FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
追いかけっこ
前書き
タイトルほど追いかけっこをしてない気もするが・・・気にしたら負けだ・・・
シリル「てか全然してなくない?」
気にしたら負けだ
レオン「いや、気にしろよ」
シリルside
「レオンだ!!レオンが相手からリングを盗ってくれたんだ!!」
「さすが!!すごいよレオン!!」
おそらく敵の残り三人と交戦していたであろうレオンが、その人たちが持っていたリング二つを奪ったのだと判断したシェリアとウェンディが、互いの手を取り合いピョンピョンと飛び跳ね喜んでいる。
「くっ・・・こんなところでも目立ちやがって・・・」
喜ぶ二人とは正反対に、俺は拳を強く握りプルプルと震わせている。俺は自分が見つけたリングを奪われたのに、あいつはそれを盗られることなく、逆に奪い取ってしまったのだ。ライバルとしては悔しさが込み上げてくるのは仕方ない。
「ププッ、悔しがるシリルも可愛いよ」
「うるさい!!」
そんな俺を見てソフィアが口を押さえながらバカにしたように笑いを堪えている。一回戦は俺が活躍できたのに・・・二回戦でやられっぱなしだと、あいつにさらに先を行かれてしまう・・・
「こうなったらあいつらからリング全部奪い取る!!それでこのゲームの勝利もゲットだ!!」
ビシッと目の前の盗っ人二人を指さし、高らかに宣言する。レオンが二つ持ってるのは確実なんだから、あいつらが持っている三つのリングを全て奪えば、単純な話し勝つことができるんだ!!
「シリルが燃えてる」
「いいとこ取りするんだ」
「蒸発しないよね?」
気合いが入りまくりの俺を見て、ウェンディとシェリア、そしてソフィアがそう言う。言っておくけど、水の魔導士だからって燃えたら蒸発するわけないからな?その辺は重要だから覚えておけよ?
「どうする?」
「どうすっか」
勝利を確信していたはずのトレジャーハンターたちは、一転して劣勢になったことで、口元を隠しながら作戦会議をしていた。
「ここは・・・」
「だな」
お互いにうなずいたところを見ると、どうやら作戦が決まったようだ。彼らはわずかに落としていた視線を上げると、目の前にいる俺たちを真っ直ぐに見据える。
「「ひとまず逃げる!!」」
「「「「逃げるんか~い!!」」」」
肘を曲げ、左足を軸に体を反転させるとすぐさまこの場から逃げ去ろうとするトレジャーハンター二人組。以前戦ったトレジャーハンターとは異なりあっさりと諦めるその姿を見て、ズッコケながら突っ込んでいるけど、今はそれどころじゃない!!
「待てぇ!!」
「チャンスは今しかない!!」
「リングを奪っちゃえ!!」
「逃がしません!!」
リングを探すなどというゲームの趣旨を無視して逃げていく二人の男を追い掛ける。しかし、さすがはトレジャーハンター、なかなか距離が縮まらない。
「まずいよ!!このままだと・・・」
まだ蛇姫の鱗に入って日の浅い俺とウェンディ、そしてこの街についてはほとんど何も知らないであろうソフィア。シェリアがいるから大丈夫なのかはわからないけど、このまま曲がり角を上手に使われてしまうと、敵に逃げ切られる恐れが出てくる。
「そうなる前に捕まえたいけど・・・」
追い掛ける俺たちと逃げる彼らとの差はいっこうに縮まらない。それどころか、徐々に離されていっているような気がする。
このままだとまずい!!そう思っていた時・・・
「ん?」
目の前に頼りになる仲間が現れた。両手いっぱいにまんじゅうを持った氷の神が。
「「ゲッ!!」」
その少年を見た男たちは顔を真っ青にして急ブレーキをかける。俺たちはトレジャーハンターたちを逃がさないように挟み撃ちにするため立ち止まるが、肝心のレオンは何が何なのかわかってないようで、小動物のように頬を大きく膨らませて、手に持っている食べ物をむさぼっていた。
「シリル!!レオンもう四つリング持ってるみたいだよ!!」
「早ッ!!」
ウェンディに言われて見てみると、レオンの腕には左右に二つずつ金色の腕輪がはめられていた。さすがはレオン、つまり後一つ奪えばこのゲームは勝てるってことだな?
