鋼殻のレギオス 勝手に24巻 +α
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第三話 INグレンダン(その1)
前書き
遅くなって大変申し訳ない。
前話で「何か月」と言っておきながら年単位で空いてしまいました。
槍殻都市グレンダン、その中心部に位置する王宮に近い一等住宅地。ここは都市の権力者やそれに準ずる者たちの邸宅が立ち並ぶ一角でありその中でも一際王宮に近く、また豪壮な屋敷の前に一人の少女が立っていた。
門衛として詰める煌びやかな服装の男はその少女を追い払おうとしていた。
「ここをどこだと思っているんだ、グレンダンが三王家の一つロンスマイア家だぞ。お前のような者が近づくような所ではない」
そう言われるのも無理はなく長旅による傷みで薄汚れた旅装、はじめは上等の物だったのだろうが今は幾らかくたびれており他には鞄を持っているだけ。明らかに外来者であり、錬金鋼を所持していることから武芸者であることが分かるくらいである。
他の都市では錬金鋼を預けなければ都市内部に入ることはできないがグレンダンではそんなことはない。その制度は元々外来の不良武芸者による犯罪を防ぐことが目的だが、放浪バスの往来が少ないグレンダンにおいては他都市から流入してくる物はできるだけ捉えようという風潮があるため規制が他よりも緩くなっているのである。
とはいえ外来武芸者による犯罪確率が他の都市よりも高いかといえばそんなことはない。半端な実力では武芸者とはみなされないグレンダン、そもそものレベルが高く抑止力となっているからだ。
それはともかくその少女、ニーナ・アントークは困っていた。かつての約束通りクラリーベル・ノイエラン・ロンスマイア、クララに会いに来たものの絶賛門前払いの最中だからだ。とはいえ旅装が汚れているのはどうしようもなく当然ながらこの都市で身分を証明するような物は無い。クララの名前を出した所で状況が改善されないだろうことも理解していた。相手は門衛が言うように三王家の一つロンスマイア家の当主(になると本人が別れ際に言っていた)であり、天剣授受者でもある超がつくほどのVIPである。
そんなところへいきなり訪ねてきた人間が名前を出したところで相手にされないだろうし、かといって紹介をしてもらえるような人脈も持ち合わせていない。グレンダンに知人がいないわけではないが同じような超VIPか、あるいは一般市民であるためその線から辿ることは困難だと思われた。
そんな八方塞がりのような状況のニーナを救ったのは空中から響いた声だった。
『その方のことなら私が保証します』
二人が見上げた先には蝶型の念威端子が浮かんでいた。途端に姿勢を正す門衛。
「キュアンティス卿、よろしいのですか」
『ええ、構いません。それと初めて……ではないのですが名乗るのは初めてでしたね。私はエルスマウ・キュアンティス・フォーア、陛下より天剣を授かったものです。クラリーベル様を訪ねて来られたということでよろしいですか』
「ああ、そのつもりだが」
話が急に進むことに若干戸惑うニーナ、天剣という地位の高さを改めて知る。
『あいにくですがクラリーベル様はそちらにはおられません。ニーナ様の事をお伝えした所、今そちらに向かっておられます。申し訳ありませんが荷物はその者に預けて後ろの敷地内へ移動していただけますか』
そういわれてニーナが後ろを向くと高い塀が通りの端からずっと続いていた。言われるままに荷物を門衛に預けるニーナ。旅をする者として荷物は最小限に貴重品は常に身に着けられるように、の原則にのっとっているためたとえ鞄の中身が無くなったとしても困ることはない。と言っても本当に無くなるなどと考えているわけではないが。
「キュアンティス卿、といいましたか、どちらから入れば?」
見渡す限り塀によって区切られた土地であり門や扉といった中へ入るための部分が全く見当たらない事に疑問を口にする。
