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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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勝者は?

 
前書き
今週のFAIRYTAILのジュビア・・・あれ絶対穿いてないよね?あんなところまで見えてるのに下着が見えないなんて・・・絶対穿いてないよね?前のシリルのノーパンストーリーもそれが疑問だからやったんだけど・・・今週のはほぼ間違えなく穿いてないと思うんだけど・・・だからジュビアの物真似の時のシリルは絶対パンツ穿きません!!←妙な宣言
シリル「てかもうジュビアの真似することないでしょ?」
いや・・・実はあるんだ、予定が。
シリル「(@ ̄□ ̄@;)!!」 

 
シリルside

「マジで大丈夫かな?これ」

まもなく開店とあって細かな準備も無事に終え、後はお客さんを迎え入れるのを待っている状態。ただ、ギルドの前にはすでにたくさんの人々が列を成しており、今一度自分の衣装が変じゃないか不安な気持ちになっている。

「気にしすぎだ。充分似合っているぞ」
「喜んでいいのか何なのか・・・」

隣で黒のビキニに白のエプロン着けているカグラさんがそう言うが、嬉しいのか嬉しくないのか複雑だ・・・だって男なんだもん。

「やるからには全力でやる」
「レオンには負けられない!!」

テンションだだ下がりの俺とは違い、レオンとシェリアはやる気満々だ。特にシェリアは、本気モードのレオンに負けられまいと、気合いを入れまくっている。

「シリル!!一緒に頑張ろうね!!」
「そ・・・そうだね・・・」

よく見たらやる気充分なのは彼らだけではなかった。隣に立っているウェンディも、みんなに遅れまいと戦う意思があるようだ。

「フフッ、一位になってシリルちゃんたちに何着せようかなぁ」

彼らがやる気に満ち溢れているのは、もしかしたら彼女が原因なのかもしれない。銀髪のサラサラとした美しい髪を手櫛でほぐしながら、明日から一週間俺やレオンにどんな水着を着せようかウキウキしながら考えているようだった。

「シリル!!あんたが一番頑張りなさいよ!!」
「そうだよ~!!シリルとレオンならシリルの方が本命なんだからね~!!」
「ラウたちも巻き込まれそうなんだから!!」

やる気のない俺に渇を入れるのは、厨房で水着にエプロン姿となっているエクシードトリオ。彼女たちも最初はウェイトレスをする予定だったのだが、シャルルとセシリーがまだ完全に変身をコントロールできていないらしく、料理を運んでいる最中に猫に戻ると危険だということで厨房係になった次第だ。

「なんかもうどうでもいいんだけど・・・」

しかし、一喝されても俺の気持ちはブルーなままだ。なぜなら、すでにこんな女の子女の子した水着を着て人前に出る時点で色々と終わっている気がするからだ。今日恥ずかしい思いをするだけで済ませようとかいう発想がなくなってしまった。だってもうすでにプライドが砕け散っているのだから。

「シリル、そんな顔をしてると指名が来なくなるぞ?」
「来ないなら来ない方がいいです・・・」

こうなったらレオンを全力でサポートした方がいいかもしれない。彼はやる気があるみたいだし、もしかしたら一位になれるかもしれない。

「なら、やる気になることを教えてやろう」
「??」

すると、カグラさんが突然そんなことを言い出す。この状況からやる気になること?なんだろ、一位になったら何かくれるのかな?

「私が一位になったら、お前にはあの水着を着せる」

そう言ってカグラさんが指さした水着を見て、絶句した。
水色と白のしましま模様のビキニなのだが、色々と突っ込みどころが満載なのである。
トップスが現在シェリアが着ているチューブタイプの物になっているのだ。しかも、ボトムの方もなかなかに大胆な布面積の少ないものになっている。

「ヤバイ・・・あの水着はヤバイ・・・」

見た瞬間に感じた。あの水着を着るのはいくらなんでもヤバイ!!上はまだいい。男の俺が着ると物足りないだけで特には影響もないだろう。だが!!問題はボトムの方だ!!あれはたぶん俗にいうTバックって奴なんじゃないだろうか?あんなの着たらこの水着の比じゃない!!完全に死んでしまう!!社会的に!!

