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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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争奪戦

 
前書き
今回のお話は結構最近思い付いたものなので、穴だらけのゲームかもしれません。極力気を付けたつもりですが、もしかしたら矛盾点もあるかもしれないのでそこは笑って受け流してください。 

 
それから作戦会議を終えた俺たちは、三つに別れてこのステージに隠されているリングを探すことになった。

「・・・のはいいんだけどさ・・・」
「ん?」

前に前にと出していた足を止め、その場に立ち止まる。それを見た赤紫色の髪をした少女は同じように止まると、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。

「なんで俺とシェリアのペアなの!?」

率直な疑問を彼女にぶつけてみる。てっきり三班に別れるとなった時、ウェンディと組めるものだと思っていたのに、蓋を開けてみれば相棒はまさかのシェリア。なぜこんな異色のペアになったのか、不思議でしょうがない。

「そう言わないでよ。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の二人には分散してもらわないと」

そう言って俺の頭を優しく撫でてくる天空の神。なんだかお姉ちゃんにあやされているような格好になっているのがなんとも言えないけど、これ以上ごねても仕方がないと気持ちを切り替えることにした。
実は今回のペアになった大きな理由は、俺とウェンディが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だということにある。
滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は視覚、嗅覚、聴覚が通常の人間よりも優れている。それらを駆使すれば、隠されているリングを見つけることもできるだろうというのが今回のチーム分けの大きな理由だ。

「ウェンディがソフィアと一緒なのがすごい不安なんだけど・・・」
「アハハ、そうだね」

俺とシェリアが組んでいることもあり、ウェンディはソフィアと組んでしまっている。あの変態セクハラ娘と二人っきりなんて・・・不安でしょうがないんだけど・・・

「大丈夫だよ、ソフィアってちゃんとしてる時はちゃんとしてるから」
「そんな印象が全くないんだけど!?」

珍しくシェリアが彼女を擁護しようとしているが、こちらとしては全然安心することができない。あいつの日頃の行いを見ていれば、それが普通のことだろう。

「じゃあ、早くリング五つ見つけてウェンディと合流しないとね」

気が散っている俺の集中力を高めるために、ウインクしながらそう言うシェリア。彼女の言う通り、俺たちが早々にゲームを決めてしまえば、それで全てカタがつく。

「そうだね!!頑張ろう!!」

大きく一度うなずき、周囲に気を配りながら目的の物を探し始める。さてさて、見つけられるかな?


















ウェンディside

シリルたちと別々に行動し始めてしばらく時間が経ちました。私はソフィアと共に行動することになっているので、彼女からのセクハラから逃れられるようにとリング探しとソフィアの動きとに気を配りながら歩いているのですが・・・

「う~ん・・・見当たらないなぁ」

ソフィアが路地裏などを真面目に探している姿を見て、彼女を警戒していたことに申し訳なさを感じ始めていました。てっきり競技そっちのけで襲ってくるとばかり思っていたから、できることなら組みたくなかったんだけど、今はそんな心配要らなかったかな?などと思っています。

「ウェンディちゃん、リング見つけたらすぐ腕に着けてね。ソフィアに知らせるよりも先に」
「う・・・うん」

あまりにも真剣に探している彼女を見て、なんだか変な気持ちになってしまう。そんなに勝ちたいのか、それとも何か狙いがあるのか・・・

「ところでソフィア」
「ん~?」

見落としがないようにとゴミ箱や建物の影にまで身を乗り出しながら、以前から感じていた疑問をソフィアにぶつけてみることにしました。

「なんでソフィアは私とシリルのことちゃん付けで呼ぶの?」

リュウゼツランドで遊んでいた時、ソフィアの方から呼び捨てにしてほしいと言っていたのに、彼女は私たちのことをちゃん付けで呼び続けている。それがどうにも理解できなくて、今の機会に聞いてみたんです。

「えぇ?なんでだろう・・・」

忙しなく動かしていた手を止めて、思考するように空を見上げる銀髪の少女。どうやら彼女にもなぜなのかわからないらしく、首を何度も何度も左右に傾げながら、必死に思考していた。