『構いません、乗り越えてください』
その言葉に納得はいかないものの塀の上に飛び乗る。するとそこから見えた光景に思わず目を疑ってしまった。
見渡す限り何もない大地が広がっていた。通常なら高級住宅地にふさわしい豪壮な邸宅が建っているはずの土地に人工物が何一つ存在していないのだ。かといって木々が生い茂っているわけでもない。所々に申し訳程度に生えているだけのかなり荒れた地面を晒しだしている。
『ここは鍛錬に使われる場所で武芸者であれば誰でも使用可能とされていまして幾つかあるうちの一つです』
「それはわかったが何故ここなんだ?」
クララに会いに来ただけであり相手もそれを承知しているにも関わらず、案内されたのは建物が欠片も無い更地である。不満と言うよりも単純に疑問を覚える。
『それは……』
不意に背後から何かが迫る気配を感じ前に向かって飛びながら反転し、正体を確かめようとする。
ニーナが寸前まで居た所に突き刺さったのは赤い蝶のような形をしたもの。それはクララがよく使う剄技の一つ、外力系衝剄の化錬変化、焦羽蝶。更に自分に向かってくるものを剣帯から抜きだし復元させた錬金鋼、ツェルニから貰った双鉄鞭で迎撃する。
『……クラリーベル様がとてもいい笑顔で天剣を掴んで行ったからです』
「……よくわかった」
そのクラリーベルの姿はと探したところであまりの光景に目を疑ってしまった。
焦羽蝶が飛んできたその先にクララは居た。漆黒の衣服を身に纏い、紅い一対二翼の翼を背負い何の足場も無い空中に浮いている。
その翼は振る毎に焦羽蝶となりニーナに襲い掛かる。無数に飛び交う蝶を避け、叩き落とし、金剛剄で弾き返す。短時間ではあったが激しい爆発の嵐を潜り抜ける。
その間にクララは近づいてきてはいたが依然として空中にとどまっている。違う点といえば焦羽蝶に変換した分背負う翼が小さくなっていることだ。
いきなり何をするのかと問いただそうとするがその前に再びクララが動く。
炎でできた紅い翼が収縮して天剣に纏わりつき代わりに黒い翼を背部に展開する。剄を爆発させた衝撃を黒い翼で受けとめ爆発的な加速でもってニーナに迫る。
「ニィィィィナァァァァ!」
「クゥゥゥララァァァァ!」
クララがニーナに向けて矢の様に襲いかかる。それに対しニーナは避けるそぶりも見せず腰の剣帯から錬金鋼を引き抜き復元する。それは二振りの鉄鞭となりクララを受け止める。
クララが持つ天剣・胡蝶炎翅剣とニーナの双鉄鞭がぶつかり合い噛み合う。衝撃でニーナの周囲の地面が陥没し胡蝶炎翅剣に込められていた炎が周囲で爆発を起こす。
「一体何のつもりだ?」
「決まっているではありませんか。武芸者が久しぶりに会ったのです、どれだけ強くなったか確かめるんですよ」
至極当然のように答えが返ってくることに変わらないな、とニーナは一瞬苦笑をこぼすもののすぐに表情を引き締める。真剣にならなくては相手できない相手だとわかっているからだ。
鍔迫り合いの状況から先に動いたのはクララだ。大きく後ろに飛び退くのと同時に剄技を発動させる。
外力系衝剄の化錬変化、炎城。
ニーナを中心として炎の壁が周囲に現れる。それはそこにあるだけでなく中心に向けて包囲を縮める。
「まだ行きますよ」
炎の只中にいるニーナには聞こえていないことを承知で続ける。
外力系衝剄の化錬変化、炎壁。
環状だった先程とは異なり単なる炎の壁が二人の間に何枚も立ち上がる。
「もう一つ」
外力系衝剄の化錬変化、焦羽蝶・隼。
複数の焦羽蝶を集め、一羽の鳥を形造る。
『クラリーベル様、やりすぎではありませんか?』
思わずといった感じで傍の念威端子から声がかけられる。が、それに構わず剄技を解き放つ。
「この程度で倒せる相手じゃありませんよ」
炎の壁に向けて飛ぶ鳥が壁に接触する寸前、それを突破してきた何かとぶつかる。
そして次の瞬間には再びクララとニーナが鍔迫り合いで睨み合っていた。
