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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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シリルなら・・・

 
前書き
FAIRYGIRLSが連載してたマガジンspecialで最近注目の的になってるDreams。私も小学生くらいの時からお世話になってたんですが・・・なかなかとんでもない展開にしてきましたね。
FAIRYTAILよりもこっちの方が気になって仕方なくなりつつある今日この頃。見たことない人もこれを機にぜひ(笑) 

 
ウェンディside

(えっと・・・今のはトビーさんとユウカさんでいい・・・んだよね?)

犬のような叫びをした後に、シリルと名乗った人物と、それに対して突っ込みを入れていた人物。そのやり取りに覚えがあった私は頭の中で、誰に問いかけるでもなく考えていました。

(こっちとこっちから二人の声が聞こえたから、正解は最初に声をかけてくれたシリルか、レオンのどっちかってことだよね?)

すでに1/4だった確率が1/2まで減らすことができました。私は何もしたわけではないから、喜んでいいのかわからないですけど・・・

(でも・・・ここからが難題・・・だよね)

グッと強く手のひらを握り、意識を高めていきます。二人の言葉の言っていたことを総括すると、シリルがこっち側にいる場合は、レオンがリオンさんで、反対にレオンがいる場合は、シリルがカグラさんってことでいいんだよね?

(なんだか頭がこんがらがりそうですね)

シリルなのかレオンなのか、カグラさんなのかリオンさんなのか、頭の中に色々な名前が出てくるから、どれがどれなのかわからなくなりそうです。

「ふぅ~」

一度落ち着くために深呼吸します。二人とも私から信用を得るために、何を話すべきなのかを考えているので一切口を開きません。その間に私は数回の深呼吸を終え、ようやく落ち着きを取り戻してきました。

「よし!!」

体の前で両手を強く握りしめて、気合いを入れます。私にだってやれるってとこを、みんなに見せるんだから!!



















シリルside

「これで・・・いけるかな?」

ウェンディが気合いを入れ直していた頃、彼女に自分がシリルである裏付けをするための話題を考えていた俺は、なんとかいくつかの候補を絞り出すことができていた。

「ウェンディ、聞こえる?」

長らく待たせてしまったため、機嫌も伺う意味も込めてそんな質問をしてみる。

「うん!!聞こえるよ!!」

しばらく放置してしまったから怒っているかもしれないと懸念していたが、そんな心配は不要だったみたいだ。声をかけられた天竜は、こちらに顔を向け、話を聞く準備はできているように見える。

「シリル・・・でいいんだよね?」
「うん、そうだよ」

俺とリオンさんの変声された声は同じものになっているため、ウェンディは聞こえた方向で人物を聞き分けるしかない。そのため、間違えてはいないかと心配して名前を確認したのだ。

「この間、化猫の宿(ケットシェルター)の跡地に行ったよね?」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)が解散した次の日?」
「そう!!その日!!」

記憶ができる限り正確な日を選び、さらに蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に入る前の記憶を出せばいいと思った俺は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)解散直後の、化猫の宿(ケットシェルター)での話をしようと考えた。

「あの日で一番衝撃受けたことって覚えてる?」

あの日、あの場所に行って思い出を探していた時に、とてつもなく衝撃を与えたことがあった。おそらくウェンディにも深く刻み込まれているはずだ。

「うん!!覚えてる!!」

大きくうなずく少女を見て、少しだけ笑みが溢れた。彼女も俺と同じくショックを受けたことだから、より鮮明に覚えているはずだ。

「たぶん同じこと考えてるだろうから、せーので言おっ!!」
「うん!!行くよ!!」

俺たちは幼い頃から一緒にいるから、互いのこともよくわかっているはず。ここで一致した回答を言えれば、それは俺がシリルである証明になると思うんだ。

「「せーの!!」」
「背が伸びてなかった!!」
「シェリアがギルドに誘ってくれた!!」
「「・・・え?」」

まさかの不一致に互いの口がポカンと開いたまま固まってしまう。いや、シェリアたちが誘いに来てくれたことはもちろん覚えてるよ?でも、衝撃的と言ったら一年近く経ったのに背が伸びてなかったことだと思うんだ?だってこんなにいっぱい食べたり寝たりしてたのに、全く成長してないなんて印象に残るじゃん?それにこれは俺たちしか知らないことだから、絶対に信頼を得られると思ってたのに・・・

「え・・・もしかしてシリルじゃない?」

すると、意見が不一致だったからなのか、俺がシリルじゃないと勘違いをし始めたウェンディ。ってちょっと待て!!

