八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十六話 自分も歌ってみてその三
僕は歌った、そのリンダリンダを。最後まで勢いに任せて歌ったが。
歌い終わってステージを見るとだ、本当に場は混沌としていた。殆どの人が、生徒も先生もだった。殆ど皆が。
飲んで食べてそれぞれで騒いでだ、ステージ以外でも歌ったり踊ったりしていた。落語や漫才をしている子もいる。
僕を見ているのは詩織さん達だけだった、友奈さんは何時の間にかその詩織さん達のところにいる。そこにだ。
僕は歌い終わって戻った、ステージには誰もいなくなっていた。そのステージを後にしてだ。
自分の場所に戻るとだ、詩織さん達に聞いた。
「どうだった、僕の歌」
「下手じゃなかったわ」
「そうだったんだ」
「ええ、全然ね」
「だといいけれど」
「そんなに自信が無い様な」
そこまではというのだ。
「そんな下手な歌じゃなかったわ」
「だといいけれど」
「音程外してないし」
香織さんも言う。
「歌の感じも掴んでて」
「下手じゃなかったんだ」
「普通に皆の前で歌っても」
それでもというのだ。
「遜色ないわよ」
「私もそう思うわ」
最後に友奈さんが言ってきた。
「あれなら何の問題もないわよ」
「三人共そう言ってくれるね」
「もっと言えばお世辞じゃないわよ」
友奈さんはこのことも断った。
「間違ってもね」
「じゃあ本当に僕の歌普通なんだ」
「ええ、普通に聴けるわ」
「音痴でもなくて」
「テノールの声もよかったし」
やっぱり僕の声はテノールだった。
「普通にね」
「ううん、けれどね」
「人前で歌うことはなの」
「好きじゃないね」
抵抗があるとだ、僕は三人に言った。
「どうしてもね」
「それが好きじゃないと」
「もうね」
「私達も言うことはないわね」
「うん、こういうのってそうした勇気がいるよね」
人前に出て何かをすること自体にだ、ちなみに僕は人前で話をしたりとかそうしたことはまだ出来る。だが歌うことはなのだ。
「どうしても」
「人の視線が気になって」
「そうなんだ」
こう香織さんに答えた。
「僕としてはね」
「そうなの」
「そう、だからね」
「これからも」
「人前で歌うことはしないかな」
自分で言った。
「歌うなら一人だよ」
「カラオケボックスで一人ね」
「うん」
また香織さんに答えた。
「そっちの方がいいかな」
「まあそれでも」
詩織さんが今度言うことはというと。
「下手じゃないから」
「そのことは覚えておくといいんだ」
「ええ、自信はあった方がいいでしょ」
「うん、人前でしなくても」
「だからね、いいわね」
「歌についてはそう思っておくよ」
「そうね、それと」
僕に話してからだ、詩織さんは。
今のステージの状況を見た、見ればアフリカ系の子が関西弁で落語をしている。タンザニアから着ているンガモ君だ。
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