活剄衝剄混合変化、雷迅。
幾枚もの炎の壁や飛んできた焦羽蝶を全て吹き飛ばし一瞬でクララの元まで辿り着いく。ニーナが最も得意とする剄技だ。
「流石ですねニーナ、でもここからどうするんです? 雷迅は使えませんよ」
突進系の剄技である雷迅は相手と接触した状態からでは十分に威力を発揮できない。それを知っているから勢いを削ぐ為に幾つもの剄技をぶつけたのだ。最初に距離をとったのは単純なお遊びだ。
それに対しクララが得意とする化錬剄は動きを必要としないものが多い。再びニーナの周囲に炎の蝶が舞い始める。
「その通りだな、だが私もお前の知っている私のままではないぞ」
スルリと左手の鉄鞭から力を抜くとその流れのまま半回転し裏拳の様に鉄鞭を振る。
「甘いですよ!」
それをダッキング気味にかわし更に懐に潜り込もうとする。それと同時に背後から焦羽蝶をニーナに突進させる。
だがニーナの動きはクララの予想を超えていた。そのまま一回転し左手の鉄鞭でクララに殴り掛かる。と同時に右手の鉄鞭で焦羽蝶を叩き落とす。
「嘘でしょう」
自らの斬撃も化錬剄による攻撃も捌かれ逆に鉄鞭の嵐を見舞われる。上下左右から叩き、撃ち、薙ぎ払い、体を回転させるままに振るわれる攻撃を防ぎ、僅かな間に反撃に打って出ようとするが全て防がれる。
アントーク流双鞭術、武踏。
それは剄技に非ず、間断無き攻撃と鉄壁の防御を行う為の流れ。相手の動きに対応した肉体の動きの制御とそれを可能とする力強い踏み込みからなる一種の『型』。
「くっ」
圧力に耐えきれなくなったクララが大きく飛び下がって距離をとる。だがそれは悪手としか言いようがない。クララ自身それを理解しているが接近戦ではニーナに一日の長があるためある程度距離を取らなければ負けは確定だからだ。
だがそれはニーナが最も得意とする剄技の射程に収まることを意味する。
活剄衝剄混合変化、雷迅。
開いた距離を一瞬で走破し鉄鞭を叩き込む。無論全力ではないが、ただで済む威力でもない。
「なんだとっ」
だがその鉄鞭があるべき抵抗に触れることはなかった。そこにクララが居ないように通り抜けたのだ。
地面を削る様に急制動をかけるといきなり増えた気配を追って周囲を見渡す。そこに複数のクララの姿があった。
外力系衝剄の化錬変化、朧蓮華。
温度差によって生み出され化錬剄に張り付けられた幻影がニーナの周囲に何人も現れる。まさかそんなことをするとは思っていなかったニーナは予想外のことに思わず対応が遅れる。と、そのまま不自然に硬直する。
外力系衝剄の化錬変化、蛇流・紫電。
いつの間にか繋げられた化錬剄の糸を通じて電気を流されたのだ。その隙に周囲全てのクララから追撃が放たれる。
「これで終わりです!」
外力系衝剄の化錬変化、風刃。
無数のクララの内実際攻撃でいるのは本体の一人だけだが化錬剄でそれぞれが放っているように見せかける。ニーナの周囲に作り出した空気の刃を殺到させる。
『クラリーベル様、やりすぎではありませんか?』
動けない相手に躊躇なく必殺の攻撃を打ち込んだ事に念威端子越しに苦言を呈されるがクララの表情は晴れない。何か違和感が拭えないのだ。慎重に相手の気配を読むと別の所から違和感を感じる。
「そこですっ」
違和感の元に衝剄を飛ばす。すると砂埃が舞う先で弾く音がする。
「どうやって避けたんですか? ニーナ」
「秘密だ。ふんっ!」
クララの疑問を無視し、自らを中心に剄の嵐を吹き荒れさせ周囲の剄を吹き飛ばす。幻影が消え去り本物のクララだけがその場に残る。
ニーナが錬金鋼を構える姿に今度はクララが顔を引きつらせる。何が来るのかわかっている顔だ。
活剄衝剄混合変化、雷迅。
十全の迎撃が間に合わない事を自覚しつつそれでも迎え撃とうとするクララ。
『そこまでです』
念威端子からの制止に互いの錬金鋼が衝突する寸前で止まる。
『流石にこれ以上続けられますと問題が有りますので』