「どうだ?やる気になっただろ?」

危機感を感じている俺の表情を見て、狙い通りといった笑みを見せるカグラさん。おそらく俺は彼女の手のひらの上で転がされているのだろうけど、今はそんなのどうでもいい。これはとにかく勝たないと!!

「シリルちゃんが萌えてる!!」
「漢字間違ってるよ」

俺が一位になれば何も問題ないんだ!!誰にも文句は言わせない!!絶対に勝ってみせる!!

「さて、時間だ」

いよいよ決戦・・・じゃなくてお店が開店の時間となり、お店の前の柵を解放するカグラさん。それを待ちわびていたお客さんたちは、勢いよく店内に入ってきた。

「「「「「いらっしゃいませ!!」」」」」

それを一列に並んで迎え入れるのは水着を纏った人魚と蛇姫たち。第一印象が大切だというし、出来る限りの最高の笑顔で挨拶をする。

「ご・・・ごめん・・・」
「ちょっと席はずすね・・・」
「はい!?」

その直後、突然鼻を押さえて奥へと姿を消した藍髪の少女と銀髪の少女。その手の隙間から赤い液体が見えてたけど、どうしたのかな?あの二人。

「すみませ~ん!!注文お願いしま~す!!」
「あ!!は~い!!」

姿が見えなくなった二人を見送っていると、後ろから呼ぶ声が聞こえたので早速売り込みも兼ねて注文を取ろうと向かおうとした。だが・・・

「はい、何にするの?」

どこからともなく現れた金髪の少女・・・に扮しているレオンに横取りされてしまう。

「え~っと・・・あれ?」

最初から潜んでいたのではないかと思ってしまうほどの速度で現れた美少女に臆しそうになった男性たちだったが、気を取り直して注文しようとしたところでレオンの顔を見て何かに気付く。

「??どうしたの?」

敬語など一切使う気はないレオンは自分を見て固まっている彼らに声をかける。もしかして男ってバレた!?あんなに完璧に女装してるのに!!

「君、前ウェイトレスしてた子だよね?留学だか何かで・・・」
「あぁ、一日だけね」

心配していたこととは異なり、以前レオンが交換留学で人魚の踵(マーメイドヒール)を訪れた際に、彼がウェイトレスをしていたことを覚えていたから声をかけたようだった。てかレオンはもう少し言葉何とかしないとバレちゃうんじゃ・・・

「へぇ!!名前は何て言うの?」
「リンです」
「リンちゃんかぁ!!いい名前だね!!」
「そう?」

なんかナンパされてるような会話になりつつある男性とレオンの会話。ちなみに俺とレオンはウェイトレスの間、男だとバレないように偽名を使うことになっている。レオンは今名乗ったリンで俺はルリとなっている。名前の由来は、レオンとリオンさんのスペルが同じなため、レオンをリオンと読ませてオを抜いてリン、俺はシリルのシを抜き、逆から読んでルリとなっている。

「ねぇ、早く注文してくれない?長いんだけど」
「あぁ、ごめんごめん」

これ以上一ヶ所で止まっていると数が稼げないと感じたリンはズバッとお客さんにそう言う。あんなにはっきり言っていいのかな?俺たちには勝つしか選択肢ないのに・・・

「この料理を運んでほしいウェイトレスって誰でもいいの?」
「うん。あ!!私じゃなくてもいいよ?悲しくなるけど」

注文を受けたところで本日限定、料理を運んできてほしいウェイトレスについて質問されているリンは、ソフィアがウェンディたちに教えてくれた助言のもと、そんなことを言っていた。なんか違う気もするけど・・・いけるかな?

「じゃ、リンちゃんで!!」
「えぇ、めんどくさ・・・まぁいいけど」

言葉ではやる気無さそうにしているが、顔は嬉しそうに赤くさせ、目線を反らすテクニックを見せたリンは、受けた注文を繰り返し、厨房にそれを届けに戻ってくる。

「いきなり来たね」
「ブィ」

早速指名を受けた彼に声をかけると、静かにピースを作って前を通りすぎていく。あいつあのままのキャラで人気出そうな気がするけど・・・狙ってんのかな?

