Three Roses
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第十五話 衰える身体その十一
「無視されてきた」
「都合よくですね」
「子孫を残す為として」
「実に都合よく無視されてきました」
「確かに血は残すべきですが」
「血を残すことは絶対だ」
王もこのことは認めていた。
「王家は絶えてはならない」
「貴族の家も」
「途絶える時は途絶えますが」
「途絶えないに越したことはないですし」
「家というものは」
「だから妻は多い方がいいのだ」
要するに子を産む腹は多いに越したことはない、そうした考えである。
「実際にな、だが」
「その際正室の子と側室の子の間の差別はですか」
「それがあってはならない」
「王はそう言われるのですね」
「マイラを見るとそう思えてきた」
彼女のその閉ざした心をだ、側室の子ということにあまりにもこだわったが故に。
「それはならない、だからだ」
「そのことを変えられますが」
「王が政策として」
「そうされますか」
「諸侯達の反対があるかも知れないが」
それでもと前置きしての言葉だ。
「双方の地位を同じとするか」
「正室の子と側室の子の」
「どちらもですね」
「お二方を同じにされ」
「そしてですか」
「そうだ」
まさにというのだ。
「マイラの心も開きたい、だがそれ以上に思う」
「この国にある正室の子と側室の子の違い」
「その違いを正されますか」
「そうされるのですか」
「家督の継承権は生まれた順にする」
側室の子であろうとも、というのだ。
「まだ遺産相続もだ」
「正室の子と違いをなくす」
「同じととされますか」
「その他のことも平等とする」
母によって違いはつけないというのだ。
「そうしよう」
「それでは」
「その様にされますか」
「是非な、このことはすぐに動こう」
法として定める、王は言い切った。
「その様にな、だがそれよりも前にな」
「マイラ様とマリー様ですね」
「お二方をですね」
「あの二人を何とかしなければならない」
もっと言えばマイラをだ、こう言ってだった。
マイラに内密にであるが勅令を出してマリーに会う様に命じた、そのことはマリーの耳にも入った。耳に入れたのはキャスリング卿だった。
キャスリング卿はマリーにこのことを話してだ、彼女に問うた。
「どう思われますか」
「残念に思います」
これがマリーの返事だった。
「出来ればです」
「勅命が出されるよりもですね」
「はい、その前にです」
まさにというのだ。
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