「よし!!レオン!!そいつら後ろに通すなよ!!」
「??とりあえず了解」
指をポキポキ鳴らしながらトレジャーハンターの残り二人との距離を詰めていく。その際相手が後ずさりしていくので、状況を把握していない金髪の少年に逃がさないように指示を出しておく。
「大人しくリングを渡せばケガせずに済みますよぉ」
どこぞのチンピラのように威圧感を放ちながら相手にケンカを吹っ掛けてみる。
「お前・・・全然怖くねぇぞ?」
「圧力を全く感じねぇ」
「うるさいですよ!!」
だが、それで押せるほど相手は甘くなかった。さすがに子供が目付きを鋭くして怖い顔を作っても、大の大人がそれに負けていては話にならないか。
「それは違うよ、シリル」
「レオンだったらいけたけど・・・」
「美少女に睨まれると興奮するよねぇ」
後ろから少女たちが何か言っているが、俺には聞こえない。こういう時は耳が遠く感じるなぁ・・・うん、そうだ、きっとそうだ。
「突撃あるのみ!!」
周りの冷ややかな視線などどこ吹く風。俺は最後のリングを奪い取るべく、トレジャーハンターたちへと全速力で突っ込んでいく。
「やるしかねぇな」
「逃げらんねぇしな!!」
前からは追い掛けてきた四人に後ろには仲間三人を倒してきたと思われる少年が一人。ユウガさんとタイガさんはこの場から距離を置くという選択肢は当然なく、一人で突っ込んでくる俺を迎え撃とうとしている。
「ほやっ!!」
二人の前で踏み出した足で地面を抉るようにジャンプすると、二つのリングをはめているタイガさんをまずは標的として回し蹴りを仕掛ける。
「効かんわ!!」
「ぎゃふっ!!」
しかし、悲しいことに彼はその一撃をコバエでも払うかのようにあっさりと跳ね返してしまう。
「普通そうなるよね」
「魔法がないとね」
「シリル軽いもんね」
なんでだろう・・・ここまで仲間からディスられることって今までなかったんじゃないだろうか?そもそもディスるってなんだ?エルザさんが使ってたから使ってみてるけど、イマイチ使用する意味がわからない。
「あぁ、そういうことか」
俺が戦おうとした姿を見て、ようやく事態を察知したレオン。彼は俺と二人の姿を見てしばらく思考の表情を見えると、手に持っているまんじゅうに視線を落とす。
「まんじゅう攻撃」
「なぬっ!!」
彼の取った行動に思わず目が飛び出そうになった。食べることが大好きな彼が、よりによってその食べ物を武器として投げてくるとは・・・確かに武器の使用を禁じられているから、何かを代用するしかないんだろうけど・・・その作戦はあんまりだ。
「食べ物を粗末にするな!!」
「「「「「こっちのセリフだぁ!!」」」」」
自分に背を向けていたトレジャーハンターの後頭部にまんじゅうを直撃させた彼は、本来なら周りが突っ込むべきことを自身の口から発する。これには俺たちもトレジャーハンターも、街を行き交う人たちも突っ込まずにはいられなかった。
「はっ!!」
だが、その時気付いた。彼に突っ込みを入れるためにトレジャーハンターたちがこちらに背を向けたことを。これは紛れもない、大チャンスである。
「サンキューレオン!!」
彼がそれを狙ったのかどうかはわからない。しかし、このチャンスを逃がす理由はなく、後ろを向いているトレジャーハンターたちに突進する。
「キャッチ!!」
「うおっ!!」
気付かれることなく俺はリングがはめられた腕へと飛び付く。ただし、今回はタイガさんの方ではなくユウガさんの方を狙うことにした。なぜかって?それはこっちの方が動きがトロそうだからだよ!!
「くっ!!放せ!!」
「リングくれたら離します」
しがみつく俺を空いている方の手で押し退けようとするユウガさんだが、こちらも負けじと懸命にしがみつく。
「ねぇ・・・あれって・・・」
「猫?だよね?」
「じゃれてるね」
後ろから逃げ道を封じるために立っているウェンディたちが争っている俺の姿を見てそんなことを言っていた。何?今の俺人に構ってほしい猫にしか見えないの?そんなに威厳なく見えてるの今の俺!!
「このっ・・・」
「リンゴアメビーム!!」
「それただ投げてるだけじゃ・・・いてぇ!!」
ターゲットにされていなかったタイガさんがユウガさんを助けようとするが、そうはさせないとレオンがどこからか取り出したリンゴアメを投げつける。リンゴアメって相当堅いけど・・・大丈夫なのかな?あれ。
「シリル!!早く早く!!」
「今のうちしかないよ!!」
「いいとこ見せて!!」
俺に見せ場を与えようとしてくれているのか、一切手出しする様子がない少女三人組。そんなこと言われたら、頑張らないわけに行かないじゃん!!
