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嘘をつくから

作者:夢叶
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カッターが皮膚を裂いたのが分かった
それは一瞬のことなどでは無く、刃が入り、抜けるのを感じる程で
ゆっくり、じんわりと血が滲みだした
拭っても止まらず、水で流してもしみるだけだった

何分か前の自分のうかつさを呪った

じんじんじんじんじんじんじんじんじんと
ずくんずくんずくんずくんずくんずくんが

交代をしたり共同で出て来たりしながら、いつまでもそこにいた

あのカッターが傷つけたのは手首なんかじゃなくて親指であったのだけれど
どうしようもなく苦しくなって涙が流れた

何もうまくいかない
自分ばかりがつらい選択を迫られて
毎日を繰り返すことしかできなくて
誰よりも悩んで
楽ばかりしてる彼らより、もっとずっとがんばっているのに

どうして泣くのは、私の方なんだ
足りないの?
そんな事思わなくなるくらいもっと努力しなければいけないの?
何かを羨ましいと思う事が、必死になれていない証拠なの?

友達も、恋愛も、放課後の暇な時間も、夜の安らぎも、朝の光も
全部捨てなきゃ、私は
私は、私だけであっても、他の誰が今を笑って過ごしていても
それをずるいと思っちゃいけない
そういう事なんだろう

そういう事なら
もうこの痛さで分かったから
お願いだから、この涙を止めさせてよ、これじゃまるで

この先の毎日を、恐れてるみたいじゃないか
 
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