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機動戦士ガンダムSEED 終わらない戦争

作者:伊10
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第五話 会敵

無限に広がる暗黒の虚無の世界。煌めく恒星達の光も、広大な宇宙の中ではいっそ弱々しいと表現出来るほど無力だ。

その虚空の中を、青白い光の尾を引きながら突き進む。流線型を多用したそれは、宇宙船―――軍艦だった。改ナスカ級高速戦闘艦、ラヴクラフト。D.I.V.A.セキュリティ社の主力であり、本社だった。





「あ、ジェニー!」

ラヴクラフトのMSデッキ。メカニックマンが行き交うその中で、俺はお目当ての人物を見つけた。

「んー?あ、カムイ!何?」

呼び止めたのは高速戦闘艦ラヴクラフトの御意見番、ジェニー・フェアリスだった。呼び方は『姐さん』にはじまり『姉御』、『お姉様』、『お嬢』、『ジェニー様』等々……。

このラヴクラフトの整備長で、とりわけ整備が難しいジャッジメントの機付長でもある。

そのジェニーを呼び止めたのには当然理由がある。

「補給の進捗は?」

「殆ど済んでるわ。何で?」

「いや………ザクファントム改にブレイズウィザードを、ZEROにバスターストライカーを装備しといてくれ。」

「……マジで?」

「割りとガチだ。」

「………なるほどねぇ。来るんだね?」

「ああ……さっき艦長とクライアントには言ってきたんだが………。」

一瞬、言っていいものかどうか迷うが、まあジェニーなら大丈夫だろう。

「……襲撃犯、コーディネーターだった。」





パイロット控え室では中隊のメンバーが揃っていた。

「隊長、ホントに来るんですか?」

「多分な。」

「隊長の勘は当たりますからね。どう対応します?」

「いつも通りだな。第二小隊でラヴクラフトの直掩。第一小隊で撹乱して隙を見て母艦を落とす。ただ………、」

「………どうかしました?」

「いや、クライアントの意向でな、なるべく撃墜しないようにとの事だ。」

「……ああ、クラインのお嬢ちゃんなら言いそうね。」

「………お前自分の方が年下だって分かってるか?」

パイロットルームに笑いが起こる。警報が鳴ったのは、そのすぐ後だった。





ラヴクラフトの艦橋(ブリッジ)、このラヴクラフトの運用を一手に任された、艦長にしてD.I.V.A.セキュリティ社創設メンバーの一人、ヴィクトール・フォン・レームブルックが、その陸戦隊と言われても納得しそうな巨躯を窮屈そうに艦長席に詰め込んでいる。

「ホワイト・チャーリーに熱源。巡航艦クラスです。α1と認定」

「艦種識別………バルトロメウ級高速戦闘艦です。」

バルトロメウ級はナスカ級の後継艦で、同じく流線型を多用した艦形をしている。後継だけあって速度はナスカ級のそれより上だ。

「α1が加速!射程まであと3分!」

「ラヴクラフトを正対させろ!コンディション・レッド!総員第一戦闘配置!!」

「艦長!α1より通信が入っています!」

「なにぃ?………繋げ!スクリーンに出せ!」

据付けの大型モニタに生真面目そうな軍人が映し出される。

『こちらはザフト所属、ウィルソン隊のハドソンだ。所属、官姓名を名乗られたし!』

「こちらはD.I.V.A.セキュリティ社所属戦闘艦ラヴクラフト。艦長のヴィクトール・フォン・レームブルックだ。貴官は?」

『ウィルソン隊隊長のリチャード・ウィルソンだ。』

いかにも軍人、といった空気を纏う男の眉間には皺が寄っている。なにやら怒りに満ちているようだ。

『諸君らPMC風情がどうしてラクス・クライン議長を誘拐したのかは知らん。要求があるなら聞こう。』

「は?」

ヴィクトールは思わずそう返した。なんでそんな事になっているのか………。

「知らんな、そんな事。」

故に突っぱねた。

『なるほど………ならば臨検に協力して貰おうか。』

「答えはNOだな。」

この艦にはD.I.V.A.セキュリティ社独自の技術も多い。おいそれと部外者、それも専門家を乗せられない。

『仕方がない………実力を持って貴艦を拿捕する。』

「ならばこちらも自衛権を行使するとしよう。」

ヴィクトールは大きく息を吸い、そして、命令を下す。

「MS隊は全機発進。お客さんを歓迎しろ!」 
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