いいところを止められたクララは不満げな表情を見せるが続けられた言葉に止む無く従う。
『本気になられると被害も馬鹿になりませんし……、それに他の天剣の方が参加したがってますので……』
クララが後ろへ下がり、さらには天剣を待機状態へと戻し剣帯に仕舞うのを見るとニーナも同様に錬金鋼を戻す。
「いったいどういうつも「遅い!」……りだ……?」
被せるように言われたことに首をかしげる。
「あれからすぐに来ると思って待っていたのに、全ッ然来ないんですから」
憤るクララに対しニーナも反論する。
「仕方ないだろう、私にだって事情というものがあるんだ。すぐには無理なことぐらいわかるだろう」
「それは理屈では納得してますけどね。待っている側は大変なんですから。その辺りのことも聞かせてもらいますよ」
そう言って踵を返すクララの背中にニーナ以外の声がかけられる。
『クラリーベル様、まだ今日の書類が終わっておりませんが』
それを聞くとピクッ、と止まり頭をかき回し浮かぶ蝶型の念威端子に向かって叫ぶ。
「わかってますよ! ニーナを王宮に連れて行っても構いませんよね」
言葉面だけなら疑問形だがその実決定事項である言い方だ。
その証拠に返事を待つことなく都市の中心にある一際高い建物・王宮へと足を進める。ニーナもそれを追う道中触れたくはないがどうしても気になってしまう疑問をぶつける。
「ところでその恰好は何なんだ、まさかまだやっているのか?」
なぜならクララの服装はかつてツェルニで『紅の闇姫』を名乗っていた時の衣装を更に派手にしたようなものだ。思わずニーナの頬が引きつりそうになる。
「やってません」
が、クララから明確な否定が返ってきたことでホッと安堵の息を漏らす。だがそれが甘かったことを瞬後に思い知る。
「今の私は『紅き堕天使』です」
自信満々な声に愕然とする。更に念威端子からも追い打ちがかかる。
『クラリーベル様に対抗するように天剣のトロイアット様も『白き聖者』と言うのを始めまして、御二人の模擬戦は市民の娯楽の一つになっています』
「……フェ、フェリが知ったらなんと言うだろうな」
かろうじて言葉を絞り出したニーナに対し、クララは気楽に告げる。
「フェリさんなら知ってますよ」
思わず固まってしまうニーナ。
「ニーナより前にグレンダンに来たことがありまして。その時ちょうど見ていきましたよ」
『あれは私も初めての体験でした。念威繰者であってもフリーズすることがあるとは知りませんでした』
そんな感想を伝えてくるエルスマウの念威端子に対し、ニーナに返す言葉はなかった。
王宮についたニーナがクララに連れられて入った部屋は高級な調度が並び、中央に置かれた机には書類の山ができていた。クララは憂鬱そうに一つため息を吐くと椅子に座り書類を片付け始める。
「ちょっと待っててくださいね、いま何とか片付けますから」
その光景に疑問を覚えるニーナ。
「なあクララ」
「なんですか」
「お前未だ即位はしていないんだろ、三王家の当主とはそんなにも大変なものなのか?」
「そうですよ、私は未だ女王になったわけじゃないんです。あくまでもロンスマイア家の当主というだけだったらこんなに仕事は有りません。というか王宮に仕事部屋を作ってやるほどに有る訳がないんです、だって王じゃないんですから自分の家のことは自分の家でやればいいんですから」
その質問にガバッと顔を上げるクララ、よくぞ聞いてくれたといわんばかりに愚痴が繰り広げられる。
「でもですね。私の今の立場は『天剣』で『ロンスマイア家の当主』で、ついでに『女王代理』なんですよ。あの陛下合法的に仕事を丸投げしてくるんです。カナリスさんは『影武者』でしたから責任は陛下にあったんですが私の場合『代理』ですから権限が一緒に来てるんで責任も私になっているんですよ。ツェルニから帰ったらいきなりですよ、実際になる前の予行練習とか言ってほぼ全権押し付けてきたんですよ、それなら私が女王になったっていいじゃないですか、それなのに自分が楽するための権限だけはしっかりと確保しているんですよ、酷いと思いません?」