「このこのこのこの!!」
「いてててて!!」
相手の手を掴みブンブンと上下に振ってみる。勢いでリングが外せるのではないかと思ったけど、よく考えたら通路を塞いでしまっているため、深くはまっていくだけで盗れる気配など微塵もなかった。
「よこせ・・・」
「断る・・・」
実力行使と言わんばかりに腕輪を掴み引き抜こうと力を入れる。しかし、相手も負けじとリングを抑え、抜けないようにと力を入れていた。
「あ、あんこじゃなくてカスタードの方で」
「はい、毎度」
「「「「「お前は何をしてるんだ!!」」」」」
こちらでは最後のリングの奪い合いが繰り広げられているのに、うちの最強戦力は大判焼きを注文しており、緊張感ゼロ。
「いいの?俺一人で全部揃えても」
屋台のおじさんから紙袋に入れられた品物を受け取りながら、こちらにイヤらしい笑みを見せる氷の神。彼が手助けしてくれないのは痛手だけど、今は相手は一人だし、彼だけにいいところを持っていかれるのは癪なので、この挑発に乗ってやるしかないか。
「いい加減に・・・離せ!!」
「ぎゃふっ!!」
お互いに一歩も引かずにユウガさんの腕についているリングを取り合っていると、なかなか動かない展開に焦れてきた彼は、足で俺の腹に蹴りを入れ、弾き飛ばす。だが・・・
スポッ
その際、蹴り飛ばされた俺が握っていたリングから手を離さなかったため、彼の腕からそれが抜け落ちる。
「「あ・・・」」
ただ、腕から抜けたのと同時に俺の手の中からも飛び出してしまい、宙へと舞い上がるリング。それはお尻から落下した俺とほぼ同じタイミングで地面へと音を立てて落ちていた。
「キタコレ!!」
「ヤベェ!!」
小さく一度跳ねてからカラカランと停止するリングに向かって真っ先に走り出したのは、俺の後方で控えていた銀髪の少女。彼女からわずかに遅れ、トレジャーハンターもリングを拾おうと駆け出す。
「ごめんシリル!!踏む!!」
「え!?フギャッ!!」
まるで待っていたかのような反応を見せた少女は一直線に走るために、自分の走路にいた俺の頭を踏みつけ、さらには踏み台のように踏み切りリングへと一気に加速する。
「なんか最近俺の扱いひどいよね・・・」
踏み台にされた俺はその勢いに負けてしまい、地面にひれ伏している。痛みとあまりの扱いにしくしくと涙を流しながら、なんとか顔をあげて最後の攻防を見届けることにした。
「っざけんなぁ!!」
「いける!!」
頭からヘッドスライディングで決着をつける勝負の鍵を守りにかかるトレジャーハンターと、自慢の体の柔らかさを生かし、大きく一歩を踏み出しリングを掠め取ろうとする魔導士。
その場にいる全員がその様子を見届けようと、瞬きすることも忘れて食い入るように見つめる。
ガシッ
両者の手がリングにほぼ同時に到達する。だが、ほんのわずか・・・数ミリほどの差でリングに届いた小さな手が、止まることができずに転がるように相手の脇を抜けていく。
「やったー!!リング取ったぁ!!」
受け身を取るようにしながら立ち上がり、誇らしげに右腕を掲げるソフィア。彼女のその手には、太陽に照らされたリングがガッチリと握られていた。
「はぁ・・・終わった・・・」
わずかにリングへと届かなかったユウガさんは、悔しそうにそう呟くと、仰向けになり大の字に寝転がる。それはもう、このゲームを諦めたように捉えることができた。
「これで・・・終了!!」
自らの腕にリングをはめて再度その腕を掲げる。それと同時に、街中にアナウンスが鳴り響いた。
『Aフィールドにて行われておりました準決勝、小さき魔術師が五つのリングを集めましたので、決勝進出となります。決勝戦は―――』
決勝開始の時刻やら場所やらがコールされているが、それどころではない。俺たちは勝利できたことに大喜びで最後の勝負を決めた少女に駆け寄っていた。
「やったよ!!シリル!!ウェンディ!!」
両手を広げて抱き締める準備万端のソフィア。俺は彼女の元に誰よりも先に駆けていく。
「ナイス!!ソフィア!!」
弟が姉に飛び付くような、そんなシーンを想像させるように笑顔で走り寄っていく。そして・・・彼女に飛び付く寸前で・・・
「なんて言うわけないだろ!!」
「どはっ!!」
高くジャンプをして顔面に飛び蹴りを叩き込む。予期せぬ攻撃に、少女は倒れながら鼻血を流していた。
「よくも人の頭を踏みやがって・・・」
「えへへ/////ゴメンゴメン」
先ほど頭を踏みつけられたことに憤りを感じていたので、今の攻撃を加えてやったのだ。彼女は鼻血を拭き取った後、頭を掻きながら上体を起こしていく。
「いいじゃんシリル、勝ったんだから」
「そうだよ、今のでおあいこでいいでしょ?」
その俺の手を引き、宥めようとするウェンディとシェリア。だけど、あいにく今回は二人のお願いでも引き下がるわけにはいかない。
「今日もこいつには散々な目に合わされてるもん!!決勝前に仕返ししとかないと!!」
丁度いい感じに決勝まではわずかに時間が空いている。だから今のうちに鬱憤を晴らしておけば、ソフィアも回復するだろうし大丈夫だろう。
「ププッ、いいよぉ。シリルちゃんの服ひんむいて遊んであげる♪」
「やれるもんならやってみろ!!」
そう言って互いに掴み合う俺とソフィア。それを止めようとウェンディとシェリアは奮闘し、レオンはどこ吹く風といった感じに買ったものを頬張りながら事が収まるのを待っているのだった。
後書き
いかがだったでしょうか?
無事に二回戦も突破して決勝進出できました。
決勝はオリジナルの競技だったりパクリの競技だったりします。
構想は決まってるから、それなりのものにはしていきたいな・・・
ページ上へ戻る