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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十六話 自分も歌ってみてその四

「凄い光景ね」
「黒人の人が浴衣で関西弁で落語をしていることが」
「しかも流暢な関西弁でね」
「彼落研のホープでね」
「そうなの」
「二年生でね」
 一年の時何度か話したことがある、二年になってからはないけれど。けれどすれ違えば最札を交える関係だ。
「気さくでいい人だよ」
「そうなの」
「タンザニアに落語を広めたいらしいよ」
「アフリカに」
「うん、そんなこと言ってたよ」
 一年の時にだ、多分今もだ。
「関西弁でね」
「関西弁の落語を」
「東北じゃ落語は」
「ええ、江戸の言葉よ」 
 つまり東京のというのだ。
「そっちよ」
「やっぱりそうだよね」
「東の方はね」
「江戸の落語だね」
「どうしてもそうなるわ」
「あっちの落語はね」
 どうもだ、関西人から見ると。
「何か違う感じがするね」
「どうしてもよね」
「うん、演目も違うしね」
 上方と江戸ではだ。
「別のものと思う時もあるよ」
「落語でも」
「うん、同じ落語でもね」
「そうなの」
「歌舞伎とかも」
 こちらもとだ、詩織さんは言った。
「違うわよね」
「上方歌舞伎は和事でね」
「江戸は荒事」
「やっぱり違うよね」
「そうよね、それで落語もね」
「違うね」
「こっちに来てそのことにも気付いたわ」
「落語や漫才が違っていて」
「歌舞伎もね」
「そうなんだね」
「それで彼の落語は」
 ンガモ君のそれはというのだ。
「関西ね」
「関西弁でね」
「随分流暢ね」
「彼凄い練習熱心なんだよ」
「そんなになの」
「うん、もう毎日暇があったら練習をしていて」
 落語のそれをだ、落研でも指折りの練習熱心で勉強家でありその落語は落研でも一二を争う位までらしい。
「ネタも随分知ってるよ」
「落語のそれも」
「あれだと」
 それこそだ。
「日本でも立派な落語家になれるよ」
「確かにね」
 友奈さんもンガモ君の落語を観て言う、ンガモ君は殆ど誰も酔っていて潰れている中で落語を続けている。見れば彼自身酔漢の目になっている。
「上手ね」
「うん、あれだけ酔ってもね」
「落語やるなんてね」
「生粋の落語家ね」
「落語は聞かせる為のものだけれど」
 言うまでもなくお客さん達にだ。
「彼は今は酔ってね」
「そのうえでなのね」
「やってるね」
「そうよね」
「もう自然と落語やってるよ」
「いや、凄いわ」
 友奈さんはしみじみとした口調で言った。 
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