「私たちも呼び捨てなんだから、ソフィアも呼び捨てにしてよ」

自分から提案しておいて、やらないのは卑怯だと思う。だから、これを機に彼女から呼び方を変えてもらおうと、そう考えたんです。

「うん!!わかったよ!!ウェンディc・・・ウェンディ!!」

一瞬普段通りの呼び方をしそうになっていたソフィアだったけど、無理矢理にと言った感じに新たな呼称で呼ぶ。それを聞いた私はまた少し仲良くなれたような気がして、思わず頬を緩ませました。

「あぁ~ん!!ウェンディ可愛い!!」
「キャアアアアア!!」

それを見た彼女は、さっきまで抑えていた感情を発散させるかのように抱き付いてくる。完全に警戒を解いてしまっていたため、交わすこともできずにお尻を揉まれてしまいます。

「ソフィア・・・今はこんなこと・・・ん?」

必死に彼女を引き剥がそうとしていると、私の目に路地裏で光る何かが飛び込んできます。

「ソフィア!!あれ!!」
「え?」

ソフィアに抱かれたままその光るものを指差すと、彼女は顔だけそちらに向けた後、びっくりしたような表情を浮かべた後、腕に入れていた力を緩めます。

「やった!!リング見つけた!!」

ソフィアの手から解放された私は一目散にそれに向かって駆けていきます。私の読み通り、光っていたものは今回の競技で集めなければならないリングでした。

「まず一個!!」

一回戦で活躍できなかったため、リングを見つけた私は喜んで拾い上げたそれを掲げます。今日は青空が広がっており、空に向けられたリングは日の光を浴びて目映い光を放っていました。

「ウェンディ!!」
「え?キャッ!!」

一人喜びに浸っていると、後ろから仲間の声が聞こえたので振り向きます。そこには全力疾走で私に飛び付こうとしているソフィアがいて、押し倒されてしまいました。そして、私たちの上を・・・

ヒュンッ

人影のようなものが飛び越えていきました。

「チッ、失敗か」

地面に着地してこちらを睨み付ける男性。ソフィアはその人を見ると、素早く立ち上がり、私の前に立ちます。

「やっぱりこうなるよね、この競技」
「え?」

何がなんだかわからない私とは違い、すでに状況を飲み込んでいる様子の少女は、こちらに正体した男性を見据えています。

「ウェンディちゃん、そのリング腕に付けて」
「う・・・うん!!」

言われるがままに金色のリングを腕にはめます。これでこのリングは私たちの所有物と判断され、ポイントが換算されているはずです。

「着けたよ!!ソフィア」
「おっけ。これで守りやすくなるよ」

戦闘体勢に入っている銀髪の人魚。その言葉を聞いた時、私はようやくこの状況を理解しました。
今私たちの前にいるこの男性は、二回戦の対戦相手である最強戦士(グレイティスト)のメンバー。彼は私たちが手にいれたリングを奪い、自分たちのポイントにしようとしているんですね!!

「でも、私が腕にはめてるからもう奪えないんじゃ・・・」

司会の人の話だと、リングは持っているだけではポイントにならないけど、腕にはめると得点になるって言ってた。そのチームの所有物と判断されているなら、奪われる心配なんかいらないと思うけど・・・

「甘いな、嬢ちゃん」

一人腕輪となったリングを見ていると、敵である男性がニヤッと嫌らしい笑みを浮かべてそう言います。

「腕にはめたリングを奪い取ったらいけないなんて、そんなルールは存在しないぜ?」

言われてみると、敵の物を取っちゃいけないとは一言も言われてませんね。

「でも犯罪行為は禁止だって・・・」

人の物を盗むのはいけないこと。今回の競技はルールで犯罪行為を禁じているんですから、他チームの所有物となっているリングを奪ったらいけないような気がするんですが・・・