「すみませ~ん」
「は~い!!」

一人リンの行動について考えていると、今度は女性三人組のお客さんから声をかけられたので、今度こそはと駆け足で注文を取りに行く。

ツルッ

「うわっ!!っとと」

しかし、今俺の履いているのは上げ幅が低めのヒール。慣れない靴に足がもつれそうになるが、なんとかバランスを整え踏み留まる。

「だ・・・大丈夫?」
「はい!!大丈夫です!!」
「急がなくていいからね」
「ケガしないようにね」

転びそうになった俺の姿を見て、声をかけてくれる女性たち。何もないところで転びそうになったから、すごく恥ずかしくて思わず頬を赤らめる。もっと気を付けないとまずいな・・・運んでる最中に転んだらシャレにならないぞ。

「えっと・・・ごく・・・ごつ・・・ごきゅ・・・何にしますか?」

改めて注文を聞こうと先程のリンのような台詞を言おうとしたところ、滅多にやらない接客の仕事で緊張してしまい、噛み噛みになってしまったので、諦めて必要最低限に絞って口を開くことにした。だけど、その前の噛んでいたのが面白かったらしく、彼女たちは顔を反らし、口元を押さえていた。

「あ・・・あの・・・」
「あ!!ごめんごめん」
「可愛いからつい」
「気にしないで!!」

いやいや気になるよ・・・なんて思いながらも口に出すわけにはいかず、何事もなかったかのように笑顔を取り繕いながら、注文を聞いていく。

「以上でよろしいですか?」
「うん、OK」

注文の確認を終え、カウンターの方へと向かおうとして、大事なことを思い出し、もう一度体の向きを変える。

「えっと・・・運んでくるのはルリちゃんでいいですか?」

さっきシェリアから教えられたポーズ・・・両手の人差し指を立て頬に付け、首を傾げるようにして笑顔を作る。それを見た瞬間、見ていた全てのお客さんが固まったのが空気でわかった。

「・・・」

やってはいけないミスをしたような気がして冷や汗が背筋を伝う。これは失敗した・・・穴があったら入りたい・・・

「き・・・聞き取れなかったからもう一回やって!!」
「へ?」

これからどうしようか迷っていると、目の前の女性がそんなことを言ってくる。

「ね!!いいでしょ?」
「お願い!!」
「もう一回だけでいいから!!」

手を合わせ拝むように懇願してくる彼女たちを見て、やれば指名してくれるのではと期待が押し寄せてくる。

「る・・・ルリちゃんでいいですか?」
「はい!!」
「ぜひ!!」
「ルリちゃんで!!」

泣きそうになりながら、顔をリンゴのようにしてポーズを決めると、女性たちが即答で俺を指名してくれる。

「ありがとうございます!!」

頭を深く下げてその場から駆け足で離れていく。よかったぁ・・・ここまでやって指名してくれなかったら、いじけて勝負を投げてたかも。

「ルリちゃんでいいですか?」
「ちょっとやめてよ!!」

注文を厨房に渡すために戻ってくると、待ってたリンがからかうようにさっきのポーズをしてくる。それを見て恥ずかしくなってきたので、彼の手を掴み大急ぎで下げさせる。

「リン、これ持ってって」
「了解」

俺のことをからかっていたリンに後ろからシャルルができた料理をカウンターに置きながら声をかける。リンはそれをお盆に乗せると、見るからに緊張しながら指名されたテーブルへと運んでいく。

「はい、どうぞ」

相変わらずの愛想の無さで料理を注文した人の前に置いていくリン。そんなリンに、お客さんが声をかける。

「リンちゃんもしかして運ぶの慣れてないの?」
「!!」

リンは図星を突かれたのか、顔が強張る。その彼女の表情を見て、男性客はニヤニヤとしていた。

「べ・・・別に緊張してたわけじゃないんだからね!!」

リンが料理を運ぶのにフラフラしていたのは、実は慣れていないからではなかったらしい。そりゃそうだ、だってあいつは交換留学の時にウェイトレスを経験してるんだから、運ぶのはある程度できるはずなのだから。
ただ、じゃあなぜそんな印章を与えたのかというと、それは色々な理由があった。
慣れない女物の水着にヒール、おまけに一位にならないと一週間人魚の踵(マーメイドヒール)で女装生活という罰ゲームまであるのだ。当然、料理を運ぶ際に転んだりしたら、それを見ていた人からは絶対に指名されない。そうなるとカグラさんたちにみすみすチャンスを与えてしまうと思ってたから、いつもより慎重になっていたらしい。
だが、相手から慣れてないと言われた彼は悔しかったのか、負け惜しみにも似た発言をすると、その場から逃げるようにこちらへと走ってきた。

「シリ・・・ルリ、あたしもちょっと席はずすね」
「えぇ!?」

こちらに戻ってきたリンを見て、なぜか鼻を押さえながら残っていたシェリアがこの場から立ち去っていく。なんかウェイトレスがどんどん減ってくんだけど・・・稼ぐなら今ってことなのかな?

