、見えなくなるのを確認すると――私達は同時に吹き出し笑いをしてしまった。
 とは言え、職員室の前だから慌てて口を抑えて――それでも止まりそうになかったので、私達も部室を目指して足早に職員室を離れるのだった。

♪♪♪

 職員室からアイドル研究部の部室へ歩いている途中――
 教室から職員室へ向かう途中に比べて、とても静かに感じられた。
 それはお姉ちゃんがうるさかった訳でも、元々人通りが少ないからでもない。

 ただ、お姉ちゃんへ向けられていた感嘆の声がなくなっただけ。私達は普通の生徒に過ぎないってことを痛感(つうかん)させられた。
 そうなんだ――
 私達は無名の少女達(・・・・・・)なんだ。
 わかっていたはずだけど、改めてお姉ちゃん達と私達の差を感じた瞬間だったのだ。
 
 だけど、良いんだ!
 お姉ちゃん達だって通ってきた道なんだから!
 今、私達の目の前には高い壁があるんだろう――スクールアイドル μ's と私達の間には、知名度や実力と言う壁が。

 だけど、壊せるんだ!
 だけど、倒せるんだ!

 そう、お姉ちゃんが私達とクラスメートの間の壁を壊してくれたように――私達だって、お姉ちゃん達との間にある壁を壊していくんだ!

 だって、私達の手にはチャンスの前髪(・・・・・・・)があるんだから!
 そう、この入部届がチャンスの前髪。
 いつか奇跡の虹を渡るんだから!!

 私は歩きながら、お姉ちゃん達のアノ曲を心の中で再生する。
 いつか私達も自分達の手で、天高く突き上げられるように――そんな決意を胸に部室を目指して歩いているのだった。 
 

 
後書き
Comments 穂乃果

ぅぅぅぅー。なんで私に回ってくるのー? 真姫ちゃんったら――
「貴方、お姉ちゃんなんでしょ? 見てあげなさいよ!」
って、私の顔にノート押し付けてくるし……。だって、変なこと書かれていたら悲しいじゃん。

でも、渡されたし、読んで返事しないと怒られるから読んだよ?
……ねぇ? 此処に書いたのって本心? 
まぁ、部分的には雪穂だなって思える部分はあるけど……私に関しては違うよね? 
みんなが見るから、書いているんだよね? ……ねぇ、ねぇ? 

……ごめんね、雪穂? 
まさか、そんなに顔を赤らめて涙目になって横向くほど恥ずかしがるなんて。これが本心だったんだね? ありがと、雪穂。
もう、直接聞いたりしないから……此処には、気持ち書いてほしいな? 
これからも、よろしくね。 
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