「いやいやいやいや!!むしろこれを知ってる人なんか俺くらいしかいないでしょ!?」

厳密に言えばセシリーとシャルルも知ってるけど、二人はこの大会には参加していないので関係ない。そうなるとあの場にいたのは俺だけなのだから、必然的に俺が俺である証明になると思うんだけど・・・

「ウソです!!シリルがそんなこと大声で言うわけないもん!!」
「!!」

さっきまでさんざん悩んでいた俺の心を読み切っていた天空の巫女は、まさしくその通りのことを述べてくるので反撃ができない。クソッ・・・こんなことなら最初の意志を押し通して、もっと別のことを言うべきだったか・・・

「残念だったね、カグラさん」

一部始終を見ていたリオンさんは、勝利を確信したような笑みを浮かべており、ちょっとイラっとした。
でも、今はそんな感情に流されている場面じゃない!!このままだとウェンディがリオンさんの方に飛んでしまいかねない。そうならないようにするには・・・

「ウェンディ!!」
「は・・・はい!!」

リオンさんがいる方向へと体が向きつつあった彼女の名前を叫ぶ。俺をカグラさんだと思っているのと、不意に名前を呼ばれたことで、ウェンディの返事は緊張感がある丁寧なものになっていた。

「俺を信用できてないならそれでもいい!!でも、そのレオンが本物かどうか、ちゃんと確信を持ってから行動してくれ!!」

リオンさんは自分が一番なりきりやすい人物であるレオンを選択した。確かに彼らはいとこであることもあり、思考も何となく似ているところがある。でも、リオンさんは決してレオンではない。ウェンディがちゃんと質問をぶつければ、必ずボロが出るはず。

(そうすれば、彼女に信じてもらえるチャンスが出てくる・・・!!)

レオンが本物じゃないとなると、ウェンディはもう一度一から候補を選んでいかなければならない。だけど、すでに彼女はトビーさんとユウカさんの配置は頭に入っている。つまり俺とリオンさん、どちらが正解かを見分けることに集中できるんだ。
時間はかかってしまうけど、そこは本物のレオンたちに何とかしてもらうしかない。完全に運勝負になるのが怖いけど、ウェンディならきっと大丈夫。そんな気がする。

「う・・・うん・・・わかりました」

ビクつきながら、一歩こちらから距離を取りながらうなずく少女。俺が突然大声を出したからこうなってしまったのかな?少し冷静さを欠いてしまったのは、悪いことしちゃったな。

(ごめんウェンディ。でも、これもウェンディのためなんだ)

もしこのままリオンさんの方に飛んでしまったら、きっと彼女は気に病んでしまうのが目に見えている。だから多少強引でも、こうするのが一番の得策なんだ。

(問題は、リオンさんがどんなことを言って信用を得ようとしているかだ)

こう言っちゃ悪いけど、リオンさんは自分がレオンと思わせる要因を持ち合わせているようには思えない。それでもレオンになりきったということは何か策があると考えるのが妥当だ。
それがどんなものかは予測しようがない。今はとりあえず、お手並み拝見といこうかな?




















リオンside

シリルとウェンディ、二人の意思疏通がうまくできなかったこともあり、彼女は俺の存在を見定めるためにこちらに体を向ける。

(シリルが失敗したのはいいが・・・どうしたものだろうか)

ウェンディが味方であるシリルをまだ見分けられていないのはチャンスだが、肝心の俺がウェンディを騙せる要素を持ち合わせていない。となるとこちらから主導することができないが、相手から質問をぶつけられるのも答えられるか微妙なところだ。

(それでも・・・)

だが今回は、多少のリスクに目を瞑っても、ウェンディからの質問に回答して答えることにしよう。レオンは他力本願なところもあるし、案外信用を得やすいかもしれん。

















ウェンディside

「レオン?聞こえる?」

たぶんカグラさんだと思われる人物からレオンだと思う方へと体を向き直し、声をかける。

「あ・・・うん、聞こえてるよ」

一瞬、返事がレオンの物じゃないようにも聞こえたけど、気のせいかな?あのシリルが本物だったらこの返事でより疑いながら話せるんだけど、シリルが自分の身長が伸びてなかったなんて言うわけないと思うし、レオンが本物だと思うんだけど・・・もしかして間違ってる?