「ルリ・・・なんか疲れてきた」
「我慢しなよ。お・・・私たちはやるしかないんだから」

駆けてきたからか、額に汗が浮かんでいるリン。彼はそれに気付いていないようなので、あらかじめウェンディに渡されていたハンカチでそれを拭ってあげる。

「ルリ、指名が来たよ。それにリンもね」
「「え?」」

ちょっと一休みと思っていたところで、ソフィアと共に留学に来ていたので顔だけはわかる女の子にそんなことを言われる。気が付くと、お客さんたちが俺たちの方を見ながら何かを話していたのだが、それがどういうことなのか、その時は全然わからなかった。



















ウェンディside

「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、ウェンディ」

シリルの笑顔で興奮してしまい、鼻血が収まるまで奥で隠れていたのですが、たった今血が収まったのでレストランの方に戻ってくると、そこには驚くべき光景が広がっていました。

「オムライスとナポリタンをリンちゃんで」
「カルボナーラとペペロンチーノ!!ルリちゃんで!!」

人で埋め尽くされているホール。その中でウェイトレスをしている皆さんが世話しなく動き回っていますが、中でも二人の人物が休む暇もなく料理を運んでいました。

「リンちゃん!!これ五番テーブルね~」
「こっちは八番テーブルね!!ルリ!!」

セシリーとマーメイドの女の子がカウンターに料理を置くと、呼ばれた二人の水着っ子が戻ってきます。

「ねぇ・・・休憩は?」
「疲れてきたんだけど・・・」
「「ダメ!!」」
「「ケチ!!」」

ずっと歩き回っていた水髪の少女と金髪の少女が上目遣いで休みを懇願しますが、あっさりと却下されてしまい、舌を出してそう言った後、ヒールに慣れてきたためか、軽くなったように見える足取りでそれぞれのテーブルに向かいます。

「まずい・・・これはまずい・・・」

一枚の紙を見てそう呟いているのは、人魚の最強魔導士。お店が繁盛しているにも関わらず、彼女の表情は大変暗かったです。

「どうしたの?カグラさん」
「これを見てみろ」

私と同じく復帰してきたソフィアが彼女から渡された紙に目を通し、固まります。後ろからそれを覗いてみると、そこには今日の指名数のランキングが記されていたのですが・・・

「シ・・・ルリちゃんとリンがダントツじゃん!!」

信じられないといった表情で現在の順位を見ているソフィアが絶叫します。それもそのはず、男であるはずの二人が他者を押しやり一位二位を獲得していたからです。

「お前たちがいなかった間にこんなことになっていたんだぞ」
「うっ・・・ごめんなさい・・・」

私とソフィアは今出てきたばかりなのでもちろん指名0。シェリアもわずかに指名を受けたところで下がったのでかなり後方の順位。二人に続いているカグラさんも、倍以上の差を開けられており、かなり厳しい展開になっているようでした。

「あの二人で一週間は売り上げがうなぎ登りだと思ってたのに・・・」
「このままじゃ今日だけになっちゃうぅ!!」

勝つ気満々だった彼女たちは、明日からの売り上げも彼らが入る計算で考えていたため、思わぬ誤算に焦りを隠せずにいた。

「私たちも本気で行くぞ!!」
「今から巻き返しますからね!!」

注文を取りに行きながら自分たちを売り込もうと考えたカグラさんとソフィア。カグラさんはグラマーな体を覗かせることで男性たちの意識を引こうとし、ソフィアはウェイトレスとは思えぬセクハラ行為をしてるのに、なぜか喜んでる女の子たちから次々と指名を獲得していきます。

