八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十四話 西瓜割りその五
「とてもね」
「ですが日菜子さんは空手の達人で」
「達人?私が」
「そうでは」
「いやいや、達人っていうのはね」
それこそというのだ。
「私なんか足元にも及ばないから」
「そうですの」
「鬼みたいに強いだけでなく」
それに加えてというのだ。
「感覚が研ぎ澄まされているから」
「だからですか」
「心眼ね」
「心の目、ですか」
「それがある人なのよ」
「そうした方が達人ですので」
「そうした人なら空手でもね」
西瓜割りで使う棒を普段は使わないが、というのだ。
「見えてるから」
「割れますのね」
「そう、けれどね」
「日菜子さんはですか」
「違うから」
心眼がないからだというのだ。
「出来ないよ」
「そうですのね」
「そう、西瓜割りはね」
「割ることはですのね」
「達人でももなければ」
「奇跡が起こらないと」
「出来るものじゃないから」
こう言うのだった。
「まあそうした遊びよ」
「割らないのにですわね」
「割れないっていうか皆がどう動くのか」
「それをですわね」
「見る遊びだから」
「そうですのね」
「割れないとね」
その西瓜をというのだ。
「手頃な時に割るのよ」
「それで食べますのね」
「皆でね」
「そういうものですわね」
「まあたまにね」
日菜子さんは笑ってこうも言った。
「割ることもあるから」
「奇跡ですわね」
「そう、奇跡が起こってね」
そしてというのだ。
「割ることが出来るから」
「そういうものですわね」
「その時も楽しいけれどね」
「経緯を楽しむ遊びですわね」
「割れなくてもいいのよ」
それでもという返事だった。
「別にね」
「ではわたくしも」
「うん、頑張ってね」
「そうしますわ」
こうしたことを話してだ、そしてだ。
ジョーンさんも出た、けれど。
棒を振った方向は全くの正反対だ、それでだった。
目隠しを外してだ、西瓜の方を観て微笑んで言った、
「残念でしたけど」
「楽しかったよね」
「はい」
こう日菜子さんに返した、傍に来てくれた彼女に。
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