「今返事咄嗟に変えました?」
「変えてないよ」

少しでも動揺したら、偽物なんじゃないかと思いながら質問していこうと思っていたけど、それを感じさせないほどの堂々とした返事が返ってきました。

「もしかしてレオンじゃないんですか?」
「偽物だったらそれを肯定しないと思うけど?」

その返事を聞いて、やっぱりレオンっぽいかな?と思いました。リオンさんならきっと、「何言ってるの?ウェンディ」みたいなことを言うと思っていたけど、今の返しはレオンがよくやることだと思うので、やっぱりこっちが本物なのかな?

(何かレオンって見極められることはあるかな?)

レオンは基本的に受け身な部分が多い印象があります。だから、向こうから何かを待つのではなく、こちらから彼が彼である要因を見つけていかなければならないと感じていました。しかし・・・

「ウェンディ」

その予想に反し、レオンの方からこちらに声をかけてきました。考えていたことと真逆のことが起きたため、混乱が起きてしまいうまく返事ができませんでした。

「うちに入ってから、魔法学校に行ったの覚えてる?」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に加入してからすぐに、シェリアと一緒に魔法学校に講師として招かれたことがありました。たぶん彼はそのことを言っていると思ったので、うん、と返事をします。

「あの時、俺たちの方見ながら何か話してたけど・・・なんだったの?」

レオンのその言葉に思わずずっこけそうになりました。本来なら質問するのは私であって、彼は受け答えをするはずなのに・・・立場が逆転していることに動揺を隠しきれません。

(落ち着いて、落ち着いて)

数回深く深呼吸を行い、気持ちを落ち着かせようとします。レオンは天然なところもあるから、こんな風におかしなことを言うこともあります。だから慌てちゃダメ!!冷静に行かないと・・・ね。

「シェリアと一緒にね、二人は仲いいなぁって」

ウソ。本当は二人がカップルに見えてしまい、内心ドキドキしながら二人の様子を見送ってたんだよ。

(あれ?)

答えてから、いくつか違和感を覚えた私は固まって動けなくなります。理由は、彼がレオンなのかの判断が難しいものになってきたからです。
私とシェリアがシリルとレオンを見ていたのは、たぶん彼らしか知らないこと。本当だったらこれが決定打になるんだけど、その前の一言が引っ掛かってしょうがありません。

『うちに入ってから魔法学校に行ったの覚えてる?』

うち=蛇姫の鱗(ラミアスケイル)なのは間違いありません。だから当初は全く気にしていませんでしたが、今考えるとこれはおかしいのではないでしょうか?

(レオンって、“うち”なんて言うっけ?)

レオンは普段は多少はしょりながら会話するところがある。だから魔法学校に行った時のことを話したいなら、『魔法学校に行ったの覚えてる?』とか、『この間――――』とかの略仕方をしていたんじゃないかな?

もちろん“うち”って言うこともあるけど、少しイントネーションが違ったような気もするし・・・違和感が拭えない。

『そのレオンが本物かどうか、確信を持ってから行動してくれ!!』

そう思うと、あの言葉がシリルが言っていたようにも聞こえてくる。必死な感じの声が、まさしく彼のような気がしてくるし・・・

「うぅ・・・どうしよう・・・」

二人ともシリルを名乗っていて、どちらが本物か見分けるのであれば大丈夫そうな気がするんだけど、片方がレオンとなると状況が変わってきちゃう・・・だってレオンと関わることが、あまり多くないから。

(だったら・・・)

私はどうするのか、一つの選択をしました。もしこれが本当のシリルなら・・・きっと答えられるはず・・・



















シリルside

「シリル、レオン」

リオンさんと話をしていたウェンディは、俺とリオンさん二人に話しかけてくる。

「何?」
「どうしたの?」

普段通りに返事する俺とレオンに合わせた返事をするリオンさん。その声を聞いた彼女は、とある質問をぶつけてきた。

「本物の二人だったら答えられると思うんだけど・・・私の一番苦手な食べ物ってな~んだ」
「「!?」」

ここに来て彼女からどちらが真実を語っているかを見極めるためにと質問が飛んできた。

(ウェンディが苦手な食べ物って・・・梅干し・・・でいいんだよね?)