「必死ね、あの二人」
「そうだね」

ギルドのために二人を明日からも残らせたい女性と彼らを辱しめたい一心に動き回る少女。二人ともさすがに人気一位二位というだけあってみるみる数値を伸ばしていきます。でも、それ以上にシリル・・・もといルリたちが頑張っていて、なかなか広がった差は縮まりませんでした。





















シリルside

時刻はすでに閉店の時間を回っており、ギルドの裏に広がる砂浜は沈み行く夕焼けによって美しさを際ただせている。

「では・・・今日の指名ランキングの順位を発表する」

黒のビキニから普段通りの衣服へと着替えた姫様カットの女性は、落ち込んでいる声でそう言う。それに対し、俺とレオンは勝ち誇った顔でそのランキングの発表を待っている。

「一位リン・・・二位ルリ・・・三位私・・・四位――――」

一拍置いて緊張感を出すということもできないほどにショックを受けている彼女は、紙に書かれている順位をただ読んでいる状態になっている。

「やったね、レオン」
「楽勝だったな」

隣に立つ少年と拳を合わせて笑みを浮かべる。始まる前は自信がなかったけど、始まってみると予想外に指名されるわされるわで驚いてしまった。その理由は、最初の接客の姿にあったらしい。
レオンのちゃんと出来ているのかわからないツンデレと無駄にぶりっ子ぶってた俺。それが妙にハマったらしく、お客さんたちが次々に指名をしてくれたらしい。
おかげで、明日もウェイトレスをしなければならないということがなくなり、嬉しくて顔が緩みっぱなしだ。

「よってレオンとシリルの勝ちなんだが・・・明日も手伝って――――」
「「イヤです!!」」
「くっ・・・」

当初の約束を反故にしようとしたところを即座に断り、彼女は悔しそうに顔を歪める。そりゃそうだ、誰が勝ったのに水着なんか着るもんか。

「わかった!!メイド服ならどうだ!?」
「ダメです」
「着物は!?」
「遠慮しておきます」

黒髪の女性は次から次へと案を出してくるが、それを受けることは絶対にしない。もう今日一日で女装は十分だ。あんなに頑張って接客したんだし、早く帰って休みたい。

「そうだ!!明日手伝ってくれたらギルド専用のビーチを一日貸そう!!どうだ?」

よほど帰したくないのか、新たな交換条件を用いてくる女性を見て可哀想になってくる。だけど、それを受けるのはプライドが――――

「「「「「ビーチ!?」」」」」

断ろうとした俺たちではなく、後ろで傍観者になっていた少女たちが目を輝かせて前に出てくる。これまずい・・・最悪な結末が見えるぞ?

「もちろん今日と明日、泊まるところも用意しよう」
「やります!!」
「もちろんだよ!!」
「困った時はお互い様よね」
「明日も頑張ろ~!!」
「オォッ!!」

俺たちが口を開く暇も与えてもらえず、話がどんどん進んでいく。詰んだな・・・これ・・・

「みんなやる気だし、お前たちもやってくれるよな?」
「「はい・・・」」

断ろうにも、ウェンディやシェリアたちの視線がキツくて、それをやることができない。思惑通りにことが進んだカグラさんは、しめしめと悪党のような笑みを浮かべていた。

「安心しろ。衣装は好きなものを選ばせてやるからな」
「安心できねぇ・・・」
「結局こうなるのか・・・」

水着でウェイトレスは逃れられたが、女装は避けることができなかった。せっかく頑張ったのにと項垂れていると、俺の脇に藍髪の少女がやっていて、腕を組む。

「明日も頑張ろう!!シリル!!」
「そ・・・そうだね・・・」

やる気を出してもらおうとこの上ない笑顔を見せる天竜。その笑顔は可愛いんだけど、今回に限ってはテンションが上げられない。たぶん今の俺の目は屍のようになっているかも・・・

「レオンも頑張ろうね!!あ、リンって呼んだ方がいい?」
「それは勘弁してくれぇ!!」

幼馴染みの酷すぎる言葉に冷静さを忘れて叫ぶレオン。こうして、納得できぬまま、翌日も人魚の踵(マーメイドヒール)の手伝いをすることになったのだった。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
もう一話人魚の踵(マーメイドヒール)でのお話です。ウェイトレスかビーチでのことかは決まってないけど、頑張ろうと思います。 
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