英雄伝説~光と闇の軌跡~番外編 アリサのお見合い篇
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第7話
~ミシュラム・休憩所~
「さてと……俺は食べ物と飲み物を買って来るからアリサは席を取って置いてくれないか?」
休憩所に到着したリィンは周囲を見回した後アリサに視線を向けて尋ね
「そ、その事なんだけど……今日はお弁当と紅茶を持ってきたから……………あ、勿論リィンの分も作ってあるわよ!」
「そうなのか?じゃあお言葉に甘えてご馳走になるよ。」
頬を赤らめて言ったアリサの話を聞いて頷いた後、アリサと共に空いているテーブルの傍にある椅子に座った。
「え、えっと……はい、これが今日作って来たお弁当よ……………」
椅子に座ったアリサは頬を赤らめてバッグからランチボックスと水筒を出し、ランチボックスの蓋を開けた。
「へえ………サンドイッチか。中には何が挟まれているんだ?」
ランチボックスの中に入っているサンドイッチを見たリィンは目を丸くした後尋ね
「ハ、ハンバーグよ。後は野菜を少々。」
「そっか。じゃあ遠慮なく頂くよ。」
アリサの答えを聞いたリィンはランチボックスに手を伸ばそうとした。するとその時アリサはリィンが手を伸ばすより早く自分の手でサンドイッチを掴んでリィンの前に差し出した。
「へ………い、一体何を?」
「そ、その………私が食べさせてあげるわ。」
自分の行動に呆けているリィンにアリサは真っ赤にした顔で呟き
「ええっ!?い、いいって!自分で食べるって!」
アリサの言葉を聞いたリィンは驚いた後真っ赤にした顔でアリサの申し出を断ろうとした。
「………やっぱり嫌かしら……?」
「うぐっ……………(その目は卑怯だろ………)」
しかし真っ赤にした顔で上目づかいで自分を見つめるアリサを見たリィンは表情を引き攣らせ
「ハア……………わかったよ………でも一口目だけだからな………」
疲れた表情で溜息を吐いて言った。
「!!う、うん……!」
リィンの答えを聞いたアリサは真っ赤にした顔で嬉しそうな表情で頷き
「はい、あ~ん…………………」
真っ赤にした顔でリィンを見つめながら手に持ったサンドイッチを差し出し
「あ……む……………」
リィンはアリサが差し出したサンドイッチを食べた。
「ど、どう………?」
サンドイッチを食べているリィンをアリサは不安そうな表情で見つめながら尋ね
「………うん、美味しいよ。ハンバーグ自体も美味しい上野菜のチョイスもいいし、ソースもちょうどいい味だよ。」
「!!そ、そう………一杯作ってあるからもっと食べていいからね……!」
リィンの答えを聞き、嬉しそうな表情で言った。
「まあまあまあ♪」
一方リィン達からある程度の距離を取り、気配を完全に隠し、アリサのバッグに密かに取り付けた盗聴器で二人の会話を聞いているシャロンはリィン達の様子を嬉しそうな表情で導力ビデオで録画し続け
「うふふ、この調子なら本日手配した部屋をお使いになってくれるかもしれませんわね♪」
そして笑顔で呟き、食事をとっている2人を微笑ましそうに見つめていた。
「兄様に食事を食べさせる……ですって……!?しかも手料理を自らの手で………!まさかその為のサンドイッチですか!?恋人同士になれた私ですらもまだやったことが無いのに……………!兄様も兄様です!私という婚約者がありながら、あんな誘惑にあっさりと屈するなんて……!もしかして胸ですか!?確かアリサさんの胸は情報に書いてある通りだと87……………今年でようやく80になったばかりの私と比べると明らかに大きいですものね……!」