「わかった、わかったから落ち着け。頼むから」
その勢いにニーナもたじたじである。とにかく話題を変えようとする。
「それでフェリは何で来たんだ?」
それに対し書類から視線を上げずに答える。
「私たちが卒業してから二年後、レイフォンが卒業『できた』直後ですよ、一緒に『ご挨拶』といった感じでしたか。そうそうフェリさんときたら自分が卒業してからの一年、ツェルニにとどまっていたそうですよ」
「はぁ、なんでだ? 卒業したら出ていくのが学園都市の決まりじゃないのか」
あの二人が共に行動していることには驚かないが、入れ替わりを繰り返す都市にそんな長期間滞在を続けたことは別だ。
「それがですね、「私が乗るバスはまだ来ていない」と言い張って外来者施設に留まり続けたそうです。でレイフォンが卒業したところで一緒に出たといっていました」
なんとなくその光景が頭に浮かび思わず額を抑えるニーナ。既に卒業しているのだからどうこう言う権利などないし、ルールとしては違反していないだろうがどうだろうと正直思う。
「そんなことよりニーナはどうしていたんですか、遅くなった理由というのを聞かせてもらいましょうか」
「ああそれか、私がシュナイバルに帰ったことは知っていると思うが?」
「ええ、それは知っていますよ。ですからその後何をしていたのかですよ」
書類から顔を上げずに興味津々のクララ、同時にしょうもないことだった場合第二戦が始まりそうな雰囲気も若干滲み出ている。
「はっきり言ってしまえば修行だな」
その言葉に疑問符を浮かべるクララ、修行以上の実戦をさんざん繰り返していたではないか、と。それにグレンダンに来た方がよほど修行になるのではないか、ということだ。武芸者の平均をとってもグレンダン以上の都市は無い、そう自負しているしそれは事実でもある。
「確かにそうかもしれんが元々実家の修業を途中で抜け出してツェルニに行ったからな。それに双鉄鞭なんて武器を使う流派は他にはほとんどないからな」
後半を聞いてクララも納得する。鉄鞭を使う流派なら幾つも存在する、剣を使った二刀流の流派も幾らかは存在するだろう。だが双鉄鞭の流派など他に聞いた事も無く剣と鞭では使い方に決定的な差があるためあくまでも参考程度にしかならないのだ。
「で、その後は」
「その後は放浪バスでの旅だからな。どの都市に寄るか、どれだけ時間が掛かるかは私が決められることではないだろう?」
「まあそうですね、詳しことは後で家で聞かせてもらいますからね。いいでしょう?」
「私は構わないが、いいのか? 急に厄介になって」
疑問形のくせに決定事項の話し方をするクララ、ニーナ自身に異存は無いがいきなりで迷惑ではないかと思う。
「構いません、どうせ外来者施設に泊まるつもりだったのでしょう。ならうちに泊まってもらった方が明日グレンダンを回るのにも楽ですよ」
「そうか、なら頼む」
「ええ、わかりました。エルスマウさん」
『はいクラリーベル様、ロンスマイア家の方にはお客が来るということで伝えておきましたがよろしかったですか』
「ありがとうございます。それじゃニーナ、少し待っていてください」
どこからともなく現れた蝶型の念威端子にそう伝えると書類に没頭する。
そんなクララの仕事が終わるのを侍女が淹れてくれたお茶を飲みつつ待ったニーナはロンスマイア家に御厄介になったのだった。
後書き
散々待たせながらごめんなさい。またすぐの更新は無理です。
エタる気だけは無いので待ってくださっている方がどれだけおられるかはわかりませんが、待ってください。
図図しいですが感想や間違いの指摘、あればお願いします。
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