「所詮ゲームだしね、犯罪ではないでしょ」
「そういうこった」

いつでも動き出せる状態のソフィアと男の人。物は捉えようとはよく言ったものですね。そんなこと言ったら、このゲーム大会って何でもありになっちゃうじゃないですか。

「大人しくリングを渡してもらうぜ!!」
「じゃあ、あなたにはここでくたばっててもらおうかな?」

女の子らしくない言葉を発しているソフィアを見て、思わず苦笑い。でも、この競技は魔法も武器も使用することができない。だったら・・・

「私も戦うよ、ソフィア!!」

女の子一人の体力で成人男性を相手にするのは厳しい。なので、彼女と共に戦おうと一歩前に足を出します。

「もちろん!!頑張ろうね!!」
「うん!!」

私がそう提案するのは予想できていたらしく、目の前の敵を倒す気満々のソフィア。私は彼女の言葉にうなずいた後、体に力を入れ、集中力を高めていました。



















第三者side

「おいおい、これは予想してなかったぞ」

一方、右腕に二つのリングを付けている金髪の少年は、目の前の人物たちを見て頭を掻いていた。

「やっぱりお前は一人で行動してたか」
「計算通りだぜ」
「悪いがそのリング、渡してもらうぜ」

自分よりも上の年齢で、しかも体が大きく鍛え上げられているトレジャーハンターたち。三人のうち二人の腕には一つずつリングがはめられており、この場には四つのリングが集まっていることをレオンはすぐに把握した。

(ここでリングを奪えれば一気にゲームを決めれそうなんだけど・・・)

逆に奪われようものなら、敵にも同じようなことが言えるのだ。
現在彼らのいるAフィールドには九つのリングが隠されており、過半数の五つを獲得すれば決勝に進むことができるこの競技・・・
そのうちの四つが一ヶ所に固まっているこの状況は果たして吉なのか凶なのか。

(逃げるって選択肢もあるけど・・・)

三対一、しかも向こうはトレジャーハンターで体も魔導士である自分よりも鍛えられているはず。レオンの脳内を一つの選択肢が通りすぎるが・・・

「やるべき・・・だな」

ここは勝負をするべきだと戦闘体勢に入っていく。優勝すればマーガレットにある飲食店で一年間食べ放題、彼に取ってそれはまさしく天国なのである。多少のリスクを背負ってでも、ここはやるべきだと彼は判断したのだった。

「いい度胸だ」
「こいつを抑えれば勝ったも同然だろ」
「そうだな」

トレジャーハンターたちも当然やる気満々。自分たちの方が優勢なのだから、これは当然といえば当然のことであろう。

「さてさて、どうなるかな?」

魔法も武器も使用禁止・・・互いの得意な分野を封じられての対戦とあって、どうなるのか予測がつかない。未知の領域での対戦・・・どちらに勝利の女神が微笑むのか、それは神のみぞ知る。



















シリルside

「見つからないね」
「そうだね」

リングを探し始めてどれくらい経ったのだろうか。俺とシェリアはリングが隠されていそうな場所を見て回っているが、未だに一つも見つけられない。目を使えば簡単なのに、魔法使用禁止のため使えないのが残念だ。そう考えると、俺はかなりこの滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)に頼っていたのだということを思い知らされる。

「う~ん・・・見つけられないなぁ・・・」

試しにマンホールの蓋を外して中を覗いてみるけど、そんなところにあるはずもなくすぐにやめる。周りから不思議そうな目で見られていたので、苦笑いしてからそそくさとその場を後にして、何事もなかったかのように振る舞うことにした。

「もしかしてもう全部見つけられたとか?」
「まさかぁ」

シェリアがリングを見つけられない理由を推測してみるが、さすがにそれはないと思う。こんな短時間で九つ全て見つけられるなんて、よほどの強運の持ち主でもない限りありえないだろう。そもそも、それだとどちらかのチームが過半数の五つを持ってるはずだから、ゲームの終了を告げられるはずだし。

「だよねぇ、なんで見つからないのかなぁ?」

辺りをキョロキョロと見回しながら、とにかくフィールド内全てを探してみようと考えた俺たちは、何か落とし物でもしたのかというほど落ち着きなく歩いている。

ガッ

「あたっ!!」

リングを探すのに夢中になりすぎていて、前を見ていなかったために何かとぶつかってしまう。

「すみません」

道の真ん中を歩いていたので、柱や建物にぶつかったのではなく誰か街を歩いている人にぶつかったのだろうと思い、尻餅をついたまま謝罪する。でも、向こうから何も返事がない。不審に思った俺は前を見ると、そこには誰も立っていなかったのだった。