ウェンディは酸っぱいものが苦手だ。その中でも特に苦手なのは梅干し。俺も梅干しが苦手だから、彼女が苦手な理由がよくわかるんだよね。

(あれ?でも確かレオンって・・・)

そこで一つ思ったのだが、レオンはウェンディが梅干しを苦手なことを知ってるんだっけ?リオンさんはグレイさんから聞いたりはしてるかもしれないけど、レオンはそんなこと知るタイミングはなかったと思うんだけど・・・

チラッとリオンさんの方を向くと、彼は自身の記憶を懸命に掘り起こしている最中だったようで、まだ悩んでいるようだった。

(リオンさんがなんて答えても関係ない!!俺が先に答えてしまえば・・・)

そこまで来てから、俺はある考えが頭の中を過った。それは・・・

(ウェンディの嫌いなものを暴露するなんて、いいのかな?)

向こうから聞かれたこととはいえ、わずかながらに良心が痛んでくる。でも、彼女に伝えないと信じてもらえないし・・・行くしかない!!
そう思い、息を吸い込み彼女に聞こえるようにと声を張り上げる。

「「梅干し!!」」

だが、それは隣にいるリオンさんと全くの同じタイミングになってしまった。

(やっぱりリオンさんも知ってた。しかもタイミングが被ってしまうなんて・・・)

一瞬だけ銀髪の青年に視線を向けた後、すぐに目の前の少女にそれを移す。彼女はこれを一体どう判断するんだ?

「わかった、ありがとう」

心配しながら様子を伺っていると、彼女はわずかに口元を緩めていた。

(正解がわかったのか?)

一筋の汗が頬を伝い、下へとポトリと落ちる。彼女が一体どうやって正解を見出だしたのかわからない俺は、ただこの後の少女の行動に見入っている。

クルッ

回答して間髪置かずにある方向へと一直線に歩いてくる天空の少女。彼女は点字の上をゆっくりと歩くと、ステージの際から前に向かって思いっきりジャンプする。

タンッ

ある離れ島へと着地した少女。彼女は正解なのかを確認するため、付けていたアイマスクを外し、ゆっくりと目を開けた。

「わぁ!!やっぱりシリルだったんだ!!」

開けられた瞳に映った人物を見て、嬉しそうに頬を緩めるウェンディ。彼女が飛んだその場所は、俺が立っていたステージだった。

「な・・・なんで?」

一時は彼女から偽物と思われていたために、なんでウェンディが俺の元へと飛んできたのかわからなかった。リオンさんも絶対自分の元に飛んでくると思っていたようで、面を食らった顔をしている。

「カグラさんは私の苦手なものわかんないし。それに・・・」

モジモジと体を揺すりながら言葉を詰まらせている。一体何が決定打になったのかわからなかった俺は、黙って彼女の言葉を待つことにした。

「シリルならきっと、躊躇って一拍置くと思ってたから」

可愛らしい笑みを見せながらそう言った少女に、思わず顔が赤くなる。彼女は俺の思考を完全に読み切っていたらしく、それを判断材料にしていたらしい。

「さすが」

まさかそこまで俺のことをわかっていたとは思っていなかったため、冷静に状況を判断していた彼女の頭を撫で回す。頭を撫でられたウェンディは、気持ちいいのか、目を閉じて、嬉しそうに頬を緩ませていた。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
ウェンディが見事にシリルを見極めてくれました。
やろうとしていた展開とわずかに変わりましたが、やりたいことはやれたのでよしとします。
次は第三試合です。誰と誰の戦いになるかはお楽しみに。 
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