同じ頃、リィン達からかなりの距離を取った席で片方の手にはクレープを持ち、リィンの手荷物に仕掛けておいた盗聴器で二人の会話を聞きながらもう片方の手で双眼鏡でリィン達の様子を見ていた膨大な威圧を纏って口元をピクピクさせているエリゼは身体を震わせながら片手に持っている双眼鏡に力を入れた。すると双眼鏡からメキッという音が聞こえた後、双眼鏡に罅が入り始め
「ハア………エリゼよ、一体いつまで続けるつもりなのじゃ?」
エリゼの様子を見たリフィアは食事をとりながら呆れた表情で溜息を吐いた後尋ねた。
「あら………そんなの勿論、デートが終わるまでに決まっているじゃない。」
リフィアに尋ねられたエリゼは膨大な威圧を纏って微笑みながら答え
「覗きはあまりいい趣味とは思えぬぞ。……第一ラインフォルトの娘の恋が実った所で、お主が将来リィンと結婚する事は変わりないじゃろうが……というか何故余まで付き合わなければならないのじゃ?せっかくの休暇だというのに………」
エリゼの答えを聞いたリフィアは呆れた様子で答えた。
「兄様が縁談を受ける事を決めた”原因”の一つであるリフィアは黙っていて。第一今日と明日を休暇にできるようにいつも以上に政務書類の片付けを手伝った上、スケジュールを調整したのは私である事を忘れたのかしら?」
「むう……………し、しかしだな。お主もラインフォルトの娘がリィンの妻になる事は認めたのであろう?なのにどうして、そこまで目くじらを立てるのじゃ?」
しかし膨大な威圧を纏って微笑みを浮かべたエリゼに見つめられたリフィアは大量の冷や汗をかきながら唸った後、恐る恐る尋ねたが
「それとこれとは別問題よ。それに今後の兄様と私とのデートや3人でのデートの参考にもなるから、ちょうどいいのよ。ウフフフフフフフ………」
「…………………………」
膨大な威圧を纏って微笑みを浮かべ続けるエリゼに何も言えず、表情を引き攣らせて黙り込んだ。
「どうでもいいけど何でエヴリーヌまで一緒に付き合わなくちゃ駄目なの?………さっきなんかエヴリーヌにお昼ご飯を買いにいかせたしさ……………ハア……………」
同じようにリフィアの傍でクレープを食べていたエヴリーヌは疲れた表情で溜息を吐き
「エヴリーヌ様の転移魔術は食事や飲み物を速やかに確保する時や兄様たちを見失った時に探す時、そして兄様たちに気付かれそうになった時の撤退用に必要ですので。」
「あのね………転移魔術を……というか魔神を何だと思っているの?」
エリゼの答えを聞いたエヴリーヌは呆れた様子で尋ねた。
「あら………何か私に仰りたい事でもおありなのですか?」
「…………………べ、別に…………………」
しかし膨大な威圧を纏って微笑みながら自分を見つめるエリゼに反論できず、エヴリーヌは表情を青褪めさせ、身体を震わせながらエリゼから視線を逸らして答えた。
「フウ…………ごちそうさま。美味しかったよ。」
「お粗末様でした。」
「……けど、アリサが料理が上手だなんて意外だったよなあ……」
「あら。もしかしてラインフォルトグループの令嬢だから料理ができないと思っていたのかしら?」
リィンの話を聞いたアリサはからかいの表情で尋ねた。
「うっ……………そ、その……ゴメン………」
アリサに尋ねられたリィンは表情を引き攣らせた後申し訳なさそうな表情で謝罪し
「フフ、別に気にしないで。私も士官学院に入学する時までは料理の経験はなかったし。」
「へー………じゃあ何で料理が上手くなったんだ?やっぱり授業とかでか?」
アリサの話を聞いたリィンは目を丸くした後不思議そうな表情で尋ね
「まあ、それもあるけど”特別実習”の時に自然と料理をみんなで作るようになったのよ。」
尋ねられたアリサは微笑みながら答えた。
「”特別実習”?一体何なんだ、その授業は。」
「えっと………」
そしてアリサはリィンに”特別実習”の内容を説明した。
「へー………何だかやっている事が遊撃士や特務支援課に近いな。」
「そうね。まあオリヴァルト殿下は最終的には私達に”貴族派”でもなく、”革命派”でもない”第3の道”を見つけて欲しい為に”Ⅶ組”を提案したらしいわ。」
「そうだったのか………なるほど、だからオリヴァルト殿下はオルキスタワーで話した時、あんな事を俺達に言っていたのか……」
アリサの説明を聞いたリィンは頷いた後ある事を思い出して呟いた。
「??一体何を言っていたのかしら?」
「ああ。”特務支援課”をトールズ士官学院に特別講師として招きたいみたいな事を言ってたんだ。」
「へー…………………フフ、確かに特務支援課だったら”Ⅶ組”の特別講師としてちょうどよかったのかもしれないわね。」
リィンの話を聞いたアリサは目を丸くした後苦笑した。
「ハハ……………あれ?そう言えば今気付いたけど………一体どこでさっきのランチを作ったんだ?ヘイムダル経由で来ていると思うから、多分昨日の内に俺みたいにクロスベルに来てホテルに泊まっていたんだよな?」
アリサに続くように苦笑していたリィンはある事に気付いて不思議そうな表情で尋ね
「……ううん、トリスタの学生寮で作って朝早くに出たから………6時頃に起きてランチを作った後ヘイムダルまで鉄道で行って、その後は飛行船でクロスベルまで来たわ。」
「ええっ!?な、何でそこまでしてお弁当を作ったんだ……?」
アリサの答えを聞いて驚いた後戸惑いの表情で尋ねた。
「だって……………好きな人に…………………手作りの料理を……………食べて………欲しかったんだもん…………………」
リィンに尋ねられたアリサは真っ赤にした顔を俯かせて途切れ途切れに呟き
「ア、アリサ…………………」
アリサの答えを聞いたリィンも顔を真っ赤にして俯かせ、黙り込んだ。
「まあまあまあ♪うふふ、その調子ですわよ、お嬢様♪」
一方その様子をビデオで録りながら二人の会話を聞いていたシャロンは嬉しそうな表情で呟き
「フ、フフ………………………よかったわね、リフィア……?今の調子だと二人の婚約は成立しそうよ………?しかも相思相愛という形で。」
同じように双眼鏡で様子を見守りながら二人の会話を聞いていたエリゼは片手に持った罅だらけになった双眼鏡に力を入れて破壊した後リフィアに微笑み
「そ、そうか………政略結婚は個人的にはあまり良いとは思えぬ。け、結果的にはよかったのではないか………?」
「ガタガタブルブル…………(こ、怖いよ………い、今すぐここから逃げたいよ……………)」
膨大な威圧を纏い、背後には魔力によって発生した電撃がバチバチと迸るほどの魔力を全身に纏って極上の微笑みを浮かべるエリゼに見つめられたリフィアは表情を青褪めさせ、大量の冷や汗をかきながら身体を震わせて答え、エヴリーヌもリフィアのように大量の冷や汗をかきながら恐怖の表情で身体を震わせて必死にエリゼを見ないようにし
(エヴリーヌどころかこの我すらも恐怖させるとは………女の嫉妬とは時には”魔神”すらも超えるのだな……………正直、ザハーニウの方がまだマシに思えて来たぞ…………)
リフィアの身体の中にいるディアーネも冷や汗をかいて若干顔色を悪くしながらエリゼから視線を逸らしていた。
「「……………………………」」
一方互いに顔を真っ赤にした二人は黙り込んで俯いていた。
「そ、そうだ!腹ごなしにホラーコースターにでも行かないか!?」
するとその時リィンが慌てた様子で立ち上がって提案し
「そ、そうね!そうしましょう!」
リィンの提案にアリサは慌てた様子で頷いて立ち上がった。
そして二人は休憩所から去って行き、二人を追うかのようにシャロンやエリゼ達もそれぞれ動き始めた……………
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