「あれ?」

周囲を見回しても、誰もぶつかったような感じがなく、皆さんお祭りを楽しんでいるように見えた。俺は何とぶつかったのかわからないまま、リング捜索のために立ち上がる。

ゴツッ

「うおっ!?」

再び歩き出そうとしたその時、今度は前のめりになっていたこともあり、頭に何かがぶつかる。すかさず前に視線を向けるが、そこには何も存在してはおらず、お祭りに盛り上がるマーガレットの街の景色しか見えなかった。

「どうしたの?シリル」

何が起きているのかわからず立ち尽くす俺に後ろから声をかける一人の少女。俺は彼女に向き直ると、なんて説明すればいいのかわかりませんと伝えるために、肩をすくめてみせる。

「前にいけないんだけど・・・」
「え?」

簡単に状況だけを説明してみると、シェリアはおもむろに前へとゆっくりと歩き出してみる。すると、俺が止まっているところと平行に並んだところで、見えない何かにぶつかり前に進めなくなる。

「これって術式?」
「え?なんで?」

何もないところを手で押してみようとすると、あら不思議、何もないところなのに力を入れても前のめりに倒れることがない。それを見て一つの魔法が頭を過る。

「もしかしてここがフィールドを分断する線?」
「あぁ、なるほど」

言われてみるとそうかもしれない。今マーガレットの街を二分して競技を行っているわけだから、ちゃんと区切りの線をつけないと誤って向こう側のリングを拾ってしまうことがある。それだと運営も判断が難しくなるから、こうやって別フィールドに入れないようにしてるのか。

「仕方ない、戻ろっか」
「そうだね」

これ以上先に行けないのなら、一度戻って別の道を探さなければいけない。そう考えて振り返ると、すぐ目の前にある出店の看板の裏に、キラッと光っているものを見つける。

「おおっ!!見つけた!!」

ついに・・・ついに見つけた初リング!!嬉しくなってきた俺はそれに飛び付くようにジャンプすると、ガッチリとキャッチする。

「なんか猫みたいだったよ、シリル」
「テンション上がったからね」

素早い動きが猫をイメージさせたらしい。でもやっとリングが見つけられたからテンションが上がっても仕方ないよね?

「じゃ、さっそくリングを腕に・・・」

手にいれたリングをポイントに加算してもらうために腕にはめようとする。すると、

「!!」

背後から人の気配を感じ、振り返り様に拳を押し出す。

「ぐおっ!!」

そのパンチは、俺に飛びかかろうとしていた若い男の顔面へと突き刺さった。

「ぐっ・・・いい反応だな」

魔法を使っていないとはいえ、見事に入ったこともあり鼻血を出しているトレジャーハンターさん。俺は敵が一度距離を取ったのを確認すると、持っていたリングを腕へとつける。

「予想通り、リングを奪いに来たね」
「うん、きっとやってくると思ってたよ」

今回のチーム分けはリングを見つけるため以外にも、敵からの襲撃に対処できるようにと考慮して俺とウェンディが別々になっているらしい。確かにこのチームを身体能力で並べていくと

レオン

ソフィア



シェリア

ウェンディ

といったところだろう。なので、単体でも勝ち抜ける力を持つレオンを一人にし、ソフィアとウェンディ、俺とシェリアを組ませた次第だ。ま、それを聞いたのもついさっきなんだけどね。

「でも向こうも一つリングを持ってるみたいだよ」
「ここで取られると、まずいことになるね」

よく見ると彼の腕には俺と同じリングがはめられている。たぶん早々にリングを見つけたから、後はこちらから奪いつつ捜索していこうといった考えなんだろう。トレジャーハンターはそういうのに慣れてるだろうし、追跡も向こうの方がうまいから、対応することができなかったんだ。

「相手は一人!!」
「俺たちでも勝てるはず!!」

シェリアが突きだした拳に同じようにそれを合わせる。リングを奪われるとそこで敗北する恐れがある。例え魔法が使えなくても、このリングは絶対に死守してみせる!!





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
リング探しゲームからリング争奪戦になりつつある二回戦。
ちなみに今の段階でシリルたちは勝利にリーチをかけてたりします。次は魔導士なのに魔法を使わないちびっ子たちの戦いです。
なんか逆に新鮮な気がするのは気のせいじゃないはず・・・ 
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