ヒトデ
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第四章
「ヒトデについても知識がありますので」
「それで、ですか」
「ヒトデの駆除の仕方もご存知なんですね」
「そういうことですね」
「そうです、では」
「はい、じゃあ干して」
「煮るか焼くかして」
そしてとだ、村人達も答える。
「それで駆除していきます」
「確かにそれで死なない生きものいないですからね」
「人間でもそうですし」
「じゃあそうしていきます」
「オニヒトデにも注意して」
「そのヒトデは本当に注意して下さい」
オニヒトデにはというのだ。
「毒がありますので」
「そう、あのヒトデは危ないぞ」
漁師達の中から小柄な老人が出て来てだ、彼等に真剣な顔で話した。
「わしが言った通りな」
「ああ、学者さんもそう言うしな」
「村長さんだけでなくな」
「じゃあ本当にな」
「あのヒトデには注意しないとな」
「わしは祖父さんから聞いた」
その小柄な老人、村長はさらに言った。
「祖父さんはあのヒトデを掴んで刺されてな」
「死んだか?」
「まさかと思うけれどな」
「死ななかったが死にそうになった」
オニヒトデのその毒でだ、
「あと一歩でだったらしい」
「じゃあ本当にな」
「気をつけないとな、あのヒトデには」
「刺されたら死ぬのなら」
「余計に」
「はい、本当に気をつけて下さい」
大村もこう言う。
「あのヒトデには特に」
「よし、じゃあな」
「捕まえたら干物だな」
「そうしてやるか」
「そしてこの海から消してやるか」
「魚と珊瑚の為にも」
「ただし」
ここでだ、大村は村人達にこうも言った。
「絶滅させるまでは駄目です」
「退治し過ぎたら駄目か」
「そうなんですか」
「一匹残らずっていうのは」
「オニヒトデでも」
「そうです、問題はお魚や珊瑚礁の損害を減らすことですから」
それでというのだ。
「この辺りの海から根絶させてはかえって駄目なんです」
「魚や珊瑚を荒らすのに」
「害になっても」
「それでもなんですか」
「一匹残らずは駄目ですか」
「根絶させたら」
「そうしたら生態系が崩れます」
この辺りの海もというのだ。
「ヒトデ、オニヒトデにしても生態系の中にいます」
「そのヒトデを絶滅させたら」
「それはそれで問題ですか」
「一匹残らずにというのは」
「それも」
「そうです、ですから」
絶対にというのだ。
「ヒトデを食べる生きもの、食べられる野生の生きものもいますので」
「絶滅させるとそうした生きものが餓えたり増え過ぎる」
「それはそれで問題なんですね」
「ヒトデがいなくなっても」
「それでもですね」
「そうです、生態系の中にいますので」
ヒトデもまた、というのだ。
「そこまでしてはいけません」
「そういえばニホンオオカミもな」
「ああ、いなくなったら山の鹿とか猪とか増えてな」
「今の山の獣害になってるんだよな」
「農作物を荒らしたりする」
「そうです、生態系を荒らすまでの駆除や乱獲は駄目です」
絶対にというのだ。
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