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百人一首

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93部分:第九十三首


第九十三首

                 第九十三首  鎌倉右大臣
 網を引く漁師達。そして海辺を進む舟。海に来てそれを見ることになった。
 そこにいるのは漁師や舟達だけではなかった。その他にも海女がいた。
 海女達は今は塩を焼いている。磯で塩を焼いている。
 ここにまで塩を焼くその匂いが漂ってきている。塩の香りが実に心地いい。
 海から漂ってきている潮の香りとはまた違って。ただ純粋な、それでいて実に味わいのある塩の香りがする。それがとてもいいものに感じる。
 塩と潮。そしてそこにいる人や舟達。そういったものを見ていて感じ取るのは自然。自然の中の小さな営み。それを感じずにはいられない。
 その自然とそこにいる人達を見て願うことは。変わらないこと。
 このまま変わらずにあって欲しい。変わらずにこのままでいて欲しい。
 今そのことを願う。
 願うとその気持ちが自然に歌になった。自然を詠う歌が出て来た。

世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも

 海の渚で見る自然の姿は青く何処までも美しい。そこにいる人達までも。この青くそれでいて力強い自然は永遠にこのままであって欲しい。こう願いながら今この歌を詠った。塩と潮の香りが何時までもこの身の周りに漂っている。実にかぐわしい香りに思えてならずいとおしくて仕方がなくなってきていた。


第九十三首   完


                  2